白内障がよくわかるQ&A|一生に1度しか手術できない?費用は?医師解説
目がかすむ、ぼやけて見えにくい──そんな症状は、老眼かと思いきや白内障ということも。白内障は50代の約50%の人が発症する病気だが、近年は若い世代にも増加している。年齢問わず、誰もがなり得る白内障。費用や手術にまつわることなど、知っておきたいことをQ&A形式で眼科医に解説いただいた。
【Q】白内障手術は何回受けることができますか?
【A】チャンスは一生に1回だけしかありません
「白内障手術が受けられるのは一生に一度きりです。手術で移植した眼内レンズは、術後数週間でしっかりと固定され、再び取り出して交換することができないからです。眼内レンズの寿命は半永久的で、手術を受ければ、白内障になることは生涯ありません。ただし、10%くらいの人が、術後数年経ってから『後発白内障』(眼内レンズを包んでいる嚢の後ろ部分に濁りが生じる症状)を発症することもあります。一時的に視力が落ちますが、外来による5分程度のレーザー治療で簡単に治すことができるので心配はいりません」(眼科医・赤星隆幸さん・以下同)
手術後は自身のケアが大切。約2か月間は処方された点眼を続け、目をこすったりしないように気をつける必要がある。
【Q】費用はいくらかかりますか?
【A】どの眼内レンズを選ぶかによって変わります
「単焦点レンズの場合は、健康保険適用となります。術前術後の検査、診察や投薬も保険が利き、手術代は、眼内レンズ込みで3割負担の場合、片目で5万円、両目で10万円程度です。
一方、これまで先進医療の対象だった多焦点レンズは昨年3月末に対象外となり、4月から選定療養として位置づけられました。これによって、厚生労働省が認可した眼内レンズであれば、健康保険適用の費用にレンズの追加分を負担するだけでよくなりました。老眼を治すことができる多焦点レンズを使った手術も手頃な費用で受けられるようになったのです。金額は片目で約25万~30万円、両目で50万~60万円です。
認可外の多焦点レンズについては、すべて自由診療(自己負担)となり、両目で100万円くらいになります。眼内レンズは日々進歩を遂げているため、最新の情報はかかりつけの病院で確認してください」
白内障手術によって乱視も治せるトーリックレンズは、健康保険適用で、費用は通常の単焦点レンズと同額である。
【認可外の多焦点レンズ】
診察・検査、手術・投薬、眼内レンズなどすべてが10割負担。手術費用、手術前後の検査・診察、投薬代金、レンズの費用のすべてが自由診療(自己負担)。レンズの販売価格は病院による。
【認可内の多焦点レンズ】
選んだ多焦点レンズの販売価格から単焦点レンズの販売価格を引いた差額分が自己負担。レンズの販売価格は病院による。
【単焦点レンズ】
白内障手術費用にかかわるすべてが健康保険の対象。※健康保険費用は自己負担区分(1~3割)によって変わる。
【Q】手術の時期はいつがいいですか?
【A】不自由と感じたときが治療のタイミング
「白内障の治療として、点眼や内服薬の使用もありますが、これらで進行を多少遅らせることはできても、視力の回復や根本的な治療にはなりません。白内障を治すには手術を行うのがいいでしょう。水晶体は加齢とともに硬くなるので、手術は年齢を重ねるごとに難しくなっていきます。日常生活を送る上で目の見え方に満足できなくなったり、不便さを感じるようになったら、手術を検討してみることをおすすめします」
【Q】眼鏡やコンタクトレンズはいつ作ればいいですか?
【A】眼鏡は術後1か月、コンタクトレンズは3か月以降に
「白内障手術では水晶体を完全に取り替えてしまうので、眼鏡やコンタクトレンズの度数が変わります。すぐに新しいものが必要な場合は代用の眼鏡を用意してもいいですが、手術直後は傷口の腫れも強く、眼内レンズが安定するのはだいたい1~2か月後ぐらいになります。それまでは度数が落ち着かないので、眼鏡は術後1か月以降、コンタクトレンズは3か月をめどにしましょう」
【Q】手術後のメイクや運動はいつから大丈夫ですか?
【A】術後のアイメイクは2週間後から
「日常的な家事には制限はありませんので、ふだん通りで大丈夫です。ただ、布団の上げ下ろしや力仕事など、下を向いて力む動作は傷口が開く危険性があるので、1週間は避けてください。
アイメイクは2週間後からOKです。運動は、振動が加わったり、目に汗が入るとよくないので、術後3週間過ぎから徐々に始めてください。ただし、手術方法や傷の大きさによっても異なるので自己判断せず、担当医に必ず確認をしてください」
【Q】白内障手術を受ければ眼科検診は行かなくていいですか?
【A】白内障以外の目の病気にも注意が必要です
「手術で白内障の治療が終わった後も、油断は禁物。白内障で視界がスッキリと見えるようになったとしても、ほかの病気は別のものと考えましょう。視力障害がある場合は、何かほかに病気が隠れている可能性もあります。
特に40代以上になると、『緑内障』や『加齢黄斑変性症』、『飛蚊症』など目の成人病が顕著に表れてくるので、年に1度は眼科の定期検査でチェックすることを習慣づけ、目を大切にするようにしましょう」
→白内障手術を経験した53歳記者の実録|視力0.5→1.2に…視界が明るくなった!
教えてくれた人
赤星隆幸さん/日本国内では「秋葉原白内障クリニック」をはじめ、海外でも年間1万件近くを執刀する白内障手術の専門医。著書に『白内障手術のすべて』(KADOKAWA)ほか。
取材・文/加藤みのり イラスト/ドナ
※女性セブン2021年3月25日号
https://josei7.com/
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