「神様仏様!母の生還を祈る日のこと」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~ 第15回
漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさん。膵炎を抱える母が、膵臓の“石”を除去するために緊急手術をすることに。時はコロナ禍、病院は面会謝絶で母に寄り添うこともできず、いよいよその時がやってきて――。母の無事を祈るのぶさんの心境とは?
「神様仏様」
転院した翌日に手術を受けることになった母。ガラケーでなんとか声だけは聞けましたが、コロナ禍で病院に行くことができません。
手術は午後からと聞いたものの、いつ始まるのかもわかりません。ただひたすら家の中で病院からの電話をじっと待つだけの状態。辛い、、、辛すぎる。
以前この連載で書きましたが、我が家では祖父母と父がすでに他界しています。祖母は老衰でしたが祖父は手術後に容体が急変、父に至っては手術中に帰らぬ人となってしまいました。
家の中でひとりじっと座っていると、その時の光景が次々とフラッシュバックしてきます。
夜中に呼び出され駆けつけた病室で見た祖父の姿、さっきまで手を振っていた父が人工呼吸器をつけて横たわっている様子、心臓マッサージの音、心電図モニターの電子音、そして―――。
耐えきれず立ち上がり、神棚に手を合わせ、仏壇に手を合わせ、「どうか手術を成功させてください」と祈りました。
仏壇の横では高いところから祖父母と父の写真が私を見下ろしています。
じっと3人の写真を見ていたらなんだか腹が立ってきました。
「神様仏様」と言いますが、皆が手を合わせる最高位の神様仏様に願いを叶えてもらうには私の徳は低すぎるかもしれません。
祖父と父の時も「助けてください」と願ったけど叶いませんでした。でも母と私に手厚く看病してもらって旅立っていったこの3人の「仏様」には母を無事生還させる責任があります。恩義があります。もしこれで母が帰ってこなかったら理不尽すぎるじゃないですか。
「絶対に手術を成功させてよ!もしものことがあったらタダじゃおかないからね!」
そう叫ぶ私の頭の中ではバットを持って仏間で暴れ回る「もしもの時」の妄想映像が流れていました。
すっかり日も暮れて待つ気力も尽きかけた頃――。
「手術は無事成功しました」
やっと病院から電話がありました。身体中から力が抜けていくのがわかりました。
頭の中が白くなっていったのを覚えていますが、気を失っている場合ではありません。連絡を待ってくれている弟や親戚、母の友達、私の友達に無事を伝えました。
「願い」は必ず叶うものではありません。それは身に染みて知っています。むしろ過去の無念さから願う事に対して諦め気味なところがあった私ですが、
「願いは必ず叶うものではないけれど、願うことをやめてはいけない」
今回のことで少し救われたような気がしました。
3人の仏様もきっと胸をなでおろしたことでしょう。
この後、母と私にようやく「口福」が戻ってきます!紆余曲折はまだ続くのですが…。
***
のぶさん&母の奮闘は続く――次回は2月14日公開予定です。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。57才。山口県で81才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
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