人気インスタグラマー森桂子さん、80代で発覚した乳がん「明日が来るのは当たり前ではない」
森ママと慕われ、シニア世代のご意見番的存在としても支持を得ている森桂子さん(80才)。現在はセレクトショップのオーナーであり、インフルエンサーとしても人気の森さんだが、その人生は思いも寄らない出来事の連続だった【Vol.3/全3回】。
森桂子さん/プロフィール
森桂子さん/1945年横浜生まれ、80才。2人の子供を育てながらバー経営、ペットのトリミングサロン、リサイクルショップを開業・運営するなど事業家として活躍。化粧品や健康食品の販売営業にも携わり、現在は横浜・本牧でセレクトショップ「ケセランパサラン」オーナー。76才でインスタグラムを始め“森ママ”の愛称で人気に。愛犬・トイプードルの美空ちゃん(16才)と暮らす。m.misora5
幸せな高齢者になるために必要なこと
――年を重ねていく上で大事にしていることはありますか。
年を取ると行くところがなくなっていくというじゃないですか。仕事を辞めて友達づきあいが減ってしまうと出かけなくなる。若い頃は仕事をしていれば自然と仲間や友達ができるけど、高齢者になると仲間をつくる場所が減っていきますよね。
だからこそシニア世代にとって人と繋がれるSNSはとてもいいツールだと思います。
私のセレクトショップは誰でも気軽に来られるサロン。SNSを見ていらっしゃるかたや地元の仲間もふらっと訪れてくれます。
先日は大学生のお嬢さんがやってきて、「高齢者の幸せな生き方」を卒論にしたいから話を聞かせて欲しいというんですね。完成した卒論を見せていただいたら、私の事例は幸福度が10点中満点でした(笑い)。
――幸せな老後に必要なものは何だと思いますか。
そうね、仲間や家族といいたいところですけど、お金は大事かもしれませんね。介護サービスを受けるのも、施設に入るのもやっぱりお金が必要ですからね。
時々娘や息子と話すんですが、家の裏には高級老人ホームがあるけれど、あそこは高いわよね、なんて。何があるかわからないから、どこで暮らすかは考えておかないとね。
やっぱり大切なのは健康。実はね、最近乳がんの手術をしたんです。80才にもなって、まさか自分が乳がんだなんてね…。
私はいつもストレッチをして姿勢を良くすることを心がけているんですけど、ある時脇のあたりに違和感があって、病院で検査をしたたら乳がんのステージ2のB。進行が遅いタイプだったことは幸いでしたね。
手術日もだいぶ先だったんですが、病院から連絡がきて空きが出たっていうので手術日が前倒しになって、見つかってからわりと時間を置かずに手術を受けられたのはまあラッキーだったわよね。執刀医も腕が良かったのだと思います。術後の痛みもあまりなくて、3月に手術を受けて12日後には仕事復帰できました。
100才までどのように生きるべきか
――これからどんな風に生きていきたいか目標はありますか。
「これまで大きな病気もしたことがなかったですから、当たり前のように明日が来て毎日生きていくと思っていましたけどね、乳がんになってみて、それは当たり前ではないことに改めて気がつきました。
50代の頃、テレビできんさん、ぎんさんを見て『世の中にはこんな元気な100才がいるのか』と衝撃を受けたのを覚えています。80代で病を得て、そして100才という年齢がそう遠くはない未来にやってくる。100才まで生きたらどうなりたいか、どうしていたいのかを考えるようになりました。
晩年、介護が必要になっていった母が自分の健康管理ができないことに腹が立っていたことを思うと、自分はそんな風にはなりたくない。最期まで人の手を借りずに、自立して生きていたいですよね。この子(愛犬、トイプードルの美空ちゃん)より先には死ねませんからね。
美と健康に欠かせない大切なもの
――健康のために何か心がけていることはありますか?
なるべく人と交流して、いつまでも自分の脚で歩いていたい。できれば背筋をピンと伸ばしてね。普段はなるべく階段を使うようにしています。脳にいいというサプリメントも摂っていますよ(笑い)。
普段はあんまりお化粧はしないんだけど、インスタの写真は美人フィルターを。この店の奥のライトの下で撮ると肌がキレイに見えるスポットがあるのよ。記者さん、そこに立ってみて、撮ってあげるから(サングラスもおすすめしてくれる)。
こうして好きなものに囲まれて、楽しい仲間とおしゃべりをして。子どもたちにはなるべく迷惑をかけずに逝きたいわよ。『お母さん毎日バタバタと色々やっていたけど、なんだか楽しそうだったよね』なんて思ってもらえたらいい。
人生に迷いが生じたとき、いつも私の力になってくれた愛読書があるんです。北方謙三さんの『水滸伝』。
中国の歴史小説で108人の武将が登場するのですが、ひとりひとり顔が浮かぶほど個性が際立っている。どんな人にもその人なりの大義があって、人生を生きている。私はこの本から生き方のヒントをもらっているんです。
今年80才になりましたけど、明日どうなるかわからないから、悔いなく生きないと。1日1日を大切に過ごしていきたいですよね。
取材・文/廉屋友美乃