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健康

病気や死を招く「ドロドロ血液」あなたの危険度は? 改善する食材と食べ方を紹介

 内臓や脳、指の先まで張り巡らされた血管の中を流れる血液は、全身に酸素や栄養素を届ける生命線だ。サラサラと“清流”のように流れてくれればいいのだが、間違った生活習慣と加齢で、ドロドロとした“泥流”になるという。それは、あらゆる体の不調を引き起こし、最悪、死をも招く──。

 何ひとつ自覚症状がないまま、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞で倒れる──そうした命にかかわる血管性の病気の裏には「血液」のトラブルが潜んでいることは知られている。だが、血管の病気でなくても、全身を巡る血液の問題を放置すると、あらゆる不調の引き金になる。

 そうした血液のトラブルの中でも、自覚症状なしで危険な状態に陥っているのが、「ドロドロ血液」だ。岡部クリニック院長で、生活習慣病に詳しい岡部正さんはこう話す。

「ドロドロ血液といっても、血液そのものを実際に見て、わかる違いはありません。一般的に、中性脂肪やコレステロールの数値が高い、あるいは脱水などで血液が濃くなった状態を指します。体に悪影響を及ぼす生活習慣を続けたことにより、血液に問題が生じているのです」

 慈恵医大晴海トリトンクリニック所長で、総合内科専門医の横山啓太郎さんも「ドロドロ血液を明確に定義はできない」とした上で、血管の状態が血流に問題を引き起こすケースもあると指摘する。

「喫煙や気温差によって一時的に血管が狭くなり、血液が流れにくくなることもあります」

突然死や認知症を引き起こす

 三大栄養素の1つ、脂質の一種であるコレステロールは、細胞膜の原料となる。人間の生命を維持するためには欠かせない成分であり、これも血液によって全身に運ばれる。だが、コレステロールの中には、“体に悪いやつ”もいる。血液中の悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が増えすぎたり、反対に、善玉(HDL)コレステロールが少なすぎると、ドロドロ血液を引き起こす「脂質異常症」の原因になる。

「悪玉コレステロールが血管壁に入り込んで酸化すると、最終的に血管にコブができる。それによって血管が狭くなると血液の流れが滞るため、ドロドロ血液といわれる状態になります。血中の血糖値や中性脂肪が高いと、悪玉コレステロールの酸化を促進します。この状態が10年以上続けば、どんどん動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすのです」(岡部さん)

 原因は偏った食事や食べすぎ、運動不足などの生活習慣だという。下のチェックリストに6つ以上該当する人は、一度、検査を受けることをおすすめする。

「ドロドロ血液」を招く危険度チェックリスト

□ 食事はお腹いっぱいになるまで食べる
□ 清涼飲料水をよく飲む
□ 甘いものを間食でよく食べる
□ 肉の脂身やレバーが好き
□ 晩酌が日課で、酔っ払うまで飲むことが頻繁にある
□ 夕食の時間が不規則で、深夜に食べることも多い
□ 運動の習慣がない
□ 太り気味でお腹まわりが気になる
□ 野菜を食べる量が少ないと感じる
□ 加工食品をよく食べる

チェック数【0】今のところ心配なし。現在の生活習慣を継続しよう。
チェック数【1~5】コレステロールや中性脂肪の値が高い可能性あり。
チェック数【6~10】医療機関で検査し、生活習慣の改善を。

より動脈硬化の原因になる「超悪玉コレステロール」

 横山さんは「近年は、悪玉コレステロールが小型化した“超悪玉コレステロール”の存在が注目されている」と指摘する。

「体内の中性脂肪が増えると、超悪玉コレステロールが増加することがわかっています。超悪玉は通常の悪玉コレステロールよりも小さいため血管の壁に入り込みやすく、より動脈硬化の原因になりやすい。ただし、中性脂肪が減ると、超悪玉から通常の悪玉コレステロールに戻るという特徴があります」

 中性脂肪や悪玉コレステロールを減らすことが大切なのだが、残念なことに、女性は更年期を迎えると大幅にそれらが増えやすくなる。なぜならそれらを抑える働きのある女性ホルモン「エストロゲン」が減少するためだ。それを踏まえて、女性では年齢別に基準範囲が定められた(下の表を参照)。横山さんが話す。

