おひとりさま暮らしを快適にする心のケア法|肉を食べる、朝夜着替える…気楽に生きる術
「人生100年時代」といわれる中、延びつつある私たち日本人の平均寿命。7月31日に厚生労働省が公表したデータでは、女性は87.45才で7年連続、男性は81.41才で8年連続の過去最高記録を更新した。
日本人全体の寿命は延びたが、“寿命の男女格差”が開いてきているのも事実。平均寿命が50才前後だった昭和20年代は、男女の寿命の差は3才ほどだったが、現在は女性が男性より6年も長く生きることになる。つまり、女性の方が“おひとりさま”の時間を過ごす可能性が高いということだ。
「ひとり時間」を“寂しい”ではなく、“心地よい”に変えるには、心のもちよう次第。
誰とも話せないストレスに対処する方法とは
いまは新型コロナの影響でおこもり生活が当たり前になり、すでに一日中誰とも話さない日々を送っている人も多い。誰とも会えず、話せないストレスには、どう対処したらいいのか。『1日誰とも話さなくても大丈夫』(双葉社)の著者で精神科医の鹿目将至さんが語る。
●肉を食べる
「落ち込んだときにおすすめなのは、肉を食べること。肉を食べると、脳内で『アナンダマイド』という至福物質が分泌されます。また、オキシトシンと同じく幸せホルモンのセロトニンは、肉に豊富に含まれるトリプトファンからつくられます」
●気持ちを切り替えるスイッチを持つ
沈んだ気持ちを上手に切り替えることができる人も、ストレスに強いという。重要なのは、切り替えるための“スイッチ”を持っておくこと。
「“モヤモヤを感じたら散歩に行く” “とりあえず運動する”など、気持ちを切り替えるための習慣を持っておくといいでしょう。コンビニやカフェなど、人の気配が感じられる場所に行くのもおすすめです。たとえ人と話さなくても、人の存在が感じられる場所に行けば寂しさが和らぎます」
●無理に昔の友達に連絡しない
話し相手が欲しいからといって、昔からの友達に連絡をするのは、逆にストレスになる恐れもある。「おひとりさま向上委員会」元代表の葉石かおりさんは、こう話す。
「女性は結婚や出産を経てライフスタイルが変わりやすい。学生時代は仲がよかった友達でも、いつの間にか価値観が合わなくなっていて、一緒にいることがストレスになることも少なくありません。そんなとき、無理に連絡を取り続ける必要はありません。人間関係を切るのではなく、一時的に距離を置くだけ。ひとりになることを恐れないでほしい」
縁があれば、おのずとまたつながるもの。新たなストレスを抱えるくらいなら、“ゆるいつながり”だけキープして、自分の心を乱さないようにしたい。生活リズムも乱してはいけない。
●朝起きたとき、寝る前に着替える習慣をつける
「寝る時間も食事の時間も自由だと、自律神経のバランスが崩れやすくなる。すると、免疫力の低下やイライラなどにつながります。生活リズムを整えるには、外出する予定がなくても、朝起きたときと寝る前に着替える習慣をつけること。ただ着替えるだけでも立派な“活動”です。着替えることで交感神経が活発に働くようになり、脳と体が“活動モード”に切り替わります。反対に、夜にパジャマに着替えてゆったりすると、今度は副交感神経が優位になって“リラックスモード”に切り替わり、眠りにつきやすくなります」(鹿目さん・以下同)
●目覚めに太陽光を浴びる
朝起きたときは、カーテンを開けて、部屋に光を取り込むのも効果的だ。太陽光を浴びることで体内時計がリセットされるため、生活リズムを整えやすくなる。
「太陽の光を浴びると、体の中でセロトニンとビタミンDがつくられます。ビタミンDはカルシウムの吸収を助けて骨粗しょう症予防に役立つほか、免疫力を高める効果があることもわかっています」
窓を開ける元気もないときや、天気の悪い日は、ブルーライトを逆手に取ればいい。スマホやパソコンの画面が発するブルーライトの光は、脳を覚醒させる作用があるといわれている。そのため、起き抜けにスマホでニュースやSNSをチェックすることで目覚めやすくなる。
よく眠るにはどうすればいいか
年を取ると若い頃のように眠れなくなるのは「しょうがないこと」だと、鹿目さんは言う。「眠らないといけない」というプレッシャーが、かえって睡眠の妨げになっていることもある。どうしても寝つけない夜は、思いきって布団から出て、落ち着いて過ごすのがいい。
●眠れないのはしょうがないと諦めてみる
「40代を過ぎたあたりからセロトニンの分泌量が減ることで、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなります。日中の活動量が低下するのも原因の1つです。つまり、加齢とともに眠れなくなるのは自然の摂理。眠れないからといって睡眠薬や抗不安薬をのみ始めると、薬に依存してしまうことも多い。 “眠れないのはしょうがない。なんとか休めている”くらいで充分です。よい意味での“諦め”を持つことが大切です」
●誰かに「ありがとう」と言ってみる
鹿目さんいわく、「しょうがない」だけでなく、「ありがとう」も、心をラクにする“魔法の言葉”。これをよく口にする患者は、病気の回復が早いと話す。
「脳は、自分の言ったことの主語を判断できないといわれています。誰かに“ありがとう”と言うことで、“自分自身が感謝されている”と錯覚し、前向きになれるのかもしれません」
葉石さんは「“ひとりが寂しい”と言う人は、人に楽しさを求めている」と指摘する。
「人に楽しさややすらぎを求めると、依存して、束縛したり支配したりしてしまう。すると相手が嫌がって離れていって、本当に孤独になってしまいます。家族も友人も、距離が近すぎるとゆがんだ見方をしてしまうけれど、適度に離れればいいところがはっきり見えてくる。人とのつながりは“老眼”と同じです」(葉石さん)
ひとりで暮らせば、誰だって寂しさを感じることはある。しかし、だからといって、ひとりで生きている人が孤独なわけではない。ひとりだからこそ、何にも縛られずに気楽に生きよう。
【まとめ】精神科医が教える“ひとりぼっちの心に効くワザ”
●気持ちが落ち込む
→肉を食べる。
●生活リズムが乱れる
→朝起きたときと、夜眠る前に着替える。
●朝起きられない
→起きたらスマホを操作してブルーライトを浴びる。
●夜眠れない
→起きていていい!
●誰かに会いたい
→外に出て、コンビニやカフェなど人のいる場所へ行く。
※女性セブン2020年9月10日号
https://josei7.com/
●浅田美代子流「孤独の生き様」|樹木希林さんに従ったことと背いたこと