70才からが楽しい!老いる極意「ひとり旅、趣味は20個」
日本人の平均寿命は、女性87.14才、男性80.98才で、いずれも過去最高を更新している(2016年 厚生労働省)。リタイア後の10年、20年をどう生きるか…この“下り坂”がつまらなければ、せっかく生きているのに楽しくない。自身の老いを観察し、「人生の楽しみは70才から」という、ドイツ文学者・池内紀さんに、楽しく老いる極意を聞きました。
年寄りは自立してひとり旅に出よう
年寄りに大切なのは、“自立する”こと。人間は基本的にひとりですよ。ご夫婦でどんなに仲がよくても、最後はひとりになりますからね。よく何人か連れ立って旅行している女性を見かけますが、年を取ったら“ひとり旅”がおすすめです。
今のホテルは清潔で、ひとりで泊まっても安心です。その場合、できるだけ新しいホテルを選ぶこと。新しいホテルは空調もよく効きますし、バリアフリーがしっかりしていて、お風呂に入る時の敷居も非常にラクです。その日にキャンセルが出たりするので、予約をする時は、当日の朝か前日の夜が狙い目です。
女性はひとりで食事はできないという人がいますけど、外に出るのが嫌なら駅弁とデザートとコーヒーを買ってきて部屋で自分のレストランを作ればいい。外で食べたければ、フロントの人に「ひとりで行って気楽なお店はありますか?」と聞けばいいんです。
うちは夫婦で旅する場合、「夕方何時までに着く」と約束をして別々に出発します。そうすれば1回で、ひとり旅とふたり旅の両方を楽しめます。長年連れ添った夫婦は、もうあまり話題がないんです。だから黙々と食事をしていたりする。ホテルのレストランで楽しそうなのは、ワケありカップルくらいですよ(笑い)。
でも別々に行けば、それぞれの道中の話題ができます。そんなふうに、話題を提供できる仕掛けをたくさん作ればいいんじゃないかな。
趣味は20個くらいないとダメ
昔好きだったことをもう一回やってみるのもいいものですね。人間の体は4年くらいで新しい細胞に変わると医者が言っているのを聞いて、ぼくは4年に1度、新しいことを始めるようにしています。
絵を描いたり、ギターを弾いたり、将棋を指したり。昔やって体が覚えていることは割と飽きないから不思議です。銀行マンで出世した友人に、「定年して何をやっていいかわからない。趣味を持ちたいけど何かないかな」と言われたので、「趣味を1つ持とうなんていうのはでたらめで、20個くらい持たないとダメだよ」と、脅してやりました。
それも、若い頃に映画ばかり見ていたとか、山登りしていたとか、遊んでいた人の方が年を取ってから強いですね。神様がうまい具合に計はからっているようで、若い時に無駄をしたと思うことが、年を取ると生きてくる。無駄をしてないと年を取ってすがるものがないんです。
自分の終い方を決めておく
年を取れば当然よろけます。歩くのが遅くなるし、へまもするし、忘れっぽくなるし、みっともなくもなる。でも、それが年を取るということ。それを認めることから始まるわけです。
「死」についても、最近は自分で選べる時代になりました。今は延命装置が発達しています。もし、それを望まないなら、生きているうちに意思表示をしなければいけない。
ぼくは夫婦で『日本尊厳死協会』というところの会員になっていて、「延命治療は望みません。痛み止めだけは処置をお願いします」という意思を伝える証明カードを持っています。人生の役割はもう終わったのだから、安らかに“おさらば”するのが自分も家族もいちばんいいと思います。
これまでずっと、どんなふうに生きるかという選択をしてきた。最後はどんな死に方をするのか、決めておくのがいいと思います。とても安心できますよ。
撮影/豊田和志
※女性セブン2018年2月1日号
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