88才の現役料理家・小林まさるさんの脳トレ「買い物中の暗算と回想法」でボケ知らず
いつも元気でパワフルな料理家、小林まさるさんに、健康の秘訣とお手軽レシピを教えてもらうシリーズ。88才にして現役を走り続けるまさるさんのボケない秘密は、独自の脳トレにありました。いったいどういうこと?
買い物や犬の散歩中は「脳トレ」で頭を鍛える!
まさるさんは、食材の買い出しや犬の散歩で毎日1万歩を目標にしていると前回の記事で伝えたが、実はその最中に密かに行っていることがある。
「スーパーに行くときや犬の散歩をしている間、ただボーッと歩いているのはもったいないから、俺はその一瞬だって無駄にしないんだ。
車のナンバー、電信柱の住所、看板に書いてある電話番号など、パッと目に入った数字を頭の中で計算しているんだよ」
取材スタッフはこれを聞いて驚き! 1日に1万歩を歩くだけでもすごいのに、なんとその間に暗算までしているとは! しかも10年以上も続けているという。
まさるさん流脳トレ1.「車のナンバーで暗算」
「例えば、778っていう車のナンバーを見たら、合計していくつになるかをできるだけ早く計算するんだ。数字を1つずつ足していくんじゃなくて、7が3つで7×3=21、そこに1つ8があるから1を足して22。
こうやって掛け算や足し算、引き算を混ぜながら、できるだけ早く暗算で合計を出すんだよ。特に動いている車のナンバーはビュンってすぐに通りすぎちゃうから、早く計算できないとダメなんだ」
まさるさん流脳トレ2.「回想法で記憶をたどる」
「例えば、歩いているときに“佐藤”という表札を見たとしよう。そうしたら、自分が今まで出会った佐藤さんを思い出してみるんだ。学生時代の佐藤、あいつどうしてるかなぁ〜、同僚の佐藤さんは一緒によく飲みに行ったなぁ〜といった具合にね。
時々、散歩コースを変えて知らない道をあえて通ってみる。そうするとまた新しい表札を見つけて、いい脳トレになるんだよ」
実際、昔の記憶をたどることは「回想法」とも呼ばれ、認知症の予防や脳の刺激にもいいとされている。まさるさんは、散歩や買い物など日常の時間に自然と「脳トレ」を取り入れていた。
「お金もかからないし、頭の体操になっていいこと尽くしだよ。
料理だって、実は頭のトレーニングだよ。冷蔵庫を開けて、今日は何を作ろうかなって考える。この野菜と肉を使えば、あれができるなって、目の前にある食材を組み合わせてメニューを考えるのもいい脳トレだよね。年寄りこそ、ボケ防止のためにも料理をした方がいいんだよ!」
早速、まさるさんにシニアにおすすめの簡単レシピを教えてもらった。
包丁いらずで完成! きのこと豚肉のピリ辛炒め
包丁いらずでパパっと仕上がる、まさるさん流・時短料理。料理がおっくうになった日のおかずに!
【材料】(2〜3人分)
エリンギ…1パック(100g)
舞茸…1パック(100g)
ピーマン…2個(50g)
豚こま切れ肉…100g
サラダ油…大さじ1
にんにく…1片
もやし…1/2袋(100g)
A
豆板醤…小さじ1
塩…小さじ1/2
酒…大さじ1
【作り方】
【1】エリンギと舞茸は食べやすい大きさに手で裂く。ピーマンは手でちぎり、種とヘタを取り除く。
【2】フライパンにサラダ油、つぶしたにんにくを入れ、強めの中火で香りが立つまで炒める。豚肉とピーマンを加え、肉の色が変わるまで炒める。
【3】エリンギと舞茸を加え、1分ほどしんなりするまで炒め、もやしを加え30秒ほど炒める。
【4】Aを加えて炒め合わせる。もやしのシャキッとした食感が残るよう、炒めすぎないよう注意して。
ポイント1「包丁いらずで超簡単! 味も染みやすい」
「今回は包丁を使わず、野菜は全部手でちぎるよ! きのこの中でもエリンギと舞茸は手で裂けるからラクチン。実はピーマンも簡単に手で裂けるよ。手で裂いた方が断面に味も染みやすくて一石二鳥だね」
ポイント2「もやしは食感が命! 強火でサッと炒めるべし」
「やっぱりもやしはシャキッとした食感がウマイ。グシャッと水っぽくならないように、強火でパリッと手早く炒めるのがポイントだよ」
ひと口食べると、もやしのシャキシャキ食感がGood! 味付けは塩と豆板醤だけとシンプルながら、豚肉ときのこの相乗効果でいいだしが出て、旨みもたっぷり。ピリッと効いた豆板醤もいいアクセントになっている。
「包丁を使わない男の料理だね。これならすぐにできるだろ? ピリ辛味だからご飯にも、酒のつまみにもぴったりだよ!」
まさるさんは、日々の暮らしにも、料理にも、独自のアイディアを上手に取り入れていた。健康の秘訣はライフスタイルに自然と盛り込まれているのだ。
プロフィール
小林まさるさん
1933年生まれ。料理研究家・小林まさみの義父。定年後70才から小林まさみの調理アシスタントを務め、78才でシニア料理研究家としてデビュー。長年料理をしてきた経験から、冷蔵庫の中にある食材でパパッと作るアイディア満載の家庭料理やおつまみが得意。著書に『人生は棚からぼたもち!』(東洋経済新報社)、『小林まさみとまさるのさわやかシニアごはん』など。2021年に公式YouTubeチャンネル『小林まさる88チャンネル』を開設。
撮影/菅井淳子 取材・文/岸綾香
●88才現役料理家・小林まさるさんの生き方哲学「年寄りだからこそ、前へ前へ!」