暮らし

<頼る>のが苦手な日本人に伝えたい「頼り上手」が引き寄せること|ダチョウ倶楽部・肥後克広さんは「執着がなくなった」

「困ったときはお互いさま」とはよく言われる言葉だが、実際のところ、“人に頼る”ということが苦手な人は多いかもしれない。重い荷物を運ばなければならないとき、親の介護で困ったとき――「お願い!」と軽やかに、相手に嫌がられずに頼むことができたら。目まぐるしく変わる現代日本で必須なのは「頼る力」なのかもしれない。頼り上手になるコツを取材した。

教えてくれた人

医師・神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授 吉田穂波さん

芸人・ダチョウ倶楽部 肥後克広さん

俳優 鈴木砂羽さん

作家 本田健さん

頼る力が人生を輝かせる

 これまでは“成功する人”の条件として「頼られる存在になる」という特性が挙げられてきたが、現代の日本において、本当に必要なのは真逆の力、つまり「他人に頼って生きて行く力」だった―。

 医師で神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授の吉田穂波さんは「いまの世の中において“頼れない人”の方が生きづらい」と話す。

「生き方が多様化し、ある意味で全員が“少数派”となった日本では子育てや闘病、介護などにおいて自分から積極的に相手に頼れない人はどんどん社会から孤立し、自分を追い詰めてしまいます。日本にはもともと『困ったときはお互いさま』という助け合いの文化があるといわれてきました。ただ、相手を助けることは尊いことであるという共通認識に比べて、助けられるということについては『人様の手を煩わせてはいけない』と、どこか肯定できないでいる人が多いようです。そうした日本人の“頼れなさ具合”は世界的にみても突出しています」

 内閣府が実施した調査では「同居の家族以外に頼れる人がいない」と答えた高齢者(60才以上)の割合は、日、米、独の3か国中、日本が男性20.3%、女性15.1%で最も高かった(令和2年度、内閣府「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」)。

 また若者(13~29才)世代も、7か国(日、韓、米、英、独、仏、スウェーデン)のうち、悩みや心配事の相談を「誰にもしない」と回答したのが日本は19.9%と、最も高いことが明らかになっている(平成30年度、内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」)。

「それらの調査でわかったのは、欧米では同居中の家族に頼めないような状況のときは、いわゆる“ご近所さん”や教会など、コミュニティーレベルで頼れる先がある一方、日本ではそれができず、別居している家族や親族に頼る傾向にあるということ。そのうえコロナ禍を経たことで孤立化が進み、そこにも遠慮が生まれて、“頼りづらさ”が加速している面もあると推測できます。つまり、いまの時代を生き抜くためには、人を頼るスキル=支援を受け入れる“受援力”が必須なのです」(吉田さん)

「頼り上手」が引き寄せるもの

 生馬の目を抜く芸能界でも、特にお笑いの世界は売れる確率が3%といわれるうえ、ブレークした後も先輩後輩らとしのぎを削る厳しい世界。

 そんな中、約40年にわたってお茶の間に愛されているダチョウ倶楽部のリーダー・肥後克広(60才)は、「長く続けられているのは、人に頼ることを覚えたことが大きいんじゃないかな。ここまでやってこられたのはみんなに助けられたから」と笑顔を見せる。

「若い頃は多少なりとも“後輩には負けられない”というプライドはありましたけれど、10年くらい前、ちょうど50才になった頃から、コンプライアンスが厳しくなったりSNSで拡散されたことがニュースになるようになったり、変化の波が一気に来たんですよね。その時期から、『コイツがまた女遊びをして…』というような昭和でやっていたお笑いは、コンプラ的にまずアウトになりました。日常生活でも女性の店員さんに『かわいいね』と言うのがセクハラになるとか、スチュワーデスさんはCAさんと呼ばないといけないとか、どんどん状況が変わる。さすがに後輩に教えてもらわないと無理だと悟ったんです」(肥後・以下同)

 要するに「ギブアップした」と振り返る肥後は、還暦を迎えたいま、仕事面以外においても「頼り上手」になったと続ける。

「これは“老い”がいちばんの理由ですね(苦笑)。階段でも自分が思っているよりも足が上がっていないし、日光を浴びると脳天が熱くなるくらい髪も薄くなった。だから無理をしないことにしたんです。荷物が重いときは『これ持って』とためらわずに言うし、苦手なSNSは『わかんないからやって』と丸投げしています(笑い)」

頼ることで“心の安寧”を得る

 周囲に頼ることによって生まれた大きなメリットは心の安寧だったという。

「頼るためには、まずは相手を認める必要がある。そうやって周囲の知人や後輩のことを認めたことですごく気持ちが楽になりました。『おれの言うとおりにやってほしい』じゃなくて、おれより仕事できる人にお願いします、というスタンスでよくなったし、“絶対にこうじゃなきゃいけない”という執着みたいなものがなくなりました」

 吉田さんも「上手に頼れるようになると心の健康を保つことができる」とその意見に大きくうなずく。

「医学的にも、うつが減る、健康寿命が延びる、人とつながる力が増えて自殺率が下がるという研究結果が発表されています」(吉田さん)

 一人っ子ゆえ「頼る」「甘える」が昔から自然にできていたタイプだと自らを分析する女優の鈴木砂羽(51才)も、「頼る力」と体の健康には相関関係があると声を揃える。

「病院にかかるときもまずは知り合いの先生を頼って、該当の診療科の先生を紹介してもらいますね。少し前も更年期症状がひどいとき、歯科医院の先生に相談をしたら婦人科の先生を紹介してもらいました。特に専門家は知識や経験がものをいうし、紹介してもらった病院へ行けば『○○先生の紹介だから』としっかり向き合ってもらえます」(鈴木さん)

 頼る力によって財産を築いた強者もいる。『ユダヤ人大富豪の教え』などの著作がある作家の本田健さんだ。累計800万部超えというミリオンセラー作家は、頼る力によって成功と財産を引き寄せてきた。

「自分で言うのもなんですが、ぼくは“超頼り上手”。英語には自力で億万長者になるという『セルフメイド・ミリオネア』という言葉があるんですが、現実にはそれは不可能です。なぜなら会社を経営するにしても、本を出すにしても、たったひとりで完結できることは何一つない。私も本を書くときこそひとりですが、出版社の編集者さんに読んでもらって推敲を重ねるし、印刷所の人が刷ってくれ、書店員さんが箱から出して並べてくれなければ店頭には並ばない。そしてなにより、買ってくれるお客さんがいなければ成立しません。そう考えると、自分のやっていることは0.01%くらいで、あとは周りがやってくださっているんですよね。だから幸運とか成功というのは結局何人の人に助けてもらえるか、ということだとも思うんです」(本田さん)

※女性セブン2023年11月9日号
https://josei7.com/

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