介護帰省の交通費は工夫次第で節約できる!「飛行機は介護割引、新幹線は早割」活用事例をFPが解説
離れて暮らす親の介護が必要になったら、どんな介護を選びますか? 仕事や子育て、住宅事情などさまざまな事情で親と同居して介護をすることが難しいことも。通いで介護をする場合には、距離によって交通費の負担も大きいもの。そこで、遠距離介護の経験をもつファイナンシャルプランナー・行政書士の河村修一さんに、離れて暮らす親の介護における「交通費」の節約術について解説いただきました。
遠距離介護には緊急対応が難しく交通費の負担も
離れて暮らす親御さんに介護が必要になった場合、どのように介護していくか悩むのではないでしょうか。
要介護度や生活環境などによって選択肢はさまざまですが、親御さんの介護度が進んできたら同居での介護や、施設入所を考えるかもしれません。
まだひとりで生活ができている状態であれば、遠距離介護を選ぶというかたもいるでしょう。
一方、在宅介護を選択した場合、介護をする側や介護が必要な家族が海外に住んでいる、飛行機や新幹線を使わないと帰省できない遠距離となると、緊急での対応はなかなか困難です。
私は東京在住ですが、親の実家は山口県なので、帰省には専ら飛行機を使う「遠距離介護」を経験しました。
父親は要支援~要介護1でひとり暮らし、親に何かあったときにすぐに対応できないことは悩みの種でした。
何といっても悩ましかったのは、「交通費の負担が大きい」ことです。帰省には、高速バスもない地域だったので、飛行機を利用し、地元に到着後もレンタカーを借りなければならない状況でした。
帰省の度に10万円に近い出費で、そのうち半分は交通費が占めていました。
ちなみに、私のように、離れて暮らす親御さんの遠距離介護をしている人はどのくらいいるでしょうか。調査をもとに考察してみます。
要介護者のいる単独世帯は増加傾向
2022年国民生活基礎超の概況より、「要介護者等」と「主な介護者」との同別居の状況をみると、「同居」が45.9%、「別居の家族等」は11.8%になっています。
2019年は「同居」が54.4%となっており、3年前に比べて「同居」で介護する人が減っています。
■要介護者と主な介護者の同居・別居の状況
同居(配偶者、子等)…45.9%
別居の家族等…11.8%
不詳…26.0%
事業者…15.7%
その他…0.6%
また、要介護者等のいる世帯について、世帯構造別にみると、「核家族世帯」が42.1%で最も多く、次いで「単独世帯」が30.7%となっており、「単独世帯」と「核家族世帯」は増加傾向にあります。
こうした調査から、今後も遠距離介護を選択する人は増えていくのではないでしょうか。別居の家族等による介護、単独世帯の増加等から今後も別居での介護のケースが増えることも予測されます。
また、なかには現在の生活環境を変えることが難しいなどの理由から遠距離介護を選択される人もいるでしょう。
※参考/厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/05.pdf
厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/05.pdf
遠距離介護における交通費を抑える対策
遠距離介護では、帰省するのに飛行機や新幹線を利用する場合も多いでしょう。
私の場合は、できるだけ計画的に帰省することによって早割の利用等で飛行機代を節約しました。以下で具体的な交通費の節約法を紹介します。
まず、飛行機は、介護割引制度があります。また、早割や株主優待を利用することによって費用を安く抑えることもできます。
飛行機は早割&介護割引きを活用
以下は一例で、日本航空の「羽田から山口宇部空港」までの片道運賃になります。
1か月くらい前から予約することで、正規料金の約3割ですみます。介護帰省割引を利用すればさらに10%割引となり、約70%強の割引とかなりお得になります。
なお、介護割引きを使うには、JALマイレージバンクへの入会が必要で、「介護帰省割引情報登録申込書」 に加え、【1】要介護・要支援認定を確認できる公的書類、【2】「介護をする方」と「介護を必要とされる方」とのご関係(二親等以内)を証明する公的書類、【3】「介護をする方」の現住所を証明する公的書類が必要になります。
詳しくは、日本航空のホームページをご参照ください。
https://www.jal.co.jp/jp/ja/dom/fare/rule/pass/kaigo.html
<日本航空>の場合(単位:円)
主な種類|普通席
フレックス(正規料金)| 45,030
セイバー(前日までの予約)| 21,710
スペシャルセイバー(28日前までの予約)|13,790
介護帰省割引 各種運賃より10%割引
※2023年9月10日現在
運賃は予約するタイミングなどで変動します。また、その他の割引制度や介護帰省割引等について、詳しくは日本航空のホームページをご参照ください。https://www.jal.co.jp/jp/ja/dom/special/new-fare/
なお、日本航空の他、全日空、スターフライヤ-、ソラシドエアに介護割引があります。また、格安航空会社を利用して交通費を抑えるのもひとつです。※詳しくは各社のホームページをご覧ください。
新幹線には介護割引きはない
一方、新幹線の場合は、介護割引はありませんが、早割等の割引制度があります。
例えば、全国のJR対象の「ジパング倶楽部」、JR東日本・JR北海道対象の「えきねっとトクだ値」、JR東海・JR西日本・JR九州対象の「EX早得」等、JR西日本・JR四国・JR九州など対象の「e5489」等があります。
以下、「東京から新山口駅」までの新幹線の片道料金の例です。
※一例になりますので、詳しくはJR各社にお問い合わせください。
<JR東海・JR西日本・JR九州>の場合
■新幹線(単位:円)
正規料金(自由席)|20,470
「EX予約サービス」普通車指定席|20,090
「EX早特」普通車指定席(平日)|17,420
「EX早特21ワイド」普通車指定席|16,400
※2023年9月10日現在
遠距離介護は交通費の負担大【まとめ】
遠距離介護では、交通費の負担が大きくなります。飛行機代や新幹線代などの割引制度を利用して少しでも負担を少なくすることが大切です。
要介護者の単身世帯が増え、今後も別居での在宅介護を選択する人が増えていくことが予測されます。
緊急時は難しいかもしれませんが、介護帰省の予定や計画が早めに決められるようなら、割引率の高い早割や介護割引等を利用してできるだけ交通費の負担を軽減しましょう。
執筆
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、複数の保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
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