老眼や白内障を早めるNG行動とは?「疲れ目のマッサージや目を擦ると水晶体にダメージも」【専門医解説】
「目が疲れる」「手元が見えづらくなった」。年を重ねると、ふとした瞬間に老いを感じるもの。近年の研究で、老化が早い人と遅い人を分ける境界線は日頃の小さな生活習慣にあることがわかってきた。老眼や白内障など目の老化を防ぐ方法を伝授する。
教えてくれた人
室井一辰さん/医療経済ジャーナリスト、平松類さん/医師・二本松眼科病院副院長
老眼・白内障の老化を早める習慣/遅らせる習慣
「近年は世界的に老化研究の進歩が目覚ましい。2020年以降は抗老化(エイジングケア)から一歩進み、動物実験などによって“若返り”の可能性が科学的に証明され始めています。米ハーバード大医学大学院教授で、長寿と加齢研究の世界的権威であるデイビッド・シンクレア氏の提唱した『老化は治療や予防が可能な病である』との考え方が広まりつつあるのです」と、医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。
今年2月に英オックスフォード大の研究チームが「老化を左右するのは遺伝よりも生活習慣」とする研究報告を学術誌に発表した。
「約50万人のデータを解析したところ、遺伝要因が寿命に与えた影響が2%未満だったのに対し、生活習慣を含む環境要因は17%でした。体に良い習慣を日常生活に取り入れることで長生きの可能性が高まるというシンプルながら重要な指摘です」(室井さん)
「老眼・白内障の老化を早める習慣/遅らせる習慣」について専門医が紹介する。
老眼・ピント調節機能の回復に「目のストレッチ運動」
加齢に伴う目の病気は、老眼、白内障、加齢黄斑変性などが知られる。二本松眼科病院副院長の平松類医師が言う。
「老眼は目のレンズにあたる水晶体が弾力を失って硬くなり、その水晶体を動かす毛様体筋が衰えて、目のピント調節機能が低下する症状です。改善には、蒸しタオルを瞼に当てて1〜3分ほど温めるのが有効。目と周辺の血流が改善され、凝り固まった毛様体筋がほぐされて、ピント調節機能をある程度回復させることができます」(以下、「」内は平松医師)
ピント調節機能の回復には “目のストレッチ運動”も効果的だという。
「顔から30センチ離した位置に立てた人差し指にピントを合わせて10秒、次に2メートル以上先の目標物にピントを合わせて10秒。これを10回ほど繰り返します。近くと遠くを交互に見ることで毛様体筋の伸縮運動になり、ピント調節機能が鍛えられる。このストレッチを毎日続けることで、老眼鏡なしで読書ができるようになった患者さんもいます」
白内障の予防には「紫外線対策」がマスト
加齢で水晶体が白く濁る白内障、網膜の中心部にある黄斑に老廃物が溜まり見えにくくなる加齢黄斑変性の発症には、“外部からの刺激”も大きく影響しているという。
「白内障の発症や進行は水晶体へのダメージの蓄積が関わっています。『痒いから目を擦る』『疲れたからマッサージ感覚で瞼の上から眼球を押して揉む』などの行為は、水晶体を傷つけて白内障の進行を早める恐れがあり、NGです」
肌と同じく日差しが強い日は「紫外線対策」も重要だ。
「白内障や加齢黄斑変性の原因として、紫外線を浴びることで体内で産生される活性酸素によるダメージも大きい。日差しの強い日はUVカットのサングラスをするなど、紫外線から目を守る対策が欠かせません」
紫外線対策は食事でも可能だという。
「活性酸素のダメージから目を守るには、強い抗酸化力を持ち『天然のサングラス』とも呼ばれるルテインの摂取がおすすめです。緑黄色野菜に多く含まれる天然色素で、ホウレンソウなら毎日半束食べると必要量(一日6〜10ミリグラム)を摂ることができます」
「老眼・白内障」を早める習慣・遅らせる習慣リスト
<老化を早める習慣>
・マッサージ感覚で瞼を押す
水晶体にダメージを与え、白内障などの進行を促す
・スマホを長時間見続ける
毛様体筋が凝り固まり、ピントの調節機能が低下する
<老化を遅らせる習慣>
・外出時にサングラスをする
紫外線が目の病気の原因になる。日差しが強い日は特に有用
・眼帯をしない
雑菌が繁殖しやすく、目を使わないと視力低下の可能性も。ものもらいや結膜炎治療ではしない
・積極的にホウレンソウを食べる
「天然のサングラス」と呼ばれる強い抗酸化作用がある
※週刊ポスト2025年7月11日号
●白内障がよくわかるQ&A|一生に1度しか手術できない?費用は?医師解説