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《東大在学中に起業》介護業界に参入した23歳の経営者・森山穂貴さんが考える「介護人材の不足」低賃金の背景にある「善意に頼る意識」

 2040年には、国民の3人に1人が65歳以上となる超高齢社会を迎える。それに伴い、介護人材の不足も深刻化している。東大在学中に起業し、介護業界に参入した森山穂貴さん(23歳)は新著『未来をつくる介護』でも「日本の介護システムの現在地と限界」について言及している。どんな対策が考えられるのか、話を伺った。(全3回の第2回)

EEFULホールディングス代表取締役・森山穂貴

もりやま・ほだか/EEFULホールディングス代表取締役。2002年生まれ。東京大学社会心理学研究室在籍(2026年3月卒業予定)。介護事業のデジタル化や持続可能なケアシステムの創造を目指し、東京大学在学中にスタートアップ企業を設立し、介護事業の運営やプロデュースなどを手がける。新著『未来をつくる介護』(クロスメディア・パブリッシング)。介護情報ポータルサイト「EEFUL DB」https://www.eeful-db.com

「介護業界の人手不足」に思うこと

――「人材不足」が叫ばれる業界ですが、どのような解決策があるでしょうか。

森山:人材不足となる原因のひとつに「低賃金」があると思っています。その際、議論されなくてはならないのは、「介護」が“人の善意に頼ったもの”であるという意識です。配偶者や子供、きょうだいなど、基本的に無償で担うものであるという根強いイメージを変えなくてはいけません。

 子供の頃から海外で過ごした経験がある自分としては、とりわけ日本では依然として福祉・介護分野は、ボランティアとか奉仕に近いイメージをもつ人が多いように思えます。ビジネスとしての制度や設計から見直さなくてはならないと考えています。

――“人の善意に頼る”意識は、海外と日本とで異なりますか?

森山:はい、かなり異なると思います。日本ではそもそも、お金の話はタブー扱いされることが多いですよね。ぼくが育ってきた環境、シンガポールや香港では、「投資でいくら儲けた」「株が上がった」とか、普段の会話の中で金融の話をしている人が多くいました。

 日本では儲けたら揶揄されたり、サービスでも商品でもなるべく安く提供することが称賛されたりする。とくに介護分野では、なるべくコストカットをして、最低限のお金でなんとかしなければ、という風潮があるように思います。

「利用する側が払いたくない」のではなく、サービスを提供する側に「なるべく安く」という意識が強いのではないか。その理由はシンプルで、利益が出ていないからです。

 介護サービスも一般のサービス業と同様、付加価値をつけるなどして、「持続可能なビジネス」として成り立たせる工夫が必要だと思います。質のいいサービスを提供したら、相当の対価をいただくという考え方はどの領域でも同じでいいはずです。

 介護業界は賃金が安いとよく言われますが、当然ながらこのままでいいはずがない。なぜ低いまま今に至ってしまったかの大きな理由は、「事業開発」をしてこなかったからではないか。そして経営人材の不足という問題もあると考えています。

アクティブシニア世代に向けた新たな事業開発

――森山さんの経営する事業所では、どんな事業開発を行っているのですか。

森山:大阪で経営しているデイサービスでは、「美と健康」をコンセプトにサービスを展開しています。ホテルのようなおもてなし、エステティシャンやネイリストなどを起用し、エステサロン感覚で利用することができます。介護保険サービス以外に、追加料金を設定して付加価値に対する対価をお支払いいただいています。

 また、弊社では旅行代理店の免許も取得していますので、高齢者向けの大規模なツアーを組むこともあります。本格的な介護が必要になる前の、アクティブシニア世代に活用していただいています。

――どんなサービスが必要だとお考えでしょうか。

森山:現在の介護保険は、国が補助をして負担額を抑える制度ですが、仮に「自費」だったら使いたいと思うでしょうか。

 たとえば飲食店ではおいしいものや接客サービスを提供し、お客さまが対価を支払います。「マズいけど100円だからいいか」とはならないですよね。「介護保険を使えば1割負担だから、このくらいのサービスでいいか」という考え方をしていても、サービスの品質向上や競争が生まれにくいと思います。

 だんだん年を取ると消費意欲が落ちるともいわれますが、価値の高いものにお金を投じるシニア世代は増えています。

 介護業界は、どうしても国の制度が関わってくるため、民間企業のように活発な事業開発が行われにくい側面がありますが、誰にどんな価値を提供するのかを研ぎ澄ませた事業開発を行い、利用していただけるような状況を作れたらと思っています。

介護業界のイメージを変える小さな一歩

――介護現場で働く人向けの事業も多数展開されています。

森山:賃金が低い中でサービスの質を高めていくには、働く環境の変革が急務です。バックオフィスをテクノロジーで極力効率化し、スタッフの生産性を上げながら、事業開発をしていく必要があります。

 介護施設向けのレクリエーション動画を手がける私どものサービス「シニアカレッジ」https://senior-college.jp

は、その一例です。レクリエーション動画って、なんだか味気なく、つまらないものが多いと感じていて、どうせレクリエーションをするなら少しでも楽しくなってもらいたいし、スタッフ自身も楽しんでもらいたい。そんな思いから始まったので、脳トレや海外旅行の疑似体験など幅広いジャンルを網羅し、現在1000本近くのコンテンツが揃っています。

――介護事業所でどのように活用されているのでしょうか。

森山:全国の介護事業所に向け、サブスクリプションサービスとして展開していて、現在1000以上の事業所に導入いただいています。

 レクリエーション動画というと、スタッフの負担軽減や利便性ばかりが着目されますが、私たちは何よりも「楽しさ」がそこにあるかどうかを重視したい。それこそがサービスの価値であり、介護業界のイメージを変える小さな一歩だと思っています。

撮影/杉原賢紀 取材・文/吉河未布

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