座り続けると死亡リスク増 回避のためのストレッチ法
米コロンビア大学医学部のキース・ディアス博士率いるチームが9月11日、米内科学会機関誌『AIM』にて、長時間座り続けると死亡リスクが増すという研究結果を発表。そのニュースをCNNが報道し、注目を集めていたが、“座り続ける”と何がいけないのだろうか──。
座ってばかりの生活、世界中で年間320万人の死亡原因に
WHO(世界保健機関)の調査によると、現代人の4大疾患(心血管障害、がん、慢性呼吸器系疾患、糖尿病)を引き起こす主な要因は、喫煙や偏った食生活、運動不足、アルコールの飲みすぎだ。
「運動とは、ジムやスポーツなどで積極的に体を動かすことだけではありません。日常生活で体をほとんど動かさない、つまり座りっぱなしの生活が、健康を脅かすのです」
そう話すのは、医師の坪田一男さん(慶応大学医学部眼科教授。著書に『1日6時間座っている人は早死にする!』等)。
座ってばかりいる生活は、前述の4大疾患のすべてに影響し、世界中で年間約320万人の死亡原因になっている、と推測されている。具体的には、座り続けていると尻から太ももが圧迫され、血流が滞り、糖や中性脂肪の代謝がうまく行えず、血液中に増加。血管系疾患や糖尿病のリスクが高まってしまうのだ。その他、上記のさまざまな病気や症状も引き起こすという。
1日11時間以上座っている人は、死亡リスクが高くなる
座りすぎの弊害としては、これまで腰痛、肩こりなどが第一に考えられていた。だが、健康管理士で、予防医療推進協会理事長の佐々木さゆりさん(著書に『座りっぱなしが、あなたの健康を蝕む 本当は怖いデスクワーク』等)は、次のように説明する。
「姿勢が悪いと内臓が圧迫され、胃もたれが起きやすくなります。また、姿勢が悪いとあごが上がって口呼吸になり、ウイルスなどの感染リスクが増えます。浅い呼吸はメンタルにも影響を与え、胸や顔のたるみにつながります」
さらに怖いのは、動かないことで生じる血行障害だ。米国の医学誌『JAMA』は、2012年に「1日に11時間以上座っている人は、4時間以下の人よりも死亡リスクが40%高くなる」と発表した。
「人は立って歩くことで、足の筋肉を動かし、血液を循環させます。20~30分に1度は立ち上がって動くことが理想ですが、それが無理なら、座ったままできる血流促進ストレッチが有効です」(坪田さん)
座りながらすぐできる リスク回避ストレッチ
下記の3つのストレッチの1つを、1時間に数分程度行うだけでも改善できる。
【1】足首のストレッチ
足裏からふくらはぎを動かせるストレッチ。靴をぬいでゆっくり動かすのがポイントだ。
1:足を肩幅に広げ、つま先を床に着けて、かかとを10回上下させる。
2:かかとを床に着け、つま先を10回上下させる。
【2】ひざ上げストレッチ
椅子に圧迫されている太ももを動かし、血流を促進。手は椅子や机に置き、体を安定させて行う。
1:足裏をしっかり床に着けて座る。右足のひざを曲げたまま、上に持ち上げて5秒ほど静止したら、ゆっくり戻す。
2 :左側も同様にして、各10回繰り返す。
イラスト左の『正座ストレッチ』は、正座した状態で、ひざを片方ずつ上げ下げする。各10回でOK。
下肢の血管を圧迫する正座を長時間続けるのはNG。だが、短時間なら大腿四頭筋を伸ばすストレッチに。タクシーなどでの移動中や、椅子に座り続けるときなどに行うのも可。
【3】足上げストレッチ
足全体を動かす方法。つま先を上に向けるのがポイント。ひざを伸ばし、太ももが浮く位置で行えば、さらに効果が高まる。
1:姿勢を正して深く腰掛ける。背筋を伸ばし、力を抜いて腕を自然に横に下ろした状態に。
2:右足のひざを伸ばして上げ、つま先を上下に5回動かす。左足も同様に。各5回繰り返す。
イラスト/秋葉あきこ
※女性セブン2017年10月5日号
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