「基準範囲内におさまっていたとしても、年々、検査の数値が上昇していれば危険サインです。自身の過去の数値と比較して、どう変化しているのかを重視してほしい」

■脂質異常症の判定基準範囲(女性)

<中性脂肪>
・従来の基準範囲(男女共通)/150mg/dl以上
・新たな基準範囲(2014年4月 日本人間ドック学会発表)/135mg/dl以上

<LDL(悪玉)コレステロール>
・従来の基準範囲(男女共通)/140mg/dl以上
・新たな基準範囲(2014年4月 日本人間ドック学会発表)/
 30~44歳=153mg/dl以上
 45~64歳=184mg/dl以上
 65~80歳=191mg/dl以上

<HDL(善玉)コレステロール>
・従来の基準範囲(男女共通)/40mg/dl未満
・新たな基準範囲(2014年4月 日本人間ドック学会発表)/49mg/dl未満

大切なのは、悪玉と善玉の比率

 また、単純に悪玉コレステロールの値が低ければ安心と考えるのも早計だ。岡部さんは「悪玉と善玉の比率が大事」だと言う。

「『LH比』といって、悪玉(LDL)が善玉(HDL)の2倍以上あると、血管にコレステロールが沈着し始める。たとえ悪玉、善玉コレステロールが基準範囲内でも、LH比が2倍以上なら危険です。健康診断では指摘されないこともあるので、必ず自分で計算してください」

脱水には要注意!スポーツドリンクなどミネラルが補給できるドリンクを選ぼう

 血管が狭くなるだけでなく、血液そのものがドロドロし流れにくくなることもある。

 2018年5月に亡くなった西城秀樹さん(享年63)は、1日に何度も入るほどのサウナ好きで、サウナによる脱水でドロドロ血液になったことも最初に起こした脳梗塞の原因の一つではないかともいわれている。研医会診療所漢方科の岡田研吉さんが指摘する。

「脱水症状を起こすと、血液が濃縮して粘度が高くなり、詰まりやすい状態になる。高温のサウナは大量の汗をかいて脱水症状になりやすいため、水分補給を忘れてはいけません。また、温泉成分が濃い高張泉も体の水分を奪いやすいため、長風呂は禁物です」

 水分補給する際は、水道水では血を薄めるだけになってしまうので、スポーツドリンクや梅干し水など、失われたミネラルが補給できるドリンクを選ぼう。さらに、若い世代でもドロドロ血液のリスクが高まっていることを岡部さんは危惧する。

「食事制限などの過度なダイエットをすると体内の水分が不足気味になります。時間をかけて進行する動脈硬化とは違って、脳や心臓に血栓ができやすくなっているため、突然の脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります」

 ドロドロの血液は認知症のリスクも高める。国立循環器病研究センターの副院長で、脳血管部門長の豊田一則さんが解説する。

「脳梗塞や脳出血は、『血管性認知症』の引き金となり得る。脳の血管がダメージを受けると、その周辺の脳神経も影響を受けるためです。また、近年の研究では、動脈硬化を予防する生活習慣を行うことで、神経細胞の問題で生じる『アルツハイマー型認知症』の予防にも効果があるとわかってきました」

 ドロドロ血液を予防することが、あらゆる病気のリスク回避になるということだ。

体重を「5kg」減らして薬いらずに

 まず取り組みたいのは、内臓脂肪を減らすこと。内臓脂肪が増えると善玉コレステロールが減少し、中性脂肪が増加する。

「20才の時の体重より、5㎏増なら、これ以上増やさない。10㎏以上増えていれば、今すぐ生活改善をして、やせる必要があります」(岡部さん)

 きついトレーニングをするよりも、まずは1日に歩く時間を7~8分程度増やすなど、継続して続けられる運動から始めよう。運動を習慣にする重要さを豊田さんも説く。

「患者さんが体重を5㎏減らすと、血圧や血糖値も見事に下がります。健康に大きな問題がない人であれば、運動習慣を持ち続けていれば、薬いらずで長生きできる体になれるはずです」

 運動に続き、ドロドロ血液の改善に確実に効果があると言えるのが禁煙だ。

「ストレス軽減は健康にとって効果的ですが、だからといって、たばこがいいという医師は1人もいないでしょう。ニコチンの悪影響をダイレクトに受けるため1本も吸わない方がいい」(豊田さん)

