“スロージョギング”の正しいやり方と運動効果|家でもできる!きつくないのに筋肉と持久力がつく
運動を始めたいけど、体力も筋力も自信がない…という人には、歩幅を小さくして、できるだけゆっくり走る“スロージョギング(※)”がおすすめ。しっかりと脚力が鍛えられ、ゆっくり歩くより消費エネルギーが大きいという。続けるほどに体力がつくので、フルマラソンを完走するまでになった人もいるほど。周りの景色を楽しみながらのゆったりできるスロージョギング、その特徴や正しいやり方を専門家に教えてもらった。
(※)スロージョギングは(一社)日本スロージョギング協会の登録商標です。
スロージョギングで脚力を鍛えて、足の変形を食い止める
歩くことが健康に良いといわれて、いくら頑張って歩いても、ラクな歩き方を続けていては、姿勢も悪化し、筋力も衰えるばかりだという。さらに、足の形の変化も、歩き方に影響を与えている。アシックススポーツ工学研究所 主席研究員の市川将さんが、足の変形について教えてくれた。
「足は、足裏にある3つの支点を結んだアーチ形状になっています。このアーチは、着地時のクッションや蹴り出すときのバネとなるのですが、加齢や生活習慣でアーチが潰れると、足の幅が広がり、扁平足などを招いてしまうのです」(市川さん・以下同)
“昔と同じように歩いているのになぜ?”と感じるのは、このような足の変化が進んでいるからなのだ。正しいフォームでスロージョギングを行えば、足の筋力を鍛えるだけでなく、姿勢も整い、足の変形を食い止める効果も期待できる。
■足の支点を結ぶ「3つのアーチ」(資料提供/アシックス)
3つのアーチのうち、もっとも潰れやすいのが横アーチで、足の幅が広がる原因に。また、内側縦アーチが潰れると扁平足や外反母趾を招く。
スロージョギングの小さな歩幅の走りにはスクワット効果も
スロージョギングは福岡大学名誉教授の田中宏暁さん(故人)が40年以上にわたる研究にもとづいて考案したもの。歩く速度で走れば、きつくないのに筋力と持久力がつき、生活習慣病の予防や脳細胞の活性化も期待できる。
通常のジョギングより、さらにゆっくり走るというスロージョギングは、福岡大学発祥。俳優のムロツヨシも実践しているそうだが、そもそもどんな目的で考案されたのか。
「考案者の田中宏暁教授は、2000年頃から『来る高齢化社会に向け、高齢者が自宅でも安全に取り組める運動を作ろう』との構想から、歩く速さで走るスロージョギングを開発されました。コロナ禍のいま、改めて必要とされている運動です」
そう語るのは、日本スロージョギング協会理事で健康運動指導士の佐藤紀子さん。どのくらいゆっくり走ればいいのだろうか?
「息が上がってはダメ。息切れせずに歌が歌えたり、誰かと雑談が続けられるペースがベストです。走るのが嫌いなかたも、本当にラクで驚くと思います。“高齢のかたが走るのは無理なのでは?”という声もありますが、人間は、もともと走る機能が備わった生き物。誰もが昔は走っていたのですから、いま歩けるかたなら、みんな走れます」(佐藤さん・以下同)
スロージョギングの効果は大きく分けて2つある。
「1つは、ウオーキングのような持久力に加え、歩く以上に大腿四頭(しとう)筋(前ももの筋肉)、大臀(だいでん)筋(お尻の筋肉)、腹筋、背筋などの大きな筋肉が鍛えられることです。歩幅を狭めて走るのは小さなスクワット運動の連続のようなものですから、丈夫な足腰作りにつながります。
もう1つは、使う筋肉が多い分、ウオーキングの約2倍のエネルギーを消費するので、メタボリックシンドロームの予防・改善や、シェイプアップを目指すかたにもおすすめです。きつくないのに効率よく消費量を増やすという点が、ほかにはない特徴なので、これであれば体力のない人も無理なく運動ができます」
■スロージョギングの走り方・特徴
歩幅を小さくして、できるだけゆっくり走る。笑顔で会話ができるニコニコペースを維持。ゆっくり歩くより消費エネルギーが大きい。長く走れるようになったらフルマラソンも夢ではない。
<足の着地部分>
足裏の前方(フォアフット)から
<1歩あたりの歩幅>
30cm前後
<速度>
時速3~5km
<1km移動にかかる時間>
12~20分
(時速5km→3kmの場合)※一般的な歩行速度は時速4~5km