血液、血管を知って病気を防ぐ|血管年齢って?血液ドロドロとは?女性の血管が急激に老ける年代は?
血液は24時間休むことなく体中をめぐり、酸素や栄養、熱を届け、老廃物を回収する働き者。免疫力低下、動脈硬化や糖尿病を防ぐには、血液や血管の質を左右する”血管年齢”が関わっている。50代から血管が急激に老けるという。そのメカニズムを医師が語る。
血液は免疫力に深くかかわっている
血液は、大人1人につき約5L。24時間休むことなく体中をめぐり、酸素や栄養、熱を届け、老廃物を回収する働き者だ。あなたのすべては、血液にかかっていると言っても過言ではない。
血液検査をすれば、新型コロナの抗体についてはもちろん、糖尿病から腎臓の異変、がんの兆候まで、さまざまな情報を得ることができる。絶えず体を流れる血液は、われわれの体を守る大切な健康の指針でもある。
さらに、血液はそれ自体が、ウイルスや菌から体を守る免疫機能を備えている。血液の免疫機能は、大きく2つ。秋津医院院長で総合内科医の秋津壽男さんが解説する。
「1つは『自然免疫』といって、体内にウイルスや菌などの病原体が侵入したときに、血液中の白血球やナチュラルキラー細胞などが、異物を食べたり、攻撃したりして感染から守ります」
もう1つは、体が学習することによって生まれる「獲得免疫」だ。水ぼうそうやおたふくかぜのほか、予防接種もこのしくみを利用したものだ。
「予防接種のワクチンは、簡単にいえば、“弱らせたウイルスや細菌”です。これを体に注射すると、血中の免疫物質が病原体のしくみや弱点を学習する。これによって、実際に病原体が体内に入ってきたとき、簡単に撃退できるよう準備するのです」(秋津さん)
免疫力の低下が病気のリスクを高めることは言うまでもない。長生きするためには、血液の質を落としてはいけないのだ。
血液や血管の質を左右する”血管年齢”とは?
血液や血管の質を最も大きく左右するのは、「血管年齢」だ。さくら総合病院循環器センター長の梅津拓史さんが言う。
「血管年齢とは、血管の硬さのこと。血管年齢を左右するのは、それまでの生活習慣にほかなりません。具体的には、血圧や血糖値、コレステロール、中性脂肪の値が、血管年齢を決めます。血圧や血糖値、コレステロール値などに異常があると血管が老化して硬くなり、動脈硬化を起こしやすくなります。それによって、血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上がるのです」
一度老けて硬くなった血管を元に戻すのは難しい。血液がドロドロなら、より血管は詰まりやすくなり、血管系疾患のリスクは急上昇する。
→病気や死を招く「ドロドロ血液」あなたの危険度は? 改善する食材と食べ方を紹介
血液ドロドロとはどんな状態?
そもそも“血液ドロドロ”というのは、どういう状態なのだろうか。
人体はけがをしたとき、傷口に血小板が集まってきて、凝固系というたんぱく質のはたらきによってフィブリンという網目状の物質が血栓をつくり、傷口を塞ぐ。その後、血栓ができたままでは血管が詰まってしまうため、これを溶かす線溶系というたんぱく質が働き、血液はサラサラに戻る。
「『凝固系』と『線溶系』は、血管の内表面にある血管内皮細胞によってコントロールされています。しかし、コレステロールや内臓脂肪が増えると、凝固系と線溶系のバランスが崩れ、線溶系が抑制されて血液がドロドロになる。これが動脈硬化を進める要因になります」(梅津さん)
水分不足も血液をドロドロにする。ナビタスクリニックの久住英二さんが言う。
「誰でも朝起きてすぐは脱水気味で、血液がドロドロしている状態です。脱水状態が長く続くと血栓ができやすく、心筋梗塞や脳梗塞の原因になるので、こまめな水分補給を心がけて」
血中コレステロール値も重要だ。悪玉のLDLコレステロールが増えて、善玉のHDLコレステロールが減ると、動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上がることがわかっている。
女性は50才から血管が急に老ける
男性の心筋梗塞は60代が最も多いが、女性は70代が最も多い。言ってみれば、「女性は男性よりも10才、血管が若い」ということだ。これには、女性ホルモンが大きく影響している。
女性は、40代までは男性より動脈硬化リスクが圧倒的に低いが、閉経を迎える50才前後になってから、コレステロール値や血糖値が急上昇する傾向がある。
「女性ホルモンのエストロゲンには、悪玉コレステロールを除去して、善玉コレステロールの合成を促進するほか、血管をやわらかく保つはたらきがある。しかし、50才前後で閉経を迎えると、エストロゲンが減少します。これによってコレステロール値が急激に上がるため、動脈硬化が進みやすくなるのです」(梅津さん)
女性の血液、血管は50代を境に大きく変わる。「40代までの生活のままではダメ」と、早く気づくことが大事だ。
「50代以上は“別の生き物”になったと思うくらいがいい。女性ホルモンが少なくなることで、脂肪がついて筋肉が落ちやすくなり、骨密度が低下していくなど、さまざまな変化が訪れます」(久住さん・以下同)
“長生きする血液”をつくるためには、コレステロール値や血糖値を上げないようにすることが大前提だ。
「血糖値は、食事をとればとるほど上がります。内臓脂肪が増えると、糖をエネルギーに変えるインスリンの効きが悪くなる『インスリン抵抗性』ができます。すると、糖を分解する力が落ちるため、血糖値が上昇しやすくなり、動脈硬化が進むのです。糖尿病は太っている人に多いイメージがありますが、見た目はやせていても内臓脂肪が多くインスリンの働きが悪ければ、糖尿病になります。実は、日本には、やせた糖尿病患者が増えているのです」
教えてくれた人
秋津医院院長の総合内科医・秋津壽男さん、さくら総合病院循環器センター長の梅津拓史さん、ナビタスクリニック医師・久住英二さん
※女性セブン2020年12月17日号
https://josei7.com/
●血管年齢40代の74才医師が実践する健康法「血管しごき」って?