 一方、1日1~2合程の飲酒をする人は、脳梗塞になる割合が最も低いという統計がある。過度な飲酒は内臓脂肪を増やすため、3日に1度は休肝日を作り、少量のお酒を楽しむ程度にしよう。加工食品や脂身の多い肉など、悪玉コレステロールを増やす飽和脂肪酸を含む食品の摂取も控えたい。「摂るべきは、不飽和脂肪酸です」と話すのは管理栄養士の片村優美さん。

「青魚に含まれる不飽和脂肪酸の成分『EPA』には、血液をサラサラにする効果があります。『オメガ3系』の油であるアマニ油やえごま油も同様の効果がありますが、熱に弱いため、サラダにドレッシング代わりにかけるのがおすすめです」

 更年期を迎えた女性は、イソフラボンが豊富な大豆食品も積極的に食べたい。なかでもやはり最強なのは納豆だ。

「ナットウキナーゼは血栓のもとになるフィブリンを溶かすほか、血液をサラサラにする酵素の働きを促進してくれる。イソフラボンには女性ホルモンのエストロゲンと似た作用もあります」(片村さん)

 では、たびたび議論となる「卵の個数」問題はどうだろうか。

「2015年に、米国の農務省や日本の厚労省が、食事でのコレステロール摂取量の制限は必要ないと発表しました。食事で摂取したコレステロールが、血中のコレステロール値に与える影響は個人差が大きすぎるため、数値を設定できないからです。決して、“何個食べてもいい”というわけではありません」(横山さん)

 卵黄には飽和脂肪酸が多く含まれる。中高年以降は1日1個と肝に銘じておこう。 だからといって、なんでもがまんしなければならないわけではない。

「間食は、1日100キロカロリー以下ならしても構いません。噛み応えがあり、悪玉コレステロール値を下げる効果を期待できるナッツがおすすめです」(片村さん)

 内容だけでなく、食べるタイミングにも気をつけたい。脂肪の合成は寝ている間に活発に行われるため、就寝直前の食事は内臓脂肪として蓄えられやすくなる。

「就寝前の食事や飲酒は、肥満を加速させます。寝る3時間前には、何も食べないように心がけて」(岡部さん)

■ドロドロ血液防止になる食材とおすすめの食べ方

●青魚

 イワシやアジなどの青魚に含まれる「EPA」には脂肪の燃焼を促す作用があり、中性脂肪の減少に効果的。

●1食120g以上の野菜

 野菜から食べる“ベジファースト”は、脂質の吸収を和らげる。オメガ3系の油をドレッシング代わりに使うのもおすすめ。

●納豆

 血栓予防に効果的な「ナットウキナーゼ」や女性ホルモン「エストロゲン」の類似物質である「イソフラボン」が豊富。

●オメガ3系の油

 アマニ油、えごま油には、悪玉コレステロール値を下げる不飽和脂肪酸の「オメガ3系」が、ほかの植物性油の6倍含まれる。

体質より親の悪い生活習慣が子供に影響を与える!?

 コレステロール値の異常には、遺伝性の病気の可能性もある。日本人の200~500人に1人が抱える疾患といわれる「家族性高コレステロール血症」は、適切な治療が必要となる。だが、そういった生まれつきの病気とは違い、豊田さんは、親の悪い生活習慣が子供にうつるケースを心配する。

「親の生活習慣が子供に引き継がれることは多い。たとえば、親が塩辛い味つけを好んで食べていれば、子供もその習慣を引き継ぐことはよくあります」

 自分の健康への意識が子供にも影響することを、親は忘れてはいけない。

「川は一定の量、一定の速度であれば清潔に保たれますが、流れが遅くなると途端に細菌が繁殖します。血流も正しいスピードで循環していれば病気を寄せつけないのです」(岡田さん)

 体をサラサラと流れる血液は健康の象徴だ。

イラスト/尾代ゆうこ

※女性セブン2020年1月30日号

●大豆の調理法|がんや動脈硬化の発症リスクを抑え、“噛む”ことで脳も刺激するレシピ

●体にいい酢の種類とその効能|血圧、血糖値、動脈硬化対策に正しい酢の摂り方

●認知症やうつ・心臓疾患や循環器系疾病を予防する海の魚のレシピ

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