血管年齢若返り|ゴースト血管を作らない!毛細血管力を高めるストレッチ法
「ゴースト血管」は、老け顔への片道切符でもあるわけだ。
だが、希望を失ってはいけない。血管の若さを取り戻すことはまだできる。
「生活習慣を改善したり、適切な運動習慣をつけることでゴースト血管に血流を取り戻すことは可能。ただし、やめてしまえば元通り。継続が何よりも大事です」(赤澤さん)
全身の毛細血管に健全な血流が戻ることにより、万病から遠ざけてくれ、さらに見た目の点でも若返ることができるーー。そんな夢のような状態へ導いてくれる具体策を紹介していこう。
全身の血管に血液をみなぎらせ、血管年齢を若返らせるための対策は何かと尋ねると、どの専門家も「運動をすること」と口をそろえる。
「血管を守る基本は運動と正しい食事の2点が挙げられます。食生活を見直すことによって血液の状態をよくすることができますが、『血管を増やす』『血管機能を高める』ことに焦点を当てるのであれば、運動が肝要になってきます」(野田さん)
ここまでの話を聞いて「一刻も早く運動を始めて、ゴースト血管を復活させたい!」と、いきなり外を走り出したくなる気持ちはわかるが、ちょっと待ってほしい。運動ならば何でもいいというわけではないのだ。
「これまで運動経験のなかった人が激しい運動を始めるのは逆効果。いきなりランニングを始めた50代の人が心筋梗塞で亡くなったケースもある。もろい血管のまま激しい運動をすると血圧が急に上がり、かえって体に負担をかけてしまうのです。まずは、日常生活の中でできる軽めの運動を取り入れることから始めるべきです」(野田さん)
毛細血管力を高めるストレッチ
耳寄りな情報がある。米バージニア大学のチームが2018年8月に発表した最新の研究によると、30人の健康な女性が30分間の全身ストレッチ運動をしただけで、血管の柔軟性が回復したという。
それを踏まえ、お風呂でのストレッチをすすめるのは、米ハーバード大学医学部の客員教授で医師の根来秀行さん。
「入浴自体も血管を緩め、血流をよくしてくれますから、シャワーで済ませず、10分は湯船につかりましょう。そして入浴で体が温まり、血管がやわらかくなっている時こそ、ストレッチで毛細血管を増やすチャンスです」
【1】入浴ストレッチ
まずは手首ストレッチ。湯船につかったまま左腕を逆手に伸ばす。もう片方の手で手首をそらし、10回ほど指先を下に向ける。これを交互に両腕行おう。
続いて、首ストレッチ。こちらも湯船につかったまま、息を吐きながらゆっくり首を前に倒す。後ろにも倒したら、首を前から左回し、右回しにぐるりと回す。それぞれ3周程度がおすすめだ。
【2】快眠ストレッチ
全身が温まった後のストレッチも効果的。
「入浴を済ませた後は血行がよくなっていますから、ストレッチを行うには最適の時間帯です。質の高い睡眠も、血管年齢引き下げの重要なポイント。ストレッチで毛細血管を増強しながら、体をほぐしていい眠りにつく準備をしましょう」(根来さん)
入浴後のストレッチは段階別に取り組みたい。
まずはレベル1から。両脚を前に投げ出すように床に座り、前屈して腰や背中を伸ばす。続いて背筋を伸ばしたまま、右脚にお腹をつけるつもりで体を倒し、心地よいところで止める。呼吸をしながらそのまま10秒キープ。左側も同様に行う。それぞれ5~10回程度、無理のない程度でかまわない。余裕があるなら、つま先を自分の方に向けるとさらにいい。
レベル2は少し強度が高い。床に座って右脚を伸ばし、左脚はゆっくり曲げる。左太ももの前側の筋肉が伸びていることを意識しながら、こちらも心地よいところで10秒キープ。右脚も同様に行い、まだ余裕があるようなら上半身を後方に倒すとより強度が上がる。
仕事中や家事の合間など、ふだんの生活の中に取り入れられる運動もある。これら下半身のストレッチをすすめるのは、前出の工藤さん。
