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“介護中にもメイクは欠かせない”母親の介護を10年続ける女性が気づいた「人生は私が主役」、その後、母親に訪れた変化

 “骨格補正メイク”で、3000名を超える女性を好印象な美人へと変身させてきた骨格補正メイク専門家の池田曜央子さんと、池田さんの生徒で10年介護生活をしている大塚政美さんにインタビュー。池田さんが考える、介護者がメイクをすることのメンタル効果や、大塚さんが経験したエピソードを教えてもらった。

教えてくれた人

池田曜央子さん/骨格補正メイク専門家

青山学院大学経済学部卒業。建築士として活動後、美容・ファッションを学び、メイク講師の道へ。好印象な美人に近づける“骨格補正メイク”を考案し、3000を超える女性を劇的に変身させる。一般社団法人日本骨格バランス協会代表理事を務めるほか、池田曜央子メイクアップアカデミーを主宰。著書に『骨格補正メイク「顔の比率」を描き変えて、一生美人!』(主婦の友社)。

「絶望感しかない」介護中でも、メイクで人生が豊かに

池田曜央子さん(以下、池田さん):生徒さんの中には、レッスン申込時の備考欄に深刻な思いを記入してくださる人がいます。介護疲れの生徒さんもまさにそうで、大塚さんもそのひとりでした。「鏡を見たときの自分に絶望感しかない」と書かれていたんですよね。

大塚さん:私は10年前に、母が入退院後、「家事も何もやりたくない」と母が言ったことで、仕事をやめて介護を始めました。5年前に母が車椅子になり、さらに介護の負担が増えたんです。介護は子育てと違って、残酷だけど期限がないし、希望が見えないなと当時は感じていました。

池田:大塚さんのようにやさしくて真面目な人ほど、思い詰めてしまうように感じます。

大塚さん:介護中は本当に疲れ切ってしまうんです。介護を頑張る自分はえらいと美談にされることもあるけど、美談では人生は潤わない。親が亡くなっても私の人生は終わらないと思ったときに、私の人生は私が主役なんだと気づいたんです。

そのタイミングで、たまたま講師業のお話をいただいて。でも、介護中の疲れた姿で講師として人前に立つのは生徒さんに申し訳ないと思ったんですよね。そこで池田先生のメイク講座に申し込んだんです。

あくまでも自分の人生は自分のものなので、介護に懸命に取り組む自分は一部であり、もっとメイクをしたり、外に出たりと、人生をやり直したい気持ちになったんですよ。そこでメイクやおしゃれを始めて、介護をしながらでも人生が豊かになりました。

おしゃれをして「何やってるの」と言われたら、一緒に楽しむ

池田さん:メイクを学んだことが、お母様と仲が良くなるきっかけになったとお話されてましたよね。

大塚さん:最初は「何やってるの」なんて言われました。でも、母にも明るい服を着せてみたり、白いパンツを履かせてみたりと、おしゃれをさせてみたんです。そうしたら共感してくれたのか、だんだん私のメイクや髪のことも「かわいいじゃない」と褒めてくれるようになって。

白いパンツを履かせるのって、介護をしているとちょっと勇気がいることなんです。汚れが目立つからと避けていたけれど、実際に母に履かせてみたら、たいして汚れないし、汚れたら洗えばいいと思い始めました。ヘルパーさんに「白いパンツ、かわいいですね」と言われることで、母も明るい気持ちに変わっていったんです。

池田さん:一緒に買い物に行くと、お母様も明るい服装を選ぶようになっていったとか。

大塚さん:「どれがいい?」と聞くと、結構派手でかわいいものを選ぶんです。母が選んだ服に合わせて靴やシャツを買ったりすると、母娘で楽しめる。自分だけおしゃれをして気後れするのではなく、一緒に楽しめばいいと母が気づかせてくれましたね。

そもそも母娘だから、私が楽しむ姿を観て、母も楽しいと思ってくれるんですよ。最初からうまくいったわけではないですけど、ちょっとずつ手探りで互いに楽しめるようになりました。おしゃれだけではなく、運動やお稽古ごとから入るのもいいと思います。ただ、視覚への影響は大きいと思うので、うちは視覚から入ったのが正解だったなと感じていますね。

メイクやおしゃれは、自分も周りも明るくする

池田さん:大塚さんは、もともとおしゃれに興味のある人でしたよね。

大塚さん:以前から髪を染めるのが好きでした。でも、介護中は小綺麗にしてちゃいけない、それらしい苦労をしているような見た目にしなきゃと思い込んでいたんです。でも、友人の美容師に明るいピンク色の髪にしてもらったら、ヘルパーさんたちに「すごくかわいい、似合ってる」と言ってもらえたんです。それから、メイクにももっと取り組んでみたいと思うようになりました。

池田さん:髪もメイクも変えたら、パートナーにも褒められるようになったとか。

大塚さん:私がキレイにすればするほど喜んでくれる人もいるんですよね。パートナーはもともとは褒めないタイプの人だったけれど、促すようにしたらだんだん褒めてくれるようになって(笑い)。

介護中にフルメイクなんて難しいですから、リップやチーク、ベースメイクをしてみるなど、ほんのちょっとしたことでいいんです。自分の気持ちも上向きになりますし、周りから「今日かわいいね」と褒められたりするんですよ。自分だけでなく、介護をする相手や、周りの人にもいい影響を与えて、コミュニケーションの機会も増えるので、ちょっとした時間でできることを試してみることをおすすめします。

撮影/黒石あみ、取材・文/イワイユウ

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