高木ブーが笑顔で語る「僕のお葬式でしてほしいこと」【連載 第36回】
世界が不安に包まれている中、あらためて、ザ・ドリフターズの笑いに注目が集まっている。そして、高木ブーさんが奏でるウクレレの音色は、聴く人にいつも以上の癒しと活力を与えている。こんな時期だからこそ、暗い話題も明るく笑い飛ばしたい。誰しも一度しか経験できない「自分のお葬式」について、高木さんに語ってもらった。(聞き手・石原壮一郎)
缶コーヒーとドリフがコラボしたCMが話題
もう見てくれた人も多いかな。今流れてるサントリーの「BOSSゴールデンタイム」のCM、ドリフがコラボしてるんだよね。「いい湯だな」の歌に合わせて、「8時だョ!全員集合」や「ドリフ大爆笑」のコントのシーンが次々に出てくる。もちろん、長さんも志村もいるし、僕も雷様になったりおでんの鍋で泳いだりしてます。
CMの最後のほうで、長さんが「つぎ、いってみよう!」って言うんだけど、あのセリフは今の時代の気分にピッタリだよね。コロナを追っ払って、さっさと「つぎ」にいってみたいと誰もが思ってる。自分のセリフがコロナ禍の日本を元気づけてるなんて、長さんも今ごろ空の上から、不思議な気持ちになってるんじゃないかな。
YouTubeのサントリー公式チャンネルでフルバージョンが見られるんだけど、1月29日に公開して10日で、再生数がなんと150万回を超えてた。たくさんの人が、ドリフの笑いを思い出したり新しく知ったりしてくれてるわけで、それは嬉しいよね。
非常事態宣言が延長されたこともあって、このところはまた家でじっとしてます。最近のイベントは節分かな。豆まきをして、南南東のほうに向かって海鮮の恵方巻きを食べた。豆を年の数だけっていうのは、ちょっともう無理だけどね。ウチの節分には、焼いたイワシとけんちん汁も欠かせない。節分にけんちん汁っていうのは、関東の風習らしいね。
豆まきのときは雷様の格好をしたほうがいいかなとチラッと思ったけど、節分は雷様じゃなくて鬼だった。ただ、どっちもツノがあって虎のパンツを穿いてて、なんか似てるよね。もとをただすとつながってる存在らしい。でも、豆をぶつけられて外に追い出されちゃうのは嫌だから、わざわざ雷様になることもないか。
孫が自分と色違いのコートをプレゼントしてくれた
そうそう、このあいだ孫のコタロウが自分のお年玉で、僕にコートをプレゼントしてくれたんだよね。自分が着てるのと色違い。コートも嬉しかったし、そんなことをしてくれる年齢に成長したんだなってことも嬉しかった。早くそのコートを着て出かけたいな。
コロナで世の中が変わっちゃう前は、気の置けない人たちとよくご飯食べに行ったりしてた。時々みんなで酒の肴にしてたのが、「どんなお葬式にしたいか」って話題。そんなことを笑いながら話せるのも、バリバリに元気だからだよね。僕は100歳まではウクレレを弾き続けるつもりだから、かなり先の話だしね。
コントとかで、棺桶には何回も入ったことがある。そういうのを嫌がる人もいるけど、僕はぜんぜん抵抗ない。あれって、入ると寿命が延びるって言われてるらしいよ。仲本なんか、いつだったかコントで棺桶に入ってたら、待ってるあいだにそのまま寝ちゃったことがある。起き上がってくるタイミングなのにシーンとしてるから、誰かが「おーい、生きてるか」なんて言ってたな。
自分のお葬式でぜひやってほしいのは、お坊さんのコーラス。なんていう呼び方かは知らないけど、4人のお坊さんがハーモニーでお経を唱えるのがあるんですよ。あれ好きなんだよね。単に何人かで同じお経を唱えるんじゃなくて、声の高さが微妙に違って和音になってないとつまんない。聴いてると、ソロがあったりバックを付けたりもしてることもある。きっと、お経のコーラスを得意にしてるお坊さんユニットとかあるんじゃないかな。
「お棺には雷様で入ってよ」なんて話も出たけど、それだと見た人がどんな顔していいか困っちゃうよね。お気に入りのアロハぐらいがいいかな。ハワイの正装だし。加藤は奥さんの綾菜さんに「俺が死んだら、指を鼻の下に置いて『カトちゃん、ペッ』のポーズで棺桶に入れてくれ」って頼んでるんだって。あいつらしいよね。
祭壇の遺影にもこだわりたいけど、自分で選ぶわけじゃないところが難しい。選んでおけばいいのかな。カッコいいなと思ったのは、17年前に逝った長さんの遺影。当時はキリンビールのCMに出てて、ひとりでベースを弾いてる渋い顔が遺影になってた。コメディアンの気配はまったくしないんだけど。
なんて、そんなことを言っているうちは、まだまだ大丈夫。今は、3月6日の生配信ライブ「【ドリフ&ももクロ生出演】高木ブー88歳だョ!全員集合」(詳しくはこちらをクリック)に向けて、着々と準備を進めてます。そのあとも、まだ詳しくは言えないけど、アッと驚く計画がいくつか進んでいるので、楽しみに待っていてください。コロナに負けるな!
「自分のお葬式では、4人のお坊さんによるお経のコーラスで送られたいな、なんて思ってる。元気だからこそ、言えるんだけどね」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」( イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評! 初めての生配信ライブ「【ドリフ&ももクロ生出演】高木ブー88歳だョ!全員集合」(視聴チケット3,000円)は3月6日(土)18時スタート。詳しい情報は⇒こちら
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「恥をかかない コミュマスター養成ドリル」。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。