暮らし

女優・小山明子さん「コロナ禍の経済危機で捨てたもの」お金の使い方を見直してたどりついた心境を明かす

 女優の小山明子さん(88才)はコロナ禍による収入減と預金残高の減少によって“うつ状態”になってしまったという。回復への道のりを支えたのは、故・大島渚さんとの息子2人だという。それまで見せてきた“強い母”を捨てて、穏やかな暮らしをおくる現在までの経験を語っていただきました。

教えてくれた人

女優・エッセイスト 小山明子さん

1955年に映画『ママ横をむいてて』(松竹)でデビュー。映画を中心に活躍し、1960年に映画監督の故・大島渚さん(享年80)と結婚。ドラマ、舞台と活躍の場を広げる。1996年に大島さんが脳出血で倒れ、17年間の介護生活を送る。2008年『パパはマイナス50点 介護うつを越えて 夫、大島渚を支えた10年』(集英社)で、日本文芸大賞エッセイ賞を受賞。

写真/時事通信

女優・小山明子さんがコロナ禍を経て捨てたもの

「大きな壁にぶつかった私がまず捨てたのは“強い母”でいることでした」

 とは、女優の小山明子だ。映画『戦場のメリークリスマス』などの監督として知られる故・大島渚さんの妻でもある。

「コロナ禍の2021年に仕事が途絶えて収入がなくなり、預金残高が少なくなっていきました。その不安から私、うつ病になってしまったんです。86才のときでした。それまではお金に無頓着な生活を送っていたんです」(小山・以下同)

 人前に出る仕事のため、美容や服装にはかなりの費用を使ってきたという。ボランティア活動も行っているため交友関係が広く、食事に行ってはごちそうしていた。

「毎月の出費を見ると、光熱費を含めた家の維持費に数十万円、クレジットカードの引き落としも相当額あり、貯金残高と照らし合わせると、底をつく日が間もなくやってくることがわかったんです。“このまま私が生きていたら、子供や孫たちに迷惑をかけてしまう”。そう思うと、眠れなくなりました」

経済不安から「うつ」に…。家計の整え方とは?

 母親の異変に気づいた2人の息子が、小山を病院に連れて行き、うつ病と診断された。

「それまでの私は、自分のことは自分で行い、息子たちとは適度な距離を置いてひとり暮らしをしていました。でも私が弱っていることに気づいてくれて、それぞれのお嫁さんも含めて4人で話し合い、私のサポート体制を整えてくれることになったんです」

 息子たち家族は、月の固定費を見直してくれ、クレジットカードをすべて解約。5つ入っていた生命保険の一部を解約した。保険は不安から入っていたものが多かったという。加えて、銀行口座を整理し、金融資産を現金化。家計をシンプルに整えてくれた。つまり、余計な固定費を捨てたのだ。

「それまでの私は、仕事をしながら子育てをし、夫の介護も乗り越えてきた自信があり、何でもひとりでできる“強い母”でした。でも、経済的に苦しくなったおかげで、その“仮面”を捨てざるをえなくなりました。自分ひとりで何でもやろうとせずに、人に頼ることも大切なんだと改めて思ったのです」

 それまで“強い母”として、小山ひとりで守ってきた家族が、今度は小山自身を助けてくれた。そのおかげで、うつ病も次第によくなり、いまでは完治したという。

「いまは、お嫁さんに家計管理をお願いしていて、月々の生活費をもらっています。そのおかげで、無駄遣いが減りました。使えるお金が限られているので、かつてのようにお友達に大盤振る舞いをすることはできません。

 “割り勘にしましょう”と言うのは最初、とてもつらかったです。プライドもありますからね。でも相手のかたが、“その方がこちらも気が楽です”とおっしゃってくれて…。おかげで人にごちそうする習慣やそのためのプライドも捨てられました」

お金をかけなくても満たされる生活へ

 経済的な危機があったおかげで、家族と改めて向き合い、さまざまなものを捨て、小山は変われたのだという。これからは身の丈に合った生活に整えなければならないと、お中元やお歳暮、年賀状などの習慣や、孫への日常的なお小遣いもやめたという。

「観劇などお金がかかる趣味もやめました。いまの楽しみは、地元のコーラス教室や孫とのLINE、友達とのお茶会です。健康維持のため20年以上続けているスイミングスクールにも変わらず通っています。そんないまの生活を冷静に見つめ直すと、お金をかけなくても満たされることがたくさんあることに気づかされましたね」

 コロナ禍が落ち着き、再び多忙な毎日に身を置くようになった小山。講演会、トークショー、ラジオ、朗読、取材も増えた。夫の没後10年を迎え『戦場のメリークリスマス』のリバイバル上映もあった。

「再び収入を得られるようになりましたが、かつての生活に戻ろうとは思いません。一度捨てましたからね。これまでは、強い母でいなければならない、ごちそうしなければならないなど、“しなければならない”という考えに縛られていた気もします。そこから解放されたいまの方が、満たされている気がします」

 穏やかな笑みをたたえながら、そう語ってくれた。

小山明子さんが「捨てたもの」リスト

□ 強い母でいること

□ お金への無頓着さ

□ 衝動買い

□ 生命保険(5社のうち3社)

□ 7枚のクレジットカード

□ 人にごちそうする習慣

□ お金がかかる趣味

□ 孫への日常的なお小遣い

□ 年賀状

□ お中元・お歳暮

取材・文/前川亜紀

※女性セブン2023年10月26日号
https://josei7.com/

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