マスク生活で肺機能低下に…肺の老化チェックリスト&肺年齢テストで危険度を確認
「いま、30~60代の元気な女性に呼吸下手な人が増えている理由は、コロナ禍でのマスク生活が長引き、息苦しさから口呼吸や浅い呼吸が増えたためです。背景にある、家にこもって外出を控え、スマホやパソコンを見ながら前屈みになる姿勢の悪化も非常に大きな影響があります」
と話すのは、山王病院(東京・港区)副院長で呼吸器外科医の奥仲哲弥さん。
なぜ、姿勢が前屈みになると呼吸に悪影響が及ぶのか?
「それは横隔膜を動かせないからです。横隔膜を動かせないと大きなストロークの呼吸ができず、ハッ、ハッ、ハッと浅い口呼吸になってしまいます」(奥仲さん・以下同)
実は哺乳類で、口で息をするのは人間だけ。ほかの哺乳類は鼻呼吸なのだそう。
「口は本来呼吸する器官ではなく、食べることや話すための器官であり、人間も鼻呼吸をしていないといけませんが、慣れてくると口呼吸の方が楽なので、ついつい口呼吸をしがちです。しかし、口呼吸をすると口が乾き、口が乾けば唾液が減少して口が臭くなる。鼻は、空気を温めて加湿を行い、除菌した空気を取り込んで肺に入れる優れた呼吸器官。そんな鼻を通さずに口呼吸をしていれば、外気がダイレクトに喉から肺に入り、喉が痛くなったり、ウイルス感染のリスクも増えます。つまり、口呼吸には何ひとついいことがないのです」
肺年齢を知り肺を強化!
とはいえ、自分の呼吸がしっかりできているかどうかはなかなかわかりづらいもの。
「なぜかといえば、肺は4割が機能不全に陥っても、特段問題なく暮らせるほど、がまん強い臓器だからです。また、心臓などに比べて比較的緊急性の低い呼吸器に関して、開業医の多くが検査機器を持っていないため、正確に自分の呼吸の良し悪しを知る機会は多くないのです」
つまり、正確に知るには、人間ドックや精密検査での呼吸器検査が必要ということだ。とはいえ、いまの肺の状態を知るための目安となる方法が、ないわけではない。
「『肺の老化チェックリスト』では、生活面で感じていることから肺の状態を判断できます。また、『呼吸チェックリスト』や、肺年齢の参考値がわかる『ティッシュ飛ばし』を試すのもおすすめです」
そのほか、パルスオキシメーターを購入し、毎日血中酸素濃度と脈拍を測るのも、肺の状態を知る大きな手がかりになる。
「入浴時に童謡『海』をハミングで歌うのもおすすめです。歌詞の“うみは”から“広いな”までを10秒で、さらに“大きいな~”までを5秒かけて息継ぎなしにゆっくり歌えれば優秀です。日頃から鼻歌を楽しむのも、トレーニングを兼ねて肺の状況を知る手がかりになります」
また、肺機能をチェックする上で重要なのは、肺活量より“吐く力”だ。
「ある調査で、20代のプロ野球選手の肺活量を測ったところ約5000mlあり、某有名落語家さんがお亡くなりになる前の肺活量は約4000mlだったのですが、1秒量(※)でその選手が5000mlのほとんどを一気に吐き出したのに対して、落語家さんは1800mlしか吐き出せなかったという例があります。このことからわかるのは、この落語家さんの肺は、空気を含んだまま伸び切っており、約4000mlの肺活量のうちの、ほんの上澄みしか息を出し入れできない、非常に効率の悪い呼吸になっていたということです」
肺の機能が衰える前に、いまから肺機能を鍛えることが重要ということだ。
「肺自体は動きませんが、呼吸法や呼吸筋トレで肺機能はアップします。コロナに感染したときに重症化させないためにも、いまのうちに酸素摂取能力を1~2割アップさせておくのが得策です」
「基本の深呼吸」と「呼吸筋トレーニング」でコツコツ肺を鍛えよう。
(※)呼吸機能検査の項目の1つで、息を努力して吐き出した空気量のうち最初の1秒間に吐き出された量。
呼吸チェックリスト
1日1回、呼吸をチェックしよう!
□ 首の筋肉が硬くなっている
□ 呼吸をするときに肩が上下する
□ 息を吸うときに胸が大きく広がらない
□ お腹があまり動かない
□ 背中や腰に違和感がある
□ 息を長く吐けない
□ 小刻みで短い呼吸になっている
ふだん私たちは呼吸に無頓着なだけに、起床時・就寝時・通勤時のいずれかで1日1回、左の7項目をチェックしよう。1つでも当てはまる場合は、ストレッチやトレーニングなどの肺活を積極的に行おう。
パルスオキシメーターで息切れ度をチェック
パルスオキシメーターを購入しておくと、自宅で動脈血酸素飽和度と脈拍が測れて便利。
「通常、血中酸素濃度97~98%、脈拍数は60~70程度ですが、血中酸素濃度は変わらないのに脈拍数が100を超える場合は、脈拍数を上げることで酸素濃度をキープしており、心臓に負担がかかっているので要注意です」(奥仲さん)。