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特別養護老人ホーム(特養)とは?費用や入居条件、申し込み方法「早く入居するコツ」も解説

「特別養護老人ホーム」(特養・とくよう)は、介護が必要な人のための公的な施設です。入居条件、種類、特徴などについて専門家が解説。介護老人保健施設(老健)との違いや、メリット・デメリット、実際の入居経験者が明かす早く入居するためのコツなども紹介します(監修/社会福祉士・ライトさん)。

特別養護老人ホームのトップ画像

特別養護老人ホーム(特養)とは?

「特別養護老人ホーム」(とくべつようごろうじんほーむ)は、介護保険サービスを利用した公的な高齢者施設のひとつで、略して「特養」(とくよう)と呼ばれています。

「特別養護老人ホーム」は、介護保険法では「介護老人福祉施設」のことを指します。

 老人福祉法・介護保険法に基づき、主に地方公共団体や社会福祉法人により運営されています。

 介護を必要としているかたを受け入れ、できる限り在宅復帰ができることを念頭に、入浴・食事などの日常生活での支援や機能訓練、療養上のケアやサービスを提供しています。

特別養護老人ホームの特徴

「特養」は、介護保険の要介護認定を受けた要介護3以上のかたが原則受け入れの対象となっています。

 民間の介護付き有料老人ホームなどと比べて入居費用が安いのが特徴です。

 ただし、首都圏など待機者が多い地域もあり、申し込んでも1年以上待たされることも。在宅介護が難しいなど緊急度合いなどにより優先的に入居できるケースもありますので、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)などに相談してみるといいでしょう。

 また、「特養」の種類には、住民票がある市区町村にある地域密着型の特養のほか、どこの地域でも入所できる広域型などもあります。

特養とは「特養」とは要介護3以上から入居できる公的な高齢者施設

※参考/厚生労働省「どんなサービスがあるの? – 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」

特別養護老人ホームはこんな人におすすめ!

・要介護3以上で在宅介護が難しくなりそうな人。

・365日24時間の見守りや介助をしてほしい。

・利用料をなるべく安く抑えたい。

・自宅の近くなら通院や面会がしやすい。

特別養護老人ホームの入居基準

「特養」の入居条件は、原則として65才以上の要介護3~5のかたです。

 40才~64才までのかたは特定疾病が認められた場合のみ、要介護3以上のかたが対象となります。

 なお、要介護1~2のかたは、特例により入居が認められた場合のみ対象となります。

・年齢

 原則として65才以上(特例として40~64才)

・要介護3以上

 原則として要介護3以上の認定を受けたかた。特例として要介護1~2のかたも対象となります。

 特例の入居条件※には、認知症などで意思疎通が困難、単身世帯で家族などによる在宅介護が困難で介護サービスも受けられないなどの条件があります。

※参考/厚生労働省「特例入所に係る指針」

 なお、施設にもよりますが、「特養」は、認知症のかたを受け入れている施設も多くあります。

→サ高住「サービス付き高齢者向け住宅」とは?費用や入居条件、サービスを解説【専門家監修】

特別養護老人ホームで提供されるサービス

「特養」で提供されるサービスは、主に生活支援と介護支援です。

・生活支援

 居室の提供・食事やおやつの提供・入浴(週2回以上)・洗濯・掃除・血圧測定などの健康管理など。

・介護支援

 介護保険で適用される範囲で、食事・入浴・排泄介助など介護が必要なかたに合わせた介護サービスが受けられます。

・レクリエーション

 簡単な体操や、書道、将棋など、入居者の状態や施設によってさまざまなレクリエーションが実施されます。また、施設によってはひな祭りやお誕生日会などのイベントが行われます

・機能訓練

 自立支援を目的とした機能訓練が実施されます。施設によっては、作業療法士や理学療法士などリハビリ専門職が配置されているケースもあります。

・医療的ケア

 医師の指示のもと看護師などによる医療的ケアや、医療機関などと連携して緊急時の対応が行われます。しかし、「特養」は嘱託医の配置が義務付けられていないため、長期にわたる治療や、重篤な医療行為が必要になった場合などは医療的ケアが困難なため、退所して病院に移る必要があります。

・看取り

「特養」は、看取りまで対応する施設が増えています。その一方で、医師が不在のときや容体が急変したときは、医療機関へ搬送するケースも。看取りの体制については、施設に確認しておくといいでしょう。

