「100才超えの人が114人!全国平均の3倍の町」京都・京丹後市の高齢者の食生活「長寿の秘密」を専門家が分析
100年を通り越して「人生120年」といわれる時代がやってきた。せっかく長生きをするなら、最期のときまでできる限り健康な体で楽しく過ごしたい。しかし、一体どうしたら“理想の120年”を体現できるのか。昔ながらの生活がいまなお残る京丹後市の日常に、答えがあった。
京都・京丹後市「100才超え」114人も
「好きな食べ物はチョコレート。そうそう、うどんも好きだよね」
家族の言葉に明るい笑顔を返す谷川睦子さんは大正9年生まれの103才。認知症があり、要介護1と認定されてはいるものの、離れに住む息子夫婦の手を借りることなく食事やトイレ、着替えなどは自分でこなし、段差の多い家の中を自在に歩き回るなど、日常生活にほぼ支障がない。おしゃべりも大好きで、特に趣味の俳句の話になるといっそう饒舌になり、途切れることなく話が続く。
百寿を超えてなお心身ともに健康で、周囲とのコミュニケーションを楽しめる──。
京都府の最北端、京丹後市にはそんな理想の長寿ライフを体現する高齢者が多く暮らしている。5万人余の人口のうち、谷川さんのような100才以上の人口率が今年9月末時点で全国平均のおよそ3倍にも及ぶ114人。しかもただ長寿というだけではない。京丹後の町を訪ねてみると、自分の足で歩き、自分の歯で食べ、そして楽しそうに語らう高齢者の姿があった。
「100才の町」京丹後市・長寿の秘密は?
“100才の町”が位置するのは京都市内から車で1時間半ほどの日本海に面した場所。海はもちろん里山、川など自然が豊かな地域であり、江戸時代に発祥し約300年の伝統を誇る絹織物の丹後ちりめんの産地としても有名だ。
そんな京丹後市の“長寿の秘密”を探るべく、京都府立医科大学では2017年から、短命で知られる青森県の弘前大学と協同で「京丹後長寿コホート研究」を進めている。同研究のプロジェクトリーダーを務める京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学教授の的場聖明さんが説明する。
「この研究は少なくとも2032年まで15年間にわたって行われる予定で、今年で6年目。65才以上の京丹後市民を対象に調査を行っています。項目は職業や学歴、日常生活の状況など『社会環境的データ』のほか、食事や睡眠、趣味や会話の頻度といった『個人生活活動データ』、血液検査や血管年齢、腸内細菌、運動能力、認知機能などの『生理・生化学データ』、さらにゲノムなどの『分子生理学的データ』と、4分野の約2000項目に及びます」