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介護食や食事介助でやってはいけない5つのこと「刻み方の間違い、食事の時間が長すぎる」ほかNG事例と対策を管理栄養士が解説

 ケアする相手を思って作る介護食だが、介助する側の思い込みで意外と間違っていることは多いと、高齢者施設の食事指導などを行っている管理栄養士の川鍋仁美さん。また、食べられる量が減ってくる高齢者は食べ方に問題点も。介護が必要な人の食事シーンで「やってはいけない」ことについて川鍋さんに教えてもらった。

教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん

管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/

介護中の食事シーンでやりがちな「5つの間違い」

 介護中の食事は、 食べる人の噛む力や飲み込む力に合わせたものを選ぶことはもちろんですが、それ以外にも気をつけておきたいポイントがいくつかあります。毎日の介護中の食事のなかで、知らず知らずのうちにやってしまっているあんなことやこんなこと――。介護中の食事に関する“やってしまいがち”な5つの間違いをご紹介します。

 介護食を作る側・食べる側、お互いに何気なくやっていたことが間違っていないかを改めて確認してみましょう。

【1】食材を刻む大きさが間違っている

 噛む力が弱くなってきたかたにやわらかい食事作りをする場合、介護食の中でも食材を5mm~1cm程に刻んで作る「きざみ食」が一般的です。

 きざみ食は、特別な器具は必要なく、まな板と包丁があればかんたんに作ることができますが、刻み具合を決めたりきれいに刻んだりするのは意外と難しいです。

 食材を刻む大きさは、人によって食べにくい食材が異なるので一概には言えませんが、介護・医療施設などでは「粗きざみ、きざみ、極きざみ」など分けられているのが一般的です。

 本人の噛む力が残っているのに、必要以上に刻んだ食事にしてしまうと今ある噛む力が衰退してしまうおそれがある一方で、刻みが足りない場合は誤嚥に繋がるリスクもあります。

 かかりつけ医などから特別な指示がない場合は1cm程度からはじめて、本人と相談または本人の食べるときの表情や状態(むせ・咳き込みなどはないか)をしっかりみながら判断してください。

 刻み方にムラがあるとうまく飲み込めないので、食材はできるだけ均一に刻みましょう。

きざみ食「食材の大きさ」の目安

・粗きざみ…具材を1~2cmほどにカット

・きざみ…1cm程度にカット

・極きざみ…みじん切りのイメージ

 また、刻んだ食材は口の中でまとまりにくく誤嚥しやすいことにも注意が必要です。

 高齢になると噛む力に加え、飲み込む力も低下するかたがほとんどです。唾液が減少して飲み込む力が弱っている高齢者にとって、刻んだだけの食事は口の中でばらばらになってしまい飲み込む時にうまくまとめられず、とても食べにくいのです。

 飲み込む力も弱くなってきている場合は、まとまりを出すために単に刻むだけではなく「とろみをつける」ことも必要になります。誤嚥は、肺炎につながる恐れがあるので毎日の食事の食材の大きさやとろみの有無には細心の注意が必要です。

【2】とろみのつけすぎはNG!とろみのレベルが間違っている

 飲み込む力が弱くなってきたかたには、介護食の中でもとろみ調整剤(以下とろみ剤)を使用して水分を飲み込みやすくしたり、料理を食べやすくしたりした「嚥下調整食」を作るのが一般的です。

 嚥下調整食は、ただとろみをつければいいというわけではなく食べる方の飲み込みの機能の状態にあった適切なレベルのとろみをつける必要があります。必要以上にとろみをつけすぎると、水分の粘度が増すので喉に張り付いたような感じになり、かえって飲み込みにくくなってしまい危険です。

 日本摂食嚥下リハビリテーション学会では、病院・施設・在宅医療および福祉関係者が共通して使用できることを目的に、食事やとろみの状態についていくつかの分類をしています。