施設の基準や人員体制

 入所者3人に対して介護職員または看護職員が1人は配置する決まりになっています。

 栄養士・機能訓練指導員・介護支援専門員は各1人。

 看護師は、原則的には専従で、入所者が30人以下の施設では1人以上、31人~50人の施設で2人以上が常勤換算で必要とされています。

特別養護老人ホームの居室や設備

【居室】

・広さ

「特養」の居室は、1人あたり床面積が10.65㎡(約7畳)以上、定員は4名以下という基準があります。

・居室のタイプ

 部屋の種類は、一般的な多床室や個室、ユニット型の多床室や個室などがあります。

 多床室は、定員2名以上の居室で4名部屋が一般的。1部屋に複数のベッドが設置されています。

 ユニット型とは、複数の個室をグループ化し、プライバシーを確保すると同時に介護をしやすくした居室の形態のこと。

 多床室をパーテーションなどで区切り個室のようにした「ユニット型個室的多床室」や、準個室を10~12人前後で1つのグループにした「ユニット型個室」など、施設によってさまざまなケースがあります。

【設備】

 居室にトイレがある場合もありますが、ない場合は同じフロアにトイレを設置しています。

 備えつけの家具がある施設もありますが、テレビなど利用者が持ち込みたい場合は施設と相談の上、用意する必要があります。

 リクライニングベッド、床上センサーマット、クローゼット、エアコン、カーテン、緊急通報装置、車いす対応洗面台などの設備が一般的ですが、施設により異なります。

※参考/厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」

特別養護老人ホームの費用と内訳

・初期費用:0円

 基本的には公共タイプの施設なので、入居一時金などの初期費用はかかりません。

・月額利用料(自己負担費):約5万円~約20万円前後

【内訳】

介護サービス費:特養で受ける介護サービスの料金(所得により1~3割自己負担)

食費:1日3食分

居住費:居室を利用することについてかかる費用(多床室、ユニット型などによって変わる)

日常生活費:理美容代、医療費、薬代、日用品の購入代金など。

 なお、介護付有料老人ホームなどとは異なり、「特養」は、おむつ代は利用料に含まれています。

→最旬!特別養護老人ホームリスト「割安で入居者に寄り添ったケアが受けられる特養10選」

特別養護老人ホームのメリット・デメリット

【メリット】

・介護度が重い人や認知症などにも広く対応してくれる。

・初期費用がかからず、月額利用料も民間の高齢者施設より安い。

・公的施設という安心感がある。

・おむつ代が別途でかからない。

【デメリット】

・入所条件に要介護3以上という制約がある。

・地域によっては待機者が多く、すぐ入所できないことがある。

・外部からのレクリエーション派遣が少ない。

入所までの流れ

Step1:要介護認定を受ける

 原則、要介護3以上であれば申し込みが可能。

Step2:施設の情報をリサーチする

 資料をもらったり見学をしたりして候補を絞る。

Step3:自治体から、または施設に直接申し込む

・自治体から申し込む場合

 入所希望調査書(申込書)を住んでいる地域の保険福祉課などからもらうか、公式ホームページからダウロードして用意する。記入後、市・区役所に提出。

 住んでいる地域によって申し込み方法が異なる場合がありますので、ご確認ください。

・施設に直接申し込む場合

 施設に問い合わせ、指示に従い申し込む。

 申込書の記入についてはケアマネジャーに相談するとスムーズです。希望する施設が複数ある場合、それぞれに申し込む必要があります。

Step4:自治体・施設による審査

 申込者の要介護度、介護期間、介護者の状況、行動・心理症状などで審査して必要性の高い順で優先順位が決まります。

 なお、審査基準は自治体によって決められています。申し込み順ではありません。

Step5:施設から連絡がくる

 施設から連絡を受けたら、健康診断書などの書類を提出する。「特養」の職員による本人との面接が実施され、判定会議で認められると正式に入所となります。

Step6:入居

 施設の指示に従い、必要書類と持参物を準備して入所します。

 なお、必要な書類は、介護保険証のコピーなど。施設や市区町村により、介護認定調査票のコピーなども必要になります。

 施設から入所許可の連絡がきたら、すみやかな入所が求められます。「半年後にしたい」などの希望は受け入れてもらえないので注意しましょう。

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特別養護老人ホームと介護老人保健施設(老健)の違い

 介護老人保健施設は、老健(ロウケン)とも呼ばれ、病気やケガなどでの入院した後に、退院してすぐに自宅で生活することが難しい高齢者を対象に受け入れる公的な施設です。

 原則3~6か月という短期間入所して、リハビリなど行い在宅復帰を目指します。

 老健の入所条件は、要介護1以上の自宅での生活が難しい65才以上となります。

「特養」とは違い、原則として最長でも6か月までしか入所できませんが、看護師だけはなく常勤の医師がいるので、手厚い医療ケアが受けられます。在宅復帰が目的の施設なので、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリテーションが充実しています。

