定年後の意外な夫婦関係の変化「金銭感覚のズレ、夫が要介護に」実例に学ぶ対処法を専門家が解説
【1】夫の不平不満や愚痴が増える
「再雇用先の環境になじめないつらさやストレス、予定がない空虚さを、不平不満、愚痴、社会批判、クレームなどで晴らす夫についての相談をよくされます」(高草木さん)。妻はいちいち対応せず、席を外してやり過ごそう。
【2】夫の束縛と干渉がひどくなる
「私が出かけると、<何時に帰ってくる?>といったメールの嵐。友達にも気を使われるし、うんざりします」(愛知県・60才)。妻が嫌がっていることに夫は気づいていないことも。行き先や帰宅時間のほか「何度もメールされても対応できない」と伝えておこう。
【3】仕事を辞めた夫に魅力を感じなくなる
「一流企業に勤める夫が格好よくて好きでした。定年後、作業着姿で肉体労働に励む彼を見たら、微妙な気持ちに」(東京都・55才)。社内での立場が変わり、弱気になった夫に幻滅したケースも。そこは、夫の立場も考えてあげよう。
【4】モラハラやDVが激しくなる
「もともと命令口調で威圧的な言動の多かった夫の態度が定年後に激化した、という相談もよく受けます。そういった相手は変わらないので、距離を置くか、命にかかわりそうなDVの場合は、自宅を出て、身の安全を確保しましょう」(高草木さん)
【5】夫の隠し事がバレる
「定年後、保存していた写真などから夫の過去の不倫が発覚し、どうすべきかという妻からの相談をよく受けます」(高草木さん)。夫にとっては清算済みのことでも、妻は裏切られていたというショックが大きく熟年離婚に発展することも。夫の過去を深掘りする際は慎重になった方がよさそう。
【6】金銭感覚のズレが顕著に
「定年後、収入が激減したにもかかわらず、現役時代の金銭感覚が抜けずに外食に買い物にと散財する夫に腹が立って仕方ありません」(石川県・62才)。現在の収入と支出を集計して夫に現実を認識させよう。それでも浪費するなら仕事をすすめるのも手。
【7】妻を部下扱いしだす
「部下に威張っていたタイプの夫は、定年後、妻を部下に見立てて説教しだす、という話をよく聞きます。こういう場合、これまでと態度を変えて対応するのが手。たとえば、それまで下手に出ていたなら、無表情で最低限の返事だけするなど。そうすることで夫が変わったケースもありました」(高草木さん)
【8】定年直後に夫が要介護状態に
60代で脳血管疾患や心疾患、認知症を患うなど、夫が要介護状態になるケースも多いと小野さんは言う。「親の介護は人に任せられても、夫の介護は自分で抱え込んでしまう人が多いんです」(小野さん)。夫の介護をするのはいいが、老老介護で行き詰まらないよう介護保険などの支援は活用しよう。息抜きも大切。
【9】1食多く作るなど家事の負担が増える
「定年後、夫が終日家にいるので、それまで作っていなかった昼食まで作らされてうんざり。夫は暇なのに、私は家事の負担が増えて忙しくなりました」(奈良県・60才)。定年前から辛抱強く家事を教えよう。冷凍食品などを活用して家事シェアしやすい工夫を。
【10】予想に反して無気力に
「定年前から休日は趣味の活動で飛び回り、“やりたいことが山ほどある。忙しくなるぞ”と意気込んでいた夫が、いざ定年になると、人が変わったように無気力に」(福岡県・58才)。職業人としてのステータスを失うダメージは、定年前には想像できないもの。新たな一歩を踏み出すまで気長に見守ってあげて。
【11】再雇用の仕事を辞める
「雇用延長したのに、立場が変わって部下が上司になるなどすると、プライドが許さず会社を辞めたという話は少なくありません。そのまま家にいては妻が夫の不満のはけ口になりがちなので、無理に夫を働かせるのではなく、妻が外に出て働くのも手。気分転換にもなり、経済的にもプラスに」(小野さん)
【12】夫婦で思い描いていた定年後の生活にズレが判明
「夫から“定年したら田舎暮らしをする。家も目星をつけてある”と突然言われてびっくり。ひとりで行ってもらいました。住み慣れた家を離れるなんて冗談じゃない」(大阪府・58才)。一度しかない人生、がまんして相手に合わせるのではなく、よく話し合って選択を。
教えてくれた人
高草木陽光(たかくさぎはるみ)さん/夫婦問題カウンセラー
「HaRuカウンセリングオフィス」代表。これまで約9000人のカウンセリングを行い、夫婦問題や家族問題で悩む人の心に寄り添ってきた。著書に『なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか』(左右社)など。
小野喜美子さん/女性の投稿誌『Wife』編集長
夫や子供との関係、老いへの向き合い方など女性の生き方をテーマにした投稿誌『Wife』の5代目編集長。約30年間、化学系企業で医薬品などの研究開発に従事する傍ら、『Wife』でも約20年間執筆してきた。
取材・文/桜田容子 イラスト/なとみみわ、尾代ゆうこ
※女性セブン2023年7月13日号
https://josei7.com/
●夫の定年後に妻が備えるべきこと「親の介護費用、退職翌年の住民税」ほか実例に学ぶ
●「夫が定年後、無気力になりお酒ばかり飲んでいる」憂う妻に毒蝮三太夫がアドバイス|「マムちゃんの毒入り相談室」第44回
●「定年後うつ」にならない“充実したセカンドライフ”は準備で決まる!知っておきたい「60才〜75才に起こる出来事チェックリスト」