介護施設で働く人にコロナ慰労金を支給…もう申請した? いくらもらえる?
新型コロナウイルス対策の第2次補正予算が6月に閣議決定され、介護・福祉の現場で働く職員に「慰労金」の給付が決定。7月から申請も開始されている。改めて慰労金とは何なのか、金額や申請方法などをわかりやすくまとめた。慰労金に関する介護現場の声とともにレポート!
1.介護現場の人に慰労金について聞いてみた
コロナの影響から、介護現場で働く人へ慰労金の支給事業が開始された。実際に介護現場で働く人たちはどう思っているのか? 話を聞いた。
介護施設で働く40代看護師「慰労金は申請中」
北海道の介護施設で働く看護師のOさん(40代女性)は、まさに今、介護従事者向けの慰労金の申請中だという。
「いま会社を通じて慰労金の給付申請をしていますが、1人5万円が給付されると聞いています。うちの施設では、会社がまとめて申請をしてくれていますよ。
介護施設で訪問看護の仕事をしていますが、コロナの影響もあって病院や施設に行けずに在宅療養する人が増えているからか、とにかく忙しくて…。慰労金の前に休みが欲しいですね(笑い)。5万円で新しい洗濯機を買う足しにしたいです」
コロナ患者のケアをした介護士「慰労金!? 知らない…」
一方、東京都内の病院に勤務する介護福祉士のYさん(40代女性)は、慰労金の支給について「まだ何も知らされていない」と驚いた様子。
「介護士として病院で入院患者さんのケアをしています。緊急事態宣言が出ていたころは、コロナ疑いの急患がどんどん入ってきて、患者さんの対応をしていましたが、防護服もマスクも品不足だったので毎日不安でした。
コロナ患者さん専用の病棟も作ったりして備えたからなのか、冬のボーナスはカットされるという噂もあって…。20万円も給付されるなら、ありがたいですが、まだ勤め先からは何も報告がありません」
2.介護施設で働く人への慰労金とは
新型コロナウイルス感染症対策のひとつとして、国から医療従事者に慰労金が給付される。この慰労金は医師や看護師、医療機関者だけでなく、介護施設で働く職員にも支給されるもの。
介護サービスは、高齢者やその家族の生活を支えるために欠かせないものだ。高齢者はコロナの感染で重症化するリスクが高いといわれ、介護はその高齢者に濃厚に接触するサービスであることから、サービスを提供する側は可能な限りの感染症対策を行ったうえで対応する必要がある。
コロナの感染が広がる中でサービス提供を継続するには、当然ながら相応の心構えが求められるうえ、揃えなければならない必要物資もあるだろう。そこで国は、介護施設・事業所で働く職員に対し、慰労金の支給を決定した。
厚生労働省が掲げる慰労金事業の説明によると、介護現場で働く職員は、
1.重症化するリスクが高い利用者との接触
2.継続して提供することが必要な業務
3.集団感染の発生状況
これらを踏まえ、「心身に負担がかかる中、強い使命感をもって業務に従事していることに対し、慰労金を給付する」としている。
介護職は健康不安を抱える職種2位
厚生労働省とLINEが実施した「新型コロナ対策のための全国調査」によると、「身体・健康について心配している」人の割合は、職種別にみると「タクシードライバー」が1位で32.7%。そして、「ヘルパー・介護」31.9%で2位。介護の仕事をしている人の多くが、感染に不安を抱えていることが伺える。
連日、感染者数の増加が報じられている。感染者の世代は、20代30代が中心だったが、ここ数日で高齢者にも広がりを見せている。介護施設での感染拡大も不安視される中、先日、東京・荒川区の介護施設でクラスターが発生し、7月15日時点で累計32名(入所者25名・施設職員7名)の感染者が出たことが区のウェブサイトで報告されている。
今後も介護施設で働く人たちの不安や心身への負担が増すことが懸念されるため、一刻も早く慰労金が個人の元へ届くことが望まれる。
※参考/厚生労働省「新型コロナ対策のための全国調査」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11244.html
★Point! 介護の仕事は感染リスクや心身の負担も!
3.どんな人がいくらもらえる? いつ入金?
