高木ブー意欲満々で迎えた新年「いろいろあるけど前に進んでいきます」【連載 第34回】
今年3月、高木ブーさんは88歳の「米寿」を迎える。年末年始は多くの番組やイベントに出演。華麗な演奏と心に響く歌声を披露し、ますます元気な姿を見せてくれた。波乱の年明けだが、「今できることをやるしかないよね」をモットーに、2021年も新しいことに次々と挑戦していく。そんな前向きな生き方に勇気を授けてもらおう。(聞き手・石原壮一郎)
『全員集合』やってたころは、バタバタの年越しだった
年明け早々、また「緊急事態宣言」が発令されて、なんだか波乱のスタートになっちゃったね。17日にやるはずだった初めての生配信ライブ「高木ブー家を覗いてみよう~オンラインだョ!全員集合~」も、残念ながら春に延期になりました。いろいろあるけど、今できることをやりながら、今年も前に進んでいきます。
『8時だョ!全員集合』をやってた頃は、年明けは有楽町の日劇で「ザ・ドリフターズショー」をやってた。ゴールデンウィークは浅草の国際劇場で、お正月は日劇っていうパターン。舞台にセットを組んで、『全員集合』みたいなコントをやったり、ゲストの歌手が歌ったり、僕たちも演奏をしてみたり。志村(けん)が入ってからは、僕が荒井(注)さんの代わりにキーボードをやってた。
昔のチラシを見てみると、たとえば1976(昭和51)年は「ドリフターズ!今年もドバっと全員集合!!」ってタイトルで、1月14日から20日までやってたみたい。ゲストがあいざき進也君とキャンディーズの3人だった。1973(昭和48)年のゲストは、天地真理さんと中尾ミエさんと4人組のゴールデン・ハーフ。こっちは、まだ荒井注さんの時代だね。
お正月っぽい出し物をいろいろやったけど、歌舞伎の連獅子って言うのかな、重くて派手な衣装を着て赤や白の長い髪の毛をグルグル回すヤツ、あれは難しかった。なかなか思うように髪の毛が回ってくれないんだよね。
1月1日から公演が始まる年も多かった。大晦日は毎年「レコード大賞」や「紅白」に応援で出て、そのあと「ゆく年くる年」があって、1日から公演がある年はそのまま日劇でリハーサル。いつも年越しはドリフのメンバーといっしょにいたけど、あらためて「明けましておめでとう」って挨拶した記憶はない。そういうバタバタした年越しも、今思えば楽しかったな。最近は家族そろってゆっくり新年を迎えることができて、それも楽しいけどね。
若い人たちが頑張っているのは、応援してあげたい
今年もお正月はちょっとゆっくりしたけど、三が日が明けてから生配信ライブの延期が決まるまでは、準備で大わらわだった。延期になって楽しみにしてくれていた人たちには申し訳なかったけど、その分、さらにパワーアップした内容にするので、楽しみに待っていてください。
ゲストのひとりの大槻ケンヂ君は、ご存じのとおり筋肉少女帯のリーダーで、30年ぐらい前に『元祖高木ブー伝説』って歌を出した。最初は筋肉少女帯がインディーズ時代に自主製作版の『高木ブー伝説』を出したんだけど、ウチの事務所の社長があんまりいい顔しなかったんだよね。無断で僕の名前を使ってたわけだから、所属事務所の立場としては当然なんだけど。しかも、失恋してヤケクソになっている男の歌だもんね。
ただ僕としては、嫌な気持ちはぜんぜんなかった。あれだけ「高木ブー」って名前を連呼してくれる歌はないし、こう言ったら悪いけど、当時の筋肉少女帯はまだまだ無名のバンドだったしさ。だから、僕のほうで「(歌っても)いいんじゃないの」って独断で許可を出しちゃった。どうやって伝えたんだっけな。大槻君に直接言った記憶はないから、たぶん何かのときに関係者の人に言ったんだと思う。
当時はバンドブームで、若い人のバンドがたくさん出てきてた。やっぱり、応援してあげたいじゃない。ネットなんかでは、僕が「若いヤツがバカやって頑張ってるんだから許してあげようよ」と言ったって話になってるけど、そういうセリフを口にした覚えはないんだよね。でもまあ、気持ちとしてはだいたいそんな感じだったかな。
それからあらためてシングルCDとして発売されて、けっこうヒットしたよね。テレビの歌番組を見ると、派手なメイクをした大槻君が「俺は高木ブーだ!」って絶叫してた。どんどん人気バンドになっていって、僕も嬉しかったな。そんなこともあって、義理堅いというか、30年たった今もこうしてライブに出てくれる。お互いが現役だからできるわけで、そう考えると感慨深いよね。
2021年はどんな年になるのかな。たくさん制約はあるかもしれないけど、それはいつの時代でも何をやるにしても同じだし、制約があるからこそできることもある。きっといい一年になると思います。いや、みんなでいい一年にしていきましょう!
「まだまだ誰もが大変な状況だよね…。でも、前を向いて、今年も新しいことに挑戦していきます。期待してください」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」( イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評!
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「恥をかかない コミュマスター養成ドリル」。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。