「下半身の中でも特にふくらはぎは『第2の心臓』ともいわれ、下半身に下りてきた血液を心臓に送り返すポンプのような大事な役割を負っています。ふくらはぎの筋肉を鍛えることにより毛細血管が増えることは最新の研究によっても証明されています」
【3】ふくらはぎストレッチ
まず紹介したいのは「ふくらはぎストレッチ」。いすに座り、下ろした両足のかかとを、つま先をつけたまま同時に上げ下げする。この動きをなるべくゆっくり繰り返す。単純な運動だが、ポイントはふくらはぎの筋肉を意識すること。
筋トレ全般にいえることだが、鍛えている筋肉を意識することでトレーニングの効果が高まるといわれているのだ。
もう1つ、いすに座ったままできるのが「太もも締めエクササイズ」。いすに座り、両方の太ももを近づけるようにギュッと内側に力を入れ、10秒キープする。
太ももから腰にかけての筋トレが行えるこの体操、実は前出のバージニア大学の研究で効果が実証済みだ。同大学の研究では「ストレッチにより腰椎の柔軟性が回復していることが見受けられた」とも報告されている。つまり、ストレッチで腰椎が柔らかくなった人ほどストレッチ後に血管がしなやかになったとの結果が出ており、腰の柔軟性を高めることが血管年齢をより若く、毛細血管をより増やすことが期待できるのだ。余裕があれば、お尻の穴をキュッと締めることを繰り返すエクササイズも加えてみるといい。
さらに、間接的にだが血管にいい影響を及ぼすのが「バランス運動」である。
【4】バランス運動
「バランス感覚は20代を100%とした時、60代では20%まで、40代でも50%くらいまで低下してしまう。これを鍛えることで、高齢になってもしっかり動ける体をつくり、将来の血管の状態をも良好に保てるのです」(野田さん)
バランス感覚を鍛えるため、野田さんが提唱するのが「つぎ足歩行」。フローリングや畳の継ぎ目などを使い、綱渡りのように歩く。右のつま先と左のかかとをぴったりつけるように、隙間をあけずにまっすぐ歩く。
ウオーキングに下半身運動のちょい足しを
いきなりランニングするのが逆効果であることはすでに述べた通り。毛細血管を増やすなら、体にやさしいウオーキングを。相乗効果がある“裏“を加え、合理的にゴースト血管を解消しよう。
「おすすめするのは下半身運動の“ちょい足し“です。スクワットを20回したあとに15分のウオーキングを行うと成長ホルモンが効果的に分泌され、ゴースト血管解消に有効だというデータが存在します」(工藤さん)
日頃、無意識にしている動作も、少し気をつけるだけで毛細血管を増強してくれると野田さんが話す。
「歩き方にもコツがあります。顔を上げてひじを曲げ、背筋を伸ばして歩く。姿勢を支える筋肉や脚の筋肉を意識することも忘れずに。3分早歩きしたら3分ゆっくり歩く『インターバル速歩』は1日10分程度するだけで体力が最大20%増加したという報告もあって、ぜひ取り入れてほしいものの1つです」(野田さん)
だが、三日坊主はいけない。
「1か月やらないと元に戻ってしまうというデータもあります。15分でいいので継続してほしい」(工藤さん)
失われた毛細血管を増やし、維持する。それが健康や美容にもいいとあれば、やらない手はない。
※血管年齢の測り方
血管年齢の測定は2012年に保険適用されたため、医療機関や人間ドックで受けることができる。また、若干精度は落ちるもののショッピングモールや薬局にも簡易測定器が設置されている。その他にも、指先の色の変化をもとに測定できる無料のアプリや、家庭用の測定器(2万円前後)もある。
教えてくれた人
野田泰永院長/医師。サクラクリニック院長
工藤孝文さん/医師。工藤内科医院副院長
赤澤純代さん/医師。金沢医科大学准教授
根来秀行さん/医師。米ハーバード大学医学部の客員教授
イラスト/ニシノアポロ
※女性セブン2019年3月7日号