《国民健康保険料・後期高齢者医療保険》上限額アップへ「いくら引き上げ?」じわじわ上がる保険料の実情と高齢者への影響をFPが解説
物価上昇が続く昨今、2026年は国民健康保険料の引き上げが予定されている。今回の引き上げには「後期高齢者医療保険」も含まれているが、ここ数年でじわじわと上限額が引き上がっている。高齢者にとってどのような影響があるのか、ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
内外資系の生命保険会社を経て、2011年に母の介護経験をもとに介護者専門FPとして独立。その後、2018年にカワムラ行政書士事務所を開業。介護や相続、親の介護をめぐる家族会議支援など、将来に備えるサポートを幅広く行う。
国民健康保険料「年間上限額1万円引き上げ」
厚生労働省は、令和8年度から国民健康保険の保険料(国保料)に設けられている年間の上限額(賦課限度額*ともいう)を「1万円」引き上げる方針を示し、昨年11月27日に開かれた会議で了承されました。
国民健康保険料の年間上限額は、令和7年度までの109万円から、令和8年度は110万円となります。
*賦課限度額(ふかげんどがく)/税金や保険料に「上限」を設けることで、税金の負担を公平にする目的がある。記事中では「上限額」と明記。
国民健康保険料は、大きく分けて、【1】医療分(基礎賦課額分)、【2】支援金分(後期高齢者支援金等賦課分)、【3】介護分(介護納付金賦課分)の3つで構成されています。そのうち今回引き上げられるのは「医療分」です。
医療分の上限額は、令和7年度の66万円から、令和8年度には67万円となり、1万円引き上げとなりました。なお、後期高齢者が対象となる支援金分と、40才から64才のかたが対象となる介護分については、据え置きとなっています。
後期高齢者医療保険の上限額は5万円引き上げも?
原則として、75才になると国民健康保険などから「後期高齢者医療保険」へ自動的に移行します。この後期高齢者医療保険料にも上限額が設けられていて、年々上昇の一途をたどっています。
令和5年度は66万円でしたが、令和6年度からは一気に80万円に引き上げられ、急激な保険料の値上がり支援する「激変緩和措置」が実施されました。
そして令和7年12月12日に開かれた審議会では、令和8年度から85万円へ引き上げる案が示され、検討が進められています。今後、正式に決定されると、一定以上の所得がある後期高齢者については、保険料の負担が増える可能性があります。
なお、後期高齢者医療保険は、被保険者1人あたりの保険料(全国平均・月額)※は、令和4・5年度は6,575円、令和6年度は月額7,082円、令和7年には月額7,192円となり、じわじわと引き上がっています。
このような保険料上限額(賦課限度額)の見直しによる影響を受けるのは、主に高所得者層です。
令和8年度の賦課限度額については、近年の物価や賃金が上昇傾向にあることに加え、後期高齢者の所得や医療給付費の増加が見込まれることなどを背景に、5万円引き上げる案が示されています。
この場合、年金収入と給与収入を合わせて年1,150万円以上のかたが対象となり、高所得者にとっては実質的な負担増となります。
※厚生労働省 第207回社会保障審議会医療保険部会「 後期高齢者医療の保険料の賦課限度額について」 令和7年12月12日 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001610193.pdf
※厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について」令和6年4月1日
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001255180.pdf
※厚生労働省「後期高齢者医療の保険料の賦課限度額について」令和7年12月12日
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001610193.pdf
後期高齢者医療保険料には「軽減」制度も
後期高齢者医療保険料はじわじわと上がり続けていますが、実際の保険料は都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合によって異なり、全国共通の制度として、低所得者などの負担を軽減する制度が設けられています。
たとえば、東京都※の場合、全国共通の制度に基づき「低所得者」や会社の健康保険(国保・国保組合を除く)などの「被扶養者だったかた」を対象とした軽減制度があります。
ただし、軽減を受けるためには、所得の申告が必要となる場合があります。
【1】低所得者の軽減制度
世帯の所得状況に応じて、均等割額(7割・5割・2割)が適用されます。東京都※独自の制度として、被保険者本人の所得が一定以下の場合は所得割額(50%または25%)が適用されます。ただし、世帯の全員の所得を合算して判定され、総所得が基準を超える場合は、軽減を受けられません。
※東京都後期高齢者医療広域連合
【2】被扶養者だったかたの軽減制度
後期高齢者医療制度に加入する直前まで、会社の健康保険など(国保・国保組合を除く)の被扶養者だったかたについては、加入から2年を経過する月まで、均等割額(5割)が軽減されます。
【1】【2】の両方に該当する場合には、軽減割合の高い方が適用されます。
※東京都後期高齢者医療広域連合「保険料の決め方・賦課」
https://www.tokyo-ikiiki.net/seido/1001968/1001975/index.html
保険料の「減免制度」もある
上記の軽減制度とは別に、特別な事情がある場合には、申請により保険料が「減免」される制度があります。たとえば、災害などにより資産に大きな損害を受けた場合や、事業の休止・廃止、失業などにより収入が著しく減少した場合で、預貯金など利用できる資産を活用してもなお保険料の支払いが困難なときには、減免の対象となることがあります。
減免を受けるためには、申請が必要となり、具体的な要件や減免の内容は、状況やお住まいの自治体(後期高齢者医療広域連合)によって異なります。
子育て世帯は保険料の負担軽減へ
一方で、国民健康保険は子育て世帯への負担軽減策も進められています。
国民健康保険では、令和4年4月から未就学児にかかる「均等割保険料」の5割が公費で軽減されていますが、今後はこの軽減措置の対象を、高校生年代まで拡大する方針が示されています。これにより、子どもがいる世帯では、国民健康保険料の負担が一定程度抑えられることが期待されます。
※厚生労働省 第 205 回社会保障審議会医療保険部会 令和7年11月27日
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001600026.pdf
保険料アップの背景【まとめ】
国民の3人に1人65才以上、5人に1人が75才以上といわれる高齢化が進む日本において、医療費の増加とともに国民全体が負担する保険料の増加は今後も続くことが懸念されます。
今回の上限額の見直しは、主に高所得層に影響しますが、低所得者向けの軽減や、災害や収入減少時の減免制度もあります。減免の対象になるかどうかは、お住まいの自治体もしくは後期高齢者医療広域連合に確認してみましょう。