「特養」に早く入所するためのポイント

「特養」は人気が高く、どこも入居の順番待ちになることが多いのが実情。親の介護経験があるR60記者が取材をもとに「特養」入所のポイントをまとめました。

・新設の「特養」の情報をリサーチ

 まず、施設の入所審査は、厳密に行われるため特別な秘訣はありませんが、以下のポイントに気をつけることで、思ったより早く入居できたというかたたちの実例を紹介します。

「80代の父親は要介護4で『特養』に入所を考えていたのですが、順番待ちなので半ばあきらめていました。一応、申し込みはしておこうと思って資料を見ていたら、約1年後に新設される『特養』の情報がありました。

 新設の施設を候補のひとつに申し込んだんです。それでも待機者が多いので2年以上は待つことを覚悟していたのですが、施設完成とほぼ同時に声がかかり、助かりました」(東京都在住・50代女性)

「特養」の申込書には、希望する施設を書く欄があります。その際、新設予定の「特養」がないか、地域の保険福祉課などに聞いたり、担当のケアマネなどから情報を聞いてみたりして情報収集するのがおすすめです。

 新設の施設の場合、収容人数が多いケースがあるので、早めに入所できる可能性もあります。

・申込書の希望理由をしっかり記入する

「ケアマネから、入所の必要性をきちんと書くことが大切で、書き方にもコツがあると聞いていたため、詳細に記入しました。

 さらに、ケアマネにも協力してもらい、意見も書いてもらいました。そのおかげか、半年待たずに入所許可がおりました」(神奈川県在住・60代女性)

 特養の申込書の希望理由欄は、必ずしっかり書きましょう。要介護者の身体の状態や置かれている家族の状況、入所の必要性をしっかり伝えることが大切です。

 ケアマネに協力してもらい、意見を書いてもらうのも効果的のようです。

 また、「特養」への入所を早めるために、自治体や施設により、特別な事情があるときには意見書を別途提出することも有効なケースが。いずれもケアマネに相談してみることをおすすめします。

首都圏以外の「特養」を狙う

「都内に暮らす80代の母は認知症の症状も出始めていました。在宅介護が厳しくなってきたので『特養』に申し込んだところ、順番待ちで途方に暮れていました。

 そこで近県に住んでいるきょうだいの家の近くの『特養』に申し込んでみたところ、1年以内に入所が決まり、家族でホッとしました」(神奈川県在住・60代女性)

「特養」は要介護者が住んでいる地域以外も申し込むことができます(地域密着型特別養護老人ホームは除く)。

 住んでいる地域の自治体が他県の「特養」と連携しているケースなどもあるので、子どもが住んでいる地域の施設も候補にすることも考えてみましょう。

※実例は取材をもとにしていますが、プライバシーに配慮し一部表現を変えているところもあります。

特養の費用を安く抑えるには?「特定入所者介護サービス費」

 ファイナンシャルプランナーの河村修一さんによると、

「特別養護老人ホーム等の公的施設であれば、一定の所得や資産によって、食費や居住費の自己負担が軽減できる制度があります。これを「補足給付(特定入所者介護サービス費)」と呼びます」

 対象者や、所得や資産要件などをチェックしておきましょう。

【1】世帯全員が住民税非課税(別世帯に配偶者がいる場合、その配偶者が住民税非課税)

【2】預貯金等が基準額(資産要件)

→オリジナル記事「特養に早く入所できた実例・介護費用を安く抑える補足給付とは?」

監修者

社会福祉士・ライトさん

地域包括支援センターの社会福祉士として勤務。Instagram「ライト@介護保険のスペシャリスト」として情報を発信し、2万人を超えるフォロワーに支持されている。介護保険サービスの活用から、高齢者施設の解説など、スライドを駆使しながらわかりやすく伝えている。https://www.instagram.com/light_kaigo/?hl=ja

→「介護保険をわかりやすく解説!」ライトさんの記事

取材・文/本上夕貴 構成/編集部 写真・イラスト/イメージマート

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