本当に看取りをしてくれる老人ホームの見極め方|9つのチェックポイント
老人ホームで最期を迎えることが当たり前になって久しいが、「看取り」の質は施設で大きく異なる。幸せに死ぬために、どんな施設を選べばいいのか、入居前にどんなところをチェックすればいいのか。高齢者施設の専門家が指南する。
最期まで安心な施設選び 9つのチェックポイント
1:医療機関と一体化しているか
入居者の看取りには、医療機関との連携や深夜でも看護師が駆けつける態勢が欠かせない。
高齢者住宅の運営コンサルティングなどを行なう「タムラプランニング&オペレーティング」代表の田村明孝氏は語る。
「近隣の医療機関との提携を謳う施設より、経営母体が医療機関だったり、施設内に病院を併設しているホームに着眼すべき。また看護師の24時間常駐を謳っていても、実際には入居者の状況を把握していない派遣やバイトのスタッフが含まれることも多いので注意が必要です。訪問看護ステーションを自社運営している施設ならなお安心です」
2:2人に1人は看取っているか
看取りの「実力」を推し量るデータがある。
「1年間に死亡して退去した入居者のうち、施設内で看取られた人がどれほどいるか──これを看取り率と言います。この数字が5割を超えているホームなら、死期が迫っても放り出さず、施設内で責任もって看取っていると判断できるので、まず安心と考えていいでしょう」(前出・田村氏)
看取り率は施設に聞けば教えてもらえる。
3:車椅子を手入れしているか
老人ホームの質を左右する清潔さ。エントランスやトイレをチェックするのはもちろんだが、見落としがちなチェックポイントが車椅子の車輪だ。
介護情報誌『あいらいふ』編集長の佐藤恒伯氏が言う。
「見学に行ったら、まず車椅子のタイヤの空気圧を確認してみてください。空気が抜けていれば、乗り心地が非常に悪くなります。そういった心配りができない職員がいる施設が看取りをきちんとできるとは到底思えません」
同様に、車椅子の車軸部分の汚れも、細部であるがゆえに、目配りの届く施設かどうかの判断材料になる。
4:食事や入浴が自由にできるか
マニュアル化できない看取りには、臨機応変で柔軟な対応が求められる。それゆえ、画一的なサービスしか提供できない施設は避けたほうがいいという。
「多くのホームでは朝食の時間が例えば、朝7〜9時までと決まっています。でも、入居者にはそれまでの人生で体に刻まれた生活リズムがあり、午前10時以降に朝食を食べたい人もいるはず。入居者のライフスタイルを尊重しない施設は看取りについても杓子定規な対応しかできない」(前出・田村氏)
食事の時間帯を外して見学し、食堂に入居者の姿を見かけなければ、1日の生活が施設側の定めたスケジュール最優先で決められている可能性が高い。食事以外でも、入浴が24時間可能かどうかなど、入居者がこれまで築いてきたライフスタイルを維持できるかがポイントだ。
5:夜間にオムツを換えてくれるか
日中に限られる施設見学では、夜間のサービス状況まで把握することは難しい。それを知る指標として、見学の際に「オムツ交換のタイミングはいつですか?」と職員に質問してみるのが有効だという。
「例えば夜9時など、決まった時間にだけ入居者のオムツを交換する施設が多いですが、入居者の排泄傾向を記録・分析している施設だと対応が違う。真夜中に入居者が尿意をもよおした場合、失禁する前に対応し、夜勤の職員がトイレへ誘導したり、排泄直後のオムツ交換もしてくれる。サービスのきめ細やかさは、看取りの質にも繋がっていく」(前出・佐藤氏)
6:室温を入居者に合わせてくれるか
「高齢の入居者になるほど、自身の体温コントロールが上手くできない人が増えます。だから、室温設定について問い合わせることは非常に重要です」(前出・田村氏)
各入居者に合わせた室温設定をしていない施設では、職員の体感で、空調の設定温度が決められているケースもある。職員の感じる”暑い””寒い”は、高齢の入居者たちの快適な室温とはズレている可能性もある。
「入居者ごとに体感温度を把握した上で室温を調整してくれる 施設を選びたい」(同前)
室温設定に対する細かい配慮も、看取りケア時の心遣いと重なる。
7:最期に家族が立ち会えるか
いよいよ臨終が迫った時、家族は最期まで入居者の傍にいたいと願うもの。それを判断する際、「家族は泊まれますか?」の質問は欠かせない。
「施設内に家族が宿泊可能なゲストルームを備えているか、入居者の居室に家族が泊まれるかなどの点は事前に確認しておくべき。宿泊スペースがなくても近隣のホテルを紹介してくれる施設なら安心です」(前出・田村氏)
8:看取りケアプランがあるか
終末期医療や緩和ケアのやり方について取り決める看取り専用のケアプランは、看取りを謳う施設なら当然あってしかるべきだ。
「看取りケアプランのサンプルを提示できる施設は、看取りに真剣に取り組んでいるところと考えて間違いありません。
逆に用意していない施設は、看取りに対する本気度に疑問符が付く。入居希望者からすると、サンプルを確認できなければ、看取りに関する具体的なサービス内容を事前に知ることができない。
高い費用を払うのに『入ってみなければわからない』では、不誠実だと言われても仕方ありません」(前出・佐藤氏)
9:死後の面倒まで見てくれるか
「看取りの実績のない施設では、亡くなった後のケアも手薄いことが多い。反対に看取りに強い施設では、施設内で葬儀を行なうこともでき、スタッフや他の入居者が温かく見送ってくれます」(前出・佐藤氏)
納骨や永代供養、さらに財産管理まで担ってくれる施設もある。死後までしっかりケアしてくれる施設なら安心だ。
※初出:週刊ポスト