 とろみに関しては「薄いとろみ・中間のとろみ・濃いとろみ」の3段階に分類され、市販のとろみ剤の商品パッケージには、これらを調整するために必要な使用量が記載されています。

→失敗しない介護食とろみのつけ方Q&A|誤嚥防ぐとろみ濃度を実演

 注意しておきたいポイントはとろみ剤は複数のメーカーが販売していますが、販売元・種類ごとに使用量が異なるという点です。毎回同じメーカーのものを使用する場合は良いですが、変えたときなどは使用量も変わるので注意しましょう。

 飲料の種類によってとろみが付きにくくダマになりやすいものもあります。

 たとえば牛乳や酸味の強いオレンジジュース、乳酸菌飲料などはとろみがつくまでに時間がかかるため、ついついとろみ剤を追加してしまい目安よりも使用量が多くなり、結果的にとろみが強くダマになりやすくなってしまいがちです。

とろみがつきにくい飲料

・牛乳

・柑橘系の飲料(オレンジジュース、グレープフルーツジュースなど)

・乳酸菌飲料

・冷たい飲料

 また、温かい物は比較的早くとろみがつきますが、冷たい物はとろみがつくのに時間がかかります。最近はとろみ剤も改良が進んでいて、食品や温度などに影響を受けにくいタイプのものも販売されていますが、種類によってとろみの発現に差があることは意識しておきましょう。

 また、介護食をつくる家族がどれくらいのとろみの状態が合っているのか分からないときは、かかりつけ医や保健所など地域の管理栄養士に相談しておくとより安心です。

→介護食のとろみ剤、作り置き、冷蔵・冷凍保存、解凍の注意点を徹底解説

【3】食事の介助の時間が長すぎる「食べ疲れしているかも」

 介護食を食べる、もしくは介助しながら食べてもらう場合にどれくらいの時間をかけているでしょうか。一般的な食事の時間としては30分程度を目安にしましょう。

 しかし介護の現場でもよくみられますが、配膳してからゆっくり食事をとられて1時間。なかには2時間近くかけて食べるかたもいらっしゃいます。

 しかし、食事時間が長いかたの多くは、食べたくなくて嫌々食べているという風ではありません。ではなぜ時間がかかるのかというと、おそらく食べものの残渣(食べかす)などが気になって、それらを出しながら食べていたり、入れ歯の調子が悪かったり、食べること自体に時間がかかっていることが多いです。

 こうしたケースは、食事の形態がそのかたの食べる力に合っていないことが原因なので、食事内容(刻みの大きさ、柔らかさ、とろみの強さ)を改めて検討する必要があります。

 介助してスプーンを口に運べば口を開けてくれるのだけれど、飲み込むまで口に含んでいる時間が長く、なかなか食事が進まないといったこともあります。

 食事が進まないと介助している人もついつい焦って口に運ぶスピードが速くなってしまったり、ひと口の量を多く入れてしまったりしてしまいがちですが、これは誤嚥のリスクが高くなるため非常に危険なことです。

 食事介助が1時間以上かかってしまう場合は、本人がよっぽど食欲がある場合は別ですが、食べ終わらなくても一度食事を終わらせることもひとつの方法です。

 食事介助を受ける高齢者の中には、食事を食べながら「食べること」自体に疲れてしまい、食事が進みにくくなってしまうこともあります。

 そんな場合は、食事時間はなるべく短時間を意識して1日の食事回数を増やしてみることも検討してみましょう。1回ずつの食事が食べる側も介助する側も負担無く行えた方が、スムーズにすすむ場合もあります。

 また、認知症がある場合は、食事の食べ方が分からなくなってしまうこともあります。

 食事に時間がかかるのは、好き嫌いで食べたくないのか、大きさやかたさが合っていなくて食べられないのか、 食器やスプーンなどの使い方が不安で食べ方が分からないのか、食べ疲れているのか、さまざまな理由が考えられるので、そのかたの状態を良く見極めることが大切です。

