「定年後うつ」にならない“充実したセカンドライフ”は準備で決まる!知っておきたい「60才〜75才に起こる出来事チェックリスト」
定年後は夫婦で旅行を楽しんだり、趣味にいそしんだり…。そんな素敵なセカンドライフを思い描いている人も多いだろう。しかし、想定もしていなかった意外な落とし穴もある。どんな“想定外”が起こるのか、体験者の声をもとに専門家に対策を聞いた。
定年は70才に。元気なうちは長く働くことになる?
かつて定年といえば、60才が一般的だった。体が元気なうちの引退、だからこそ“定年後のセカンドライフ”が思い描けたのだ。しかし、今後はそうはいかないようだ。東京都在住の主婦・Tさん(63才)は言う。
「4才年上の夫とは定年後、お遍路巡りをしようなど、さまざまな計画を立てていました。ところが夫が59才のとき、会社の方針で定年が65才に延長。がっかりはしましたが、楽しみはとっておこうということに。ところが65才で定年を迎えると、今度は再雇用。結局70才まで働くことになりました。家計は助かりますが、現在夫は67才で糖尿病持ち。年齢的にも体力的にも、旅行に行く余裕はなくなってきました…」
2021(令和3)年4月、経済社会の活力を維持し、働く意欲がある高齢者が活躍できるようにと、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の一部が改正され、定年か継続雇用制度を70才まで引き上げるよう、企業に努力義務が課せられた。定年制の廃止も努力義務になったため、今後はTさん夫婦のように70才までは現役で働くことがスタンダードになりそうだ。
さらに、「元気なうちは長く働く状況にもなっている」とは、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんだ。
「現在、老齢厚生年金、老齢基礎年金ともに受給開始は原則65才。60才で仕事を辞めると5年間は無収入になります。貯蓄があればいいですが、そうでないなら65才までは働かざるを得ないわけです。さらに、年金の受給開始年齢を70才に繰り下げれば受給額が42%増に、75才に繰り下げれば84%増になるため、長く働いて受給開始を遅らせた方が、経済的にゆとりのある生活が送れるというわけです」(井戸さん)
そうなると定年後は後期高齢者。Tさんの言うように、旅行などを楽しむ間もなく、けがや病気などで、夫の介護が始まる。
「定年前から夫が三大疾病や認知症を患い、介護を始める妻もいます。親の介護は想定できても、夫の介護がこれほど早く始まるとは予想外だったという声はよく聞きます」(『Wife』編集長・小野喜美子さん)
社会の仕組みが変わり、“これまでの定年後”が通用しなくなったいま、60才以降、何が起こるかを知ることがまずは大切になる。