60才から「女性のおひとりさま暮らし」を楽しむための7つのルール
令和の時代は「女のおひとりさま」が増えていく。2040年には65才以上の女性の4人に1人がひとり暮らしになるという推計も。そこで暮らしや医療、マネーの達人たちに、60才からのひとり暮らしを成功させるためのルールを聞いた。夫や子供がいても「ひとり暮らしだと思い込む」ことで暮らしやすくなるという。
60才からは「女のおひとりさま」暮らしを謳歌しよう
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2015年に全国で625万世帯だった65才以上の高齢者のひとり暮らしは、2040年に896万世帯まで増える。
つまり、65才以上の女性の4人に1人がひとり暮らしになるのだ。2025年には5人に1人が認知症になる時代、誰かの世話を続けた先の寝たきりより、自分のためだけの生活を送る方が笑って死ねる──。
「ひとり暮らしは、若いときに経験した」という人も、もう一度、あの解放感を試してほしい。人生経験を重ねてきたからこそ、別世界のように毎日が楽しくなるはずだ。
1.規則正しい生活を維持する
60才からのひとり暮らしを成功させるには何が必要か。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは、
「趣味があって規則正しい生活ができること」と指摘する。
「高齢者は暮らしが不規則な人ほど体調を崩しやすいのに、ひとり暮らしになると誰かと生活リズムを合わせる必要がないため、生活が乱れがちです。
規則正しい生活を維持するように、毎日行う趣味や習慣を持つことはとても大切。やることがない高齢者ほど毎日が充実せず、子供に電話しては『ひざが痛い』『私は寂しい』とネガティブな話ばかりして、結果的に疎まれる傾向があります」
2.ルーティンを達成して充実感を
以前、女性セブン本誌でひとり暮らしについて語った歌手の加藤登紀子(77才)は、ライフスタイルを維持するため、「朝ドラを毎朝見る」「夕方のチャイムが鳴ったら夕食を作る」「家庭用サウナで読書してから入浴する」などの「ルーティン」を大事にしていると語った。
ルーティンを達成することは、深い充実感をもたらしてくれる。
「やることがなくて困ったら、地域のコミュニティーセンターや公民館に行くといいでしょう。趣味を探すときは、若い頃にやっていたことに再挑戦した方がなじみやすくてハードルが低い」(太田さん)
3.知性の貯金をして脳を錆びにくく
ひとり暮らしの最大の敵である認知症の予防として、頭もしっかり使いたい。
名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長で老年医学が専門の下方浩史さんは、認知症予防策として、「知性の貯金」をしておくことをすすめる。
「認知症を防ぐには、若い頃から知的な生活を送ることが大切です。本を読んだり、関心のあることを調べて自分の頭で考える習慣をつけるなど、できるだけ『知性を貯金する』ことを心がければ、脳が錆びにくく、認知症を防ぐ効果が期待できます」(下方さん)
4.スマホなど最新機器にチャレンジを
「スマホや電子決済、ウエアラブルの健康機器といった最新のIT機器を高齢者は避けがちですが、新しいチャレンジは認知症を予防してくれるだけでなく、社会に取り残されず、孤独にならなくて済みます」(下方さん)
5.月いくら使えるか知っておく
そして、やはり気がかりなのは金銭面だろう。いくらひとり暮らしをやりたくても、貯蓄がなければ実現は容易ではない。体に無理がなければ、働くことも検討したい。
「基礎年金だけだと月6万5000円。厚生年金などであれば月10万円くらい。遺族年金などが充実している人であれば月20万円もらえる人もいるので、年金事務所に行って金額を確認し、自分が100才まで生きるとして、月にいくらまで貯金を使っても大丈夫か知っておくことは大切です。
6.アルバイトや有償ボランティアをする
いまの時代、60代前半ならアルバイトも比較的見つけやすく、社会福祉協議会やシルバーセンターなどの有償ボランティアもある。金銭を得ながら社会の役に立つ充実感を得られます」(太田さん)
7.ひとり暮らしだと思い込む訓練をする
「夫や子供がいるから家を出られない」という人は、“ひとり暮らしだと思い込む”訓練をするだけでもいい。妻や母としての責任から解放されることは大きな意味を持つ。
つじかわ耳鼻咽喉科院長の辻川覚志さんは、以下のように語る。
「多くの日本の女性はいつまでも現役を続け、妻や母としての責任を果たそうとします。
しかし、60才を超えたら、“もうやるだけのことはやった”と思って夫や子供の世話はやめる。自分はひとり暮らしだと暗示をかけて、お母さん役、おばあさん役など損な役回りは返上したらいいんです。
自分の好きなように生きて、“あとはおまけでやってあげている”と思えば、残りの人生がすごく楽になります」(辻川さん)
「私には無理」とあきらめるのはもったいない。60才からのひとり暮らしは、人生で最も自分らしく、毎日を自由に楽しむチャンスなのだ。
教えてくれた人
介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子さん、名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長・下方浩史さん、つじかわ耳鼻咽喉科院長の辻川覚志さん
文/池田道大 取材/小山内麗香、加藤みのり、桜田容子、伏見友里、三好洋輝
※女性セブン2021年3月4日号
https://josei7.com/