孫が見た《老々介護の実態》祖父のケアプランを決める場に同席「介護サービスを選ぶのは難しい」
要介護者と介護者がともに65才以上の「老々介護」は6割を超え、75才以上の「超老々介護」も4割に近い状況となり、高齢者同士で介護をし合うケースは増えている(内閣府・高齢社会白書より)。障害を抱える母を長年サポートしてきたヤングケアラーのたろべえさんこと高橋唯さんは、祖父母の介護をサポートすることになり、新たな課題に直面し――。
執筆/たろべえ(高橋唯)さん
「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/
祖父のケアプランを決める打ち合わせに同席
近くに暮らす祖父母の「老々介護」が始まった。病院嫌いの祖父をなんとか動かし、要介護認定を受けることができた。祖父は病気のため思うように動けず、要介護2。80代の祖母がサポートしている。祖母が不安そうなので、今後のケアプランを決めるケアマネジャーさんとの打ち合わせに同席することになった。
→病院嫌いのじいちゃんの要介護認定はどうなる?孫が感じた「老々介護の現実」
さっそくケアマネジャーさんが祖父母の家に来てくださって、どんなサービスを使っていくか決めていく時間が設けられた。しかしながら、一体どんなサービスがあれば祖父母の生活がより楽になるのか、いまいちピンと来ない。
祖父は基本的に一日中ベッドで横になって過ごしているが、トイレ、風呂、食事の時だけは部屋から出てくる。その足取りはふらふらしていて危なっかしく、転んでしまうこともある。祖母は祖父が起きてくるたびに付き添っているが、いつ起き出してくるかわからないので一日中目が離せない。
状況としてはかつての我が家とも似ている。母は片麻痺のため足取りがおぼつかず、さらに高次脳機能障害もあり、移動したいときに人に声をかけるということも難しいので、常に様子を見ておく必要があった。
それでも母はデイサービスに通っていたため、筆者は自由な時間もあった。しかし祖父にデイサービスに行ってもらうのは病院に連れて行くことよりもハードルが高いと思う。祖母のことも心配だ。
祖父は常に体調が悪そうでなるべく起き上がりたくないようだ。さらに、若い頃から筋金入りの出不精なので、「デイサービスに行きさえすれば、そこで横になって過ごしていてもよい」と伝えたところで、受け入れてくれないだろう。そもそも意思疎通が難しい人なので、説得することも困難なのだが…。
老々介護でどんな介護サービスを使うべきか?
結局、なんのサービスを使えば祖母の介護負担が少なくなるかはよくわからなかったが、ひとまずこれまで通院の際は筆者か筆者の父が都合をつけて送迎していたところを、どちらも都合がつかない時に備えて、病院への送迎に介護タクシーを利用することにした。
一般的なタクシーに比べると格安価格で病院に行くことができ、とてもよいと思う。ところが、祖母は1点だけ不安を訴えた。
「自分だけではお医者さんの話を覚えられない。(筆者や筆者の父のように)一緒に診察室に入って話を聞いてほしい」
それを聞いたケアマネジャーさんは、「付き添いのかたをお願いすることもできますよ」とすすめてくださった。
しかしながら、利用料は1時間3200円。通院は1日がかりなので、往復の送迎代とあわせると1回の利用で1万円を超える可能性も高い。どう捉えるかは人によるが、少なくとも我が家の経済状況ではお願いするかどうか悩んでしまう金額だ。
母の通院を振り返ると…
母のことを思い返してみても、通院の付き添いを家族以外にお願いするというのはなかなか難しい。以前、筆者も「だれか代わりに母を病院に連れて行ってくれないものだろうか」と思い、自治体に相談してみたところ、「かなり割高になるので娘さんが連れて行ったほうがいいと思いますよ」と言われたことがある。
結局、母には、医師に日頃の様子を伝えることや、病院で聞いたことを家族に伝えることが難しいため、毎回、筆者が車で送迎し、病院に連れて行っていた。一時期は連絡用ノートを持たせて母に自分で病院に行ってもらっていたこともあるが、やはり道中も危険なので、長くは続かなかった。
ひとまず祖父のケアプランとして決まったことは、通院時に介護タクシーを使えるようにすることだけだ。基本は祖母ひとりで、祖父の日常のケアをしなければならない。
「介護保険サービスがあればすべて安心!」本当にそうだろうか?
介護をしていて、公的なサービスを利用することで楽になることはもちろんたくさんあり、とてもありがたい仕組みだと思う。しかしながら、生活の中の困りごとは既存のサービスに合わせて生じているわけではない。
「介護が必要になっても、サービスを頼れば安心!」と考えている人も、本当にそれだけで十分なのか、どんなサービスがあれば安心して生活できそうか、今一度考え直す必要があるだろう。
とはいえ、80代の祖母にとっては、そうしたことを自分で考えてケアマネジャーさんと話し合うのは、なかなか難しいというのも現実だ。ここ数か月で、老々介護の実態が少しずつ見えてきた。
ヤングケアラーに関する基本情報
言葉の意味や相談窓口はこちら!
■ヤングケアラーとは
ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている子どものこと。近年は子どもから大人になってもケアが続くこともあるため、18才~おおむね30才までをヤングケアラーと呼んでいる。
■ヤングケアラーの定義
『ヤングケアラープロジェクト』(日本ケアラー連盟)では、以下のような人をヤングケアラーとしている。
・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のきょうだいの世話や見守りをしている
・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている
■相談窓口
・こども家庭庁「ヤングケアラー相談窓口検索」
https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/
・児童相談所の無料電話:0120-189-783
https://www.mhlw.go.jp/young-carer/
・文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」:0120-0-78310
https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm
・法務省「子供の人権110番」:0120-007-110
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html
・東京都ヤングアラー相談支援等補助事業 LINEで相談ができる「けあバナ」
運営:一般社団法人ケアラーワークス
https://lin.ee/C5zlydz
