アルツハイマー型認知症の兆候を発見する早期発見リストと認知予備力
認知症の約6割を占めるのがアルツハイマー型認知症だ。
「アルツハイマー型認知症の特徴は“もの忘れ”です。ただし、本人が自覚することはまずありません。進行を遅らせるためには、家族など周りにいる人が早期発見して、すばやく対処するのが大切です」
これまで脳神経外科医として3万人以上の認知症患者の診療にあたってきた奥村歩先生(おくむらmemoryクリニック院長)はこう話す。
そこで、奥村先生にアルツハイマー型認知症の兆候の捉え方や、その予防策である「認知予備力」を高める方法を教えてもらった。
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アルツハイマー型認知症の兆候をチェックしよう
次のような行動が見られたらアルツハイマー型認知症の兆候かもしれない。
【認知症 早期発見のためのチェックリスト】
1:同じことを何度も言う。
2:家族旅行など、最近の印象的な出来事を思い出せない。
3:財布や鍵など、大切なものをよくなくす。
4:電話を受けたことをうまく伝えられない。
5:テレビもリモコンがうまく使えない。
6:お化粧が苦手になった。
7:夫婦ゲンカが増えた。
※4つ以上に当てはまったら専門医などを受診しよう(0~1は心配なし、2~3は要注意)。
アルツハイマー型認知症になると記憶力や判断力が低下し、会話が理解できなかったり、時間や場所がわからなくなったりする。症状が進むとイライラや意欲低下、うつ症状などの精神的な症状のほか、徘徊、幻覚、暴力行為など行動が変わることもある。
認知予備力が認知症予防のカギ!「何をするか」より「誰とするか」
「認知予備力は、脳の神経細胞のネットワークにひそむとされる力で、人の気持ちを汲み取ってコミュニケーションをとることで鍛えられると言われています。つまり、認知予備力とは社会とつながる力そのものなのです。多くの先進国では、アルツハイマー型認知症対策として認知予備力の向上に力を入れていて、その成果で認知症の患者数がぐんと減っているんです」(奥村先生、以、「」内同)
認知予備力を高めるために有効なのは、1人で黙々と行うパズルや読書より、相手と駆け引きするチェスや麻雀といったゲーム。楽器なら1人で演奏するより他者と息を合わせるアンサンブルが有効だ。
アルツハイマー型認知症の対策としては運動の有効性も確認されている。ウォーキングなどのほどよい有酸素運動を1回30分、週に3回行うことは認知症対策だけでなく、糖尿病や動脈硬化の予防にもなるため、ぜひ取り入れてほしいと奥村先生は言う。
「社交ダンスもおすすめです。社交ダンスは人の動きを読みながら踊るものですし、パートナーと約束をする、ダンスの前には身支度を整えるなど、頭を使う機会がとても多い。男女がペアになることで、ちょっと色気の要素があるのもいいですね。
社交ダンスでなくてもいいのです。気の合う人たちとストレスなく楽しめる趣味をもつことが認知予備力の向上、認知症の予防につながるのは間違いありません」
教えてくれた人
奥村歩/おくむらmemoryクリニック院長。脳神経外科学会評議員、日本認知症学会 認定専門医・指導医、アルツハイマー病研究会運営委員などを務める。
構成・文/市原淳子
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