慰労金の支給対象となる介護従事者は、介護施設・事業所(介護保険の全サービス、有料老人ホーム、サ高住、養護、軽費)に勤務し、利用者と接触するすべての職員となっている(6月30日までの対象期間に10日以上勤務していることが条件)。
この場合の「利用者」とは、新型コロナ患者だけでなく、あらゆる患者を含む。また「接触」も身体に限らず、対面・会話や同じ空間で作業したケースも含まれる。
注意したいのは、勤務先が「新型コロナウイルス感染症が発生又は濃厚接触者に対応した施設・事業所」であるかどうかによって、慰労金の支給額が異なることだ。
新型コロナ感染者が発生した、あるいは濃厚接触者に対応したことのある施設・事業所の場合は、次の2通りがある。
まず、発生日・対応日以降に勤務を行った通所・施設系職員、もしくは感染者・濃厚接触者に実際にサービスを提供した訪問系職員であれば、支給される慰労金は「20万円」となる。
これに対して、感染者・濃厚接触者が発生した施設・事業所であっても、この2点に当てはまらない職員は「5万円」だ。
一方、感染者・濃厚接触者が発生していない施設・事業所の職員であれば、一律で「5万円」となる。
申請受付は7月から、支給は8月下旬をめどに開始されることとなっており、都道府県から施設・事業所を通じて、対象となる職員に支給される。
慰労金は5万円か20万円
★Point! 対象:介護職すべての人、給付額:5万か20万円、申請受付:7月~、支給:8月下旬予定
4.コロナ慰労金の申請方法は?
慰労金の申請方法は、勤務している介護施設・事業所が、職員の申請を取りまとめることになっている。具体的には、職員から代理申請・代理受領の委任状を集める形をとる。
もちろん退職者も、条件に該当すれば対象となる。その場合も原則は勤務していた施設・事業所を通じての申請となるが、難しい場合は個人で都道府県に直接申請することも可能だ(施設・事業所で勤務していたことを証明する書類が必要)。
なお、複数の施設・事業所で勤務している場合でも、主に勤務する施設・事業所を通じて1回のみしか申請できない。もし二重に受け取ってしまった場合は返還する必要がある。
★Point! 事業所に委任状を提出して申請を!
5.コロナ慰労金の給付に関するQ&A
介護施設で働く介護従事者への慰労金の申請が開始となっている。自分はあてはまるかわからない…という人のために、職種や勤務形態などの違いなど慰労金にまつわる疑問を、ファイナンシャルプランナー・大堀貴子さんに聞いた。
Q介護施設の清掃のパートでももらえる?
「介護事業所に勤める介護職のほか、事務職、運転手、寝具清掃、事務員など感染者・濃厚接触者(家族などが感染した利用者が想定される)に1度でも接触していれば20万円受給可能。それ以外の場合は5万円となります」(大堀さん、以下同)
冒頭でコメントしてくれたOさんのように看護師など医療従事者でも、介護施設に勤務する職員として支給される。
Q病院に勤めている介護士はどうなる?
冒頭のYさんのように介護福祉士として仕事をしていても、勤務先が病院の場合は、医療従事者への慰労金となり、介護施設で働く人への慰労金とは金額や給付条件などが変わる。
医療従事者の場合は、都道府県から依頼された病院や機関で働く人の中で、
【1】コロナ患者の診療や入院対応をしている場合は20万円
【2】コロナ患者の診療を行っていない場合は10万円
【3】1と2以外の病院や診療所などは5万円
上記の3つのパターンがある。いずれにしても、勤め先に確認しておくといいだろう。
Q派遣で働いているがもらえるのか?
「厚生労働省の通知によると、派遣職員、業務委託含むとされています。直接雇用のパートも含まれます。
また、1人1回限りで、重複申請不可のため事業者による確認があります」
Q働いている施設によってもらえる金額は変わる?
施設によって変わることはない。該当する条件により、決まった金額(5万円、20万円)が個人に給付される。
Q7月以降に感染が発覚した施設で働く人はいくら受け取れる?
「介護施設で6月30日までに感染者・濃厚接触者が発生している場合に20万円を受け取れます。つまり、7月1日以降にコロナ感染者が出たとしても20万円は受給できないということになります(5万円は受給可能)」
※参考/厚生労働省「介護サービス事業所・施設等における感染症対策支援事業等及び職員に対する慰労金の支給事業」について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00144.html
文/石川誠 構成/介護ポストセブン編集部
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