いかりや長介さんに「ブーたん、最高」と褒められた姿とは?|高木ブーインタビュー【連載 第35回】
「ドリフで最初に女装したのは僕だと思うよ」と高木さん。ザ・ドリフターズのメンバーは、コントなどで多種多様なコスチュームに身を包んできた。今では「高木ブーといえば雷様」だが、以前は「セーラー服」のイメージだった時期もある。いろんな姿で私たちを楽しませてくれた高木さんに、コスチュームにまつわる思い出を聞いた。(聞き手・石原壮一郎)
我ながらセーラー服と三つ編みは似合ってた
僕のセーラー服姿、覚えてくれている人もいるかな。三つ編みのおさげ髪で、自分で言うのもヘンだけど、けっこう似合っててかわいかったんだよ。『8時だョ!全員集合』の初期の頃には、何度か女学生になった覚えがある。
最初にセーラー服を着たのは、ドリフの2枚目のレコード『ミヨちゃん』のジャケットを撮影した時だった。「これを着ろ」って言われて、最初は戸惑ったけど、実際に着てみたら楽しかったな。ほかの4人は学生服。みんなだってかなり不自然なのに、4人が僕を指さして大笑いするんだよね。長さんも「ブーたん、最高だよ」なんて言って。
その時が、記念すべき……かどうかはわからないけど、ドリフのメンバーで初の女装だったんじゃないかな。「全員集合」では、コントの中でみんなが女装するシーンがたくさんあったし、おなじみの「母ちゃんコント」でも、長さんは割烹着を着てカツラかぶって女装してるもんね。あれを女装と言うのかな。まあ、父ちゃんじゃないから女装かな。
調べてみると、レコードの発売が1969(昭和44)年5月で、「全員集合」はその年の秋から始まってる。その2、3年前から『ドリフターズドン!』とか『突撃!ドリフターズ』とか冠番組もいくつかあって、ドリフの名前はぼちぼち知られるようになってきてた。お盆やお正月になると松竹で、ドリフが主演の『なにはなくとも全員集合!!』とか『やればやれるぜ全員集合!!』なんて映画も公開されてたし。
「全員集合」がものすごいオバケ番組だったから、それ以前のドリフは無名のグループだったって勘違いしてる人もいるけど、じつはそういうわけでもなかったんだよね。もちろん「全員集合」があったおかげで、日本のどこに行っても誰もが知ってるグループになれたし、50年以上たった今でも「ザ・ドリフターズ」の名前が残ってるんだけど。
ドリフのデビューシングルは『ズッコケちゃん』
レコードの話が出たついでに、ドリフが出したレコードを振り返ってみようか。デビューシングルは1967年6月に出た『ズッコケちゃん』。誰も知らないよね。このB面が『いい湯だな』で、こっちが「全員集合」のエンディング曲になって人気が出たから、あとからA面とB面をひっくり返して違うジャケットで出し直したかな。
2枚目が『ミヨちゃん』で、B面が秋田音頭を原曲にした『のってる音頭』っていう歌。『ミヨちゃん』は、今聞いてもメインボーカルの加藤(茶)の声がいいんだよね。歌にもセリフにも、ちょっと福島なまりが入っててね。長さんの「どんな子よ、どんな子よ」「それが若さだよ、キミー」なんて言ってる合いの手も、ピッタリはまってる。僕の声は……あれ、出てたかな? たぶんネットで聞けるから、たしかめてみてください。
3枚目が『ドリフのズンドコ節』で、4枚目が『ドリフのほんとにほんとにご苦労さん』で、その次が『誰かさんと誰かさん』。あといろいろあって、志村(けん)が入ってからも、『志村ケンの全員集合 東村山音頭』とか『「ヒゲ」のテーマ』とか、おかげさまでたくさんのヒット曲がある。そう考えると、ドリフは音楽活動も盛んだったって言っていいよね。
「全員集合」では、長さんはコントの内容には細かく口を出したけど、コスチュームについて「セーラー服のスカートはこの色で」とか、そういう注文を出したことはなかった。プロに任せてたんだろうね。ずいぶんいろんな格好をしたけど、雷様は別格として、好きだったのは制服系かな。いや、セーラー服が好きだったわけじゃなくて、探検隊とか軍隊とか。現実では絶対にありえなくても、どんな人にだってなれるのが楽しいよね。
そうそう、なんかの時に「子どもの頃の夢はパイロットだった」って言ったら、あるテレビ番組で機長のコスチュームを着せてくれたことがあった。スタジオに飛行機のセットみたいなのを組んでね。長年の夢がかなったような気がして、あれは嬉しかった。でも、太ってる機長さんってあんまり見ないけど、あの時の服は特注だったのかな。
1月17日に予定していた僕の初めての有料生配信ライブは、万全の安全対策を取るために延期を決断して、3月6日(土)にやることになりました。翌々日の8日が僕の88歳の誕生日だから「【ドリフ&ももクロ生出演】高木ブー88歳だョ!全員集合」というタイトルでね。加藤や仲本や、ももいろクローバーZのメンバーや大槻ケンヂ君などなど、ゲストも超豪華です。よかったら見にきてください!詳しい情報は⇒こちら
「コントでは、雷様以外にもいろんな格好したな。どんな人にもなれるのが楽しかったよ」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」( イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評! 初めての生配信ライブ「【ドリフ&ももクロ生出演】高木ブー88歳だョ!全員集合」(視聴チケット3,000円)は3月6日(土)18時スタート。詳しい情報は⇒こちら
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「恥をかかない コミュマスター養成ドリル」。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。