“スロージョギング”の正しいやり方と運動効果|家でもできる!きつくないのに筋肉と持久力がつく
そんなにラクして運動効果を得ることが、本当に可能なのだろうか。
「1979年、“トレーニングは頑張らないと効果がない”といわれていた時代に、田中教授らは、最大強度の50%の運動でも、エネルギー源として糖と脂肪が消費され、心肺機能も高まることを実証しました。激しい運動を行うほど筋肉に乳酸がたまることは有名ですが、運動強度約50%は、血中の乳酸濃度が増え始めるギリギリのライン。つまり、乳酸をためずに運動効果も得られる絶好の値なのです。スロージョギングはこの強度にあたり、田中教授らはこれを、『ニコニコペース』と名付けました」
強度が低いことから、高血圧患者の運動療法としても活用されている。
「日産自動車座間事業所では、従業員のメタボ予防としてスロージョギングのコースを設けているそうです。また、体重が重い人は『走るのは危険だからまずウオーキングから』と言われることが多かったと思いますが、スロージョギングは、そういうかたでも安心して始められます」
なかには、フルマラソンを完走した強者もいるそうだ。
「68才のときにスロージョギングを始めた女性が、70才の記念にホノルルマラソンに参加し、お孫さんと見事完走したんです。ニコニコペースが身についたら、走ることが『きつい』から『気持ちがいい』に変わり、どこまでも走れるようになります。『自分がこんなに走れるようになるなんて』と、喜ぶかたもいます」
家の中でもできるという点も、この時季、特に取り入れやすい。
「私も、電子レンジの温め待ちやテレビを見ながらこまめにスロージョギングを実践しています」
■運動強度と血中乳酸濃度の関係
スロージョギングなどの強度50%の運動は、乳酸がたまらず安全な上、運動効果もあるという。強度は50%以下では運動効果が減少し、それ以上だと体への負担が大きく、けがのリスクが高まることになる。
“スロージョギング”走り方のコツ
スロージョギングをする上で重要なポイントは3つ。
1.フォアフット着地
「1つ目は、フォアフット着地です。フォアフットとは、足裏の前方、足指のつけ根の部分のこと。つま先ではなく、ここで着地をします。走る前にはだしになり、足踏みか、軽くジャンプをすると、着地位置を体感できます」(佐藤さん・以下同)
2.歩幅を狭くしてリズミカルに走る
「歩幅を狭くしてリズミカルに走ること。歩幅は30cm前後から、時速は3~5kmのスピードを推奨していますが、この速度は、思った以上に遅いと思います。高齢のかたでも、『リズミカルに走る』というと、どうしても速くなってしまうんです。スロージョギングの教室では、『ゆっくり歩いている人の隣で追い越さないように走りましょう』と説明します。そうすると、みなさんだいたい適正な歩幅とスピードになるんです」
走るリズムは、1分間に180歩。1秒に3歩刻む計算だ。教室では、ワルツのリズムに合わせて走ることもあるそうだ。進む距離はゆっくりだが、足を動かすテンポはそれなりに速い。
3.背筋を伸ばし、正しい姿勢であること
外で走るときはもちろん、家の中で行うときも、背筋を伸ばし、正しい姿勢であることが大切だ。
「目線を遠くに置くと、自然と背筋が伸びます。頭から足先までが1本の棒であるような直線的なイメージで、上げた足を体の真下に着地する感覚で走ってみてください。ひざが疲れてくると背中が丸まり、腰が落ちてひざが曲がった状態になってしまいます。そうなるとひざに負担がかかるので、『姿勢が崩れてきたな』と思ったら休みを入れましょう。再度走り出すときは、少しかかとを上げて前に体重をかけると、正しい一歩が踏み出せます」
レジャーや観光にスロージョギングを取り入れる
飽きずに続けるコツの1つは、レジャーや観光にスロージョギングを取り入れることだ。
「秋は紅葉狩り、春はお花見など季節のイベントを取り入れると、無理なく運動量を増やせます。教室で女性に人気があるのは、流行のパン屋さんを巡る『パンラン』です(笑い)。旅先で取り入れれば、交通渋滞にも巻き込まれないし体にもいいし、一石三鳥です」