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暮らし

障害のある母が施設入所後「迎えに来て!」と繰り返す…久々に面会した母の姿に驚いた娘の新年の願い

 高次脳機能障害の母を長年ケアしてきたヤングケアラーのたろべえさんこと、高橋唯さん。母は昨秋から施設で暮らすようになったものの、居室のテレビや家具を壊してしまうなど心配は尽きない。電話をかけてきて「迎えに来て」と繰り返し訴える。そんな中、新たな年を迎え、久しぶりに母に会ってみると――。

執筆/たろべえ(高橋唯)さん

「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、著書『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/

施設で迎えた初めての年末年始

 母が施設に入所してから初めての年末年始を迎えた。

 これまでは、デイサービスが休みになって母がずっと家にいる期間をどうやって平和に乗り切るか必死に考えていたが、もうその心配がなくなり、少しホッとしていた。

 ところが、母にとっては、心穏やかではないお正月だったようだ。

年末に母から電話「今日、迎えに来てくれるんだよね?」

 12月27日の朝、寝ていたところを母からの電話で起こされた。

「今日、迎えに来てくれるんだよね。待ってるね!」と言うので、「迎えに行かないよ。誰が迎えに来るって言ってたの?」と訊ねると不思議そうにしていた。年末には迎えに来てくれると信じて疑っていなかったようだ。

 その後、もう一度電話がかかってきて、「今日じゃなくてもいいから年内に迎えに来て」「スマホが壊れた(電話してるのに)」「CDプレーヤーが壊れた(だから迎えに来て)」などと繰り返し、こちらも返答に困ってしまった。

「私もお父さんもお仕事だから、迎えに行けないよ」と答えてみても、「あ、そうなのね。待ってるわ」と返ってきてしまい、埒が明かなかった。

大晦日の朝、母が転倒してしまったと施設から連絡が…

 12月31日の朝、母の施設から電話があった。

 出てみると、職員さんから「実は、今朝5時頃にトイレに行こうとして転んでしまって、右目が腫れてしまいました。手も痛いと言っているのですが、病院も閉まっているので湿布を貼って対応しています」とお話があった。年の瀬の忙しいときに、職員さんには本当に申し訳ない。

 夕方、またスマホが鳴ったが、筆者は運転中で出られなかった。

 職員さんから「もし他にも症状が出るようだったら、救急車を呼んで対応します。そのときはまた連絡します」と聞いていたので、これは救急車を呼ぶことになったのかも…と心配になったが、確認してみると母からの電話だった。

 留守番電話が残っていたので、聞いてみると「帰る日は1月4日から12日でお願いね」とのことだった。さては母、物を壊したり、怪我をしたりすれば家族を呼んでもらえると思っていないか…?

久しぶりに面会した母の姿

 年明け、筆者は父と一緒に母の施設を訪れた。母が施設で暮らし始めた昨年9月以降にも何度か訪れてはいるが、事務手続きのみで母の顔は見ていなかった。今回も書類の提出や、母の私物の持ち込みなどの用事はあったが、出迎えてくださった職員さんが「面会ですね。こちらにどうぞ」と部屋を用意してくださったので、母に会っていくことにした。

 聞いていたとおり、母の右目周りは内出血していて痛々しかった。しかしながら、施設内では車いすで移動しているので、歩き回れる我が家にいたほうがもっと高頻度で怪我をしていたと思う。

 母は相変わらず家に帰れないことが不満で、ぶすっとしていて、「連れて帰ってくれるわけじゃないなら、薄情者に用はない」といった調子でこちらの問いかけにもまともに答えてくれなかった。

 帰り際、職員さんが「一緒にお見送りにいきましょうか」と玄関まで母の車いすを押そうとしてくれたが、母は「嫌だ!」と部屋に戻ってしまった。

 人それぞれであることはわかってはいるものの「家族が施設を嫌がっていたが、入所したら楽しそうに暮らしている」という話を聞くと、どうしても羨ましくなってしまう。

新たな制度によって母の生活は変わるのか?

 令和8年度から「地域移行等意向確認等」が義務化される。これは、障害者が自らの望む暮らしを実現するための支援を目的とした制度だ。

 令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定において、すべての障害者施設の入所者に対し、地域生活への移行に関する意向や、施設外の日中活動系サービスの利用の意向について確認するための指針の作成などが規定された。令和7年度までは努力義務だったが、今年4月から義務化される。

 母の希望が叶わないとしても、本人としてはどう思っているのかを確認してもらえる機会があることはありがたいと思う。

 また、昨年12月には「高次脳機能障害者支援法」が成立し、今年4月から施行される。この法律では地方公共団体が高次脳機能障害者の地域生活支援に務めなくてはならないことも示されている。

 母にとって、昨年は環境が変わって戸惑いの大きい年だったと思う。2026年は、どんなかたちであれ、母が日々の暮らしを楽しめるようになることを願っている。

ヤングケアラーに関する基本情報

言葉の意味や相談窓口はこちら!

■ヤングケアラーとは

 ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている子どものこと。近年は子どもから大人になってもケアが続くこともあるため、18才~おおむね30才までをヤングケアラーと呼んでいる。

■ヤングケアラーの定義

『ヤングケアラープロジェクト』(日本ケアラー連盟)では、以下のような人をヤングケアラーとしている。

・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のきょうだいの世話や見守りをしている
・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている

■相談窓口

・こども家庭庁「ヤングケアラー相談窓口検索」
https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/

・児童相談所の無料電話:0120-189-783
https://www.mhlw.go.jp/young-carer/

・文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」:0120-0-78310
https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm

・法務省「子供の人権110番」:0120-007-110
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html

・東京都ヤングアラー相談支援等補助事業 LINEで相談ができる「けあバナ」
運営:一般社団法人ケアラーワークス
https://lin.ee/C5zlydz

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