【4】介護食の解凍方法が間違っている「室温でゆっくり解凍はNG!」

 冷凍の介護食を利用している場合、食べる前に介護食の解凍を行う必要があります。

 その際に、私がよく高齢者のかたに聞くのは「容器などで冷凍した食材をコタツの中でゆっくり解凍している」という声です。コタツの中は衛生面も温度も雑菌が増えやすい状態ですから絶対にやめましょう。

 また、冷凍宅配弁当の多くは自然解凍を推奨していません。

「自然解凍はしないでください」と明記されている場合も多いです。解凍するときは、弁当パッケージに記載の温め時間の目安を参考に電子レンジで解凍を行いましょう。

 冷凍した作り置きを解凍する場合も同様です。解凍に使うものは電子レンジの他にも湯煎や蒸し器を利用するのも良いでしょう。その場合も、必ず食品の芯までしっかり解凍できるようにムラなく解凍しましょう。
 自然解凍をする場合は、室温ではなく冷蔵庫内で冷蔵解凍して、食べる前に電子レンジでしっかりと再加熱して食べることをおすすめします。

 離れて暮らしているご家族が冷凍宅配食を利用していたり冷凍の作りおきをしていたりする場合は、どのように解凍されているかまでぜひ確認してみましょう。

 自然解凍の時間が長くなるほど、雑菌が増えやすい環境になるので、免疫力・抵抗力が低下している高齢者の場合は衛生面への注意がより必要とされます。

【5】宅配食など1食を2回に分けて食べるのはNG!

 高齢になると1回の食事量が減少するため、弁当1食分を食べきれなくなってしまうかたも多いようです。そんな時、残した分を翌日も続けて食べることは栄養面・衛生面から考えておすすめできません。

 私も高齢者に食事内容を聞く機会がありますが、この「1食の弁当を2回に分けて食べている、またそれを日常的にやっている」と話されるかたは意外と多いです。

 介護食の宅配弁当の多くは高齢者の1日に必要な栄養量を考えながら、1食分の弁当のバランスが決められています。1食分を残して次の食事でも食べてしまうと、それだけ栄養量が不足してしまうことになりますので低栄養につながる恐れもあります。

 1食分を完食できることが理想です。もし食欲が落ちてきて、1食で食べられる量が減ってきた場合には、高栄養のおやつなど補食をプラスすることも検討しましょう。

 また、食べ残したものを翌日食べることは衛生面から考えても控えましょう。

 宅配弁当の多くは盛り付け後4時間以内に食べることが推奨されています。それも適切な環境の下で保管された場合です。一度口をつけた食品を室温で放置して翌日食べてしまうのは食中毒につながる恐れがあり危険なことです。

 どうしても1回で食べきれないときは、あらかじめ別の容器に取り分けたり取り箸を使ったりして、その日のうちに食べきりましょう。

 また、このような『高齢者が食べ残しを取っておいて、次の日に食べる』ことを防止するために1品を食べきりサイズにすることを意識したメニューを選べる高齢者向けのお弁当宅配サービスもあります。

 宅配弁当を検討するときは、「残さずにすむ1食分の量」を意識して選ぶことも大切です。

→介護食の宅配サービスの選び方|種類やメリット・デメリット「無料お試しから始めるのがおすすめ」【管理栄養士解説】

***

 今回は介護中の食事に関する、やってしまいがちな5つの間違いをご紹介しました。

 どの項目でも大切なのは、介護する側とされる側でしっかりとコミュニケーションがとれていること、介護が必要なかたの今の状態をこまめに把握することだと思います。

 食事の内容やとろみの状態などご家族だけで判断するのが不安なこともあるかと思います。対応の仕方は十人十色。個々によって変わるため正解はありませんが、悩んだときは、かかりつけ医や地域の管理栄養士、ケアマネジャーなどに相談してみるといいでしょう。

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