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健康

《60代以上のシニアこそ必要》“炭水化物をしっかり摂る”「腸活」、管理栄養士がすすめるのは「お米」

 ここ数年ブームとなっている「腸活」。『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(アスコム)を上梓した、管理栄養士の笠岡誠一さんも腸活の重要性を説いている。笠岡さんによると、腸活のためには炭水化物を摂るべきだという。どういうことか、詳しく教えてもらった。

シニアにこそ重要な”腸活”の方法をプロが指南(写真/Photo AC)

教えてくれた人

管理栄養士・笠岡誠一さん

 かさおか・せいいち。東京農業大学大学院卒業。山之内製薬(現アステラス製薬)を経て、2000年より文教大学専任講師を務め、2014年より現職。専門分野は栄養生理学、食品科学で、「レジスタントスターチ」に早くから注目し、腸内環境を改善する”腸活”を多方面で世に広める。著書に『炭水化物は冷まして食べなさい。』(アスコム)、『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(同)など。

腸内環境が乱れるとさまざまな不調が引き起こされる

 これまで、腸は食べ物を消化吸収するためのただの長い管だと捉えられてきた。しかし、昨今の研究で、腸は単なる消化吸収を担うだけの臓器ではなく、「第2の脳」と言われるほど人体にとって重要な役割を担っていることがわかってきている。

「それだけに腸の不健康はからだ全体に悪影響を与えることになるのです」(笠岡さん・以下同)

血液にのって有害物質が全身に流れる

 腸の不調による悪影響はいくつかあるが、その1つが「有害物質が全身に流れてしまう」ことだ。腸内環境が悪化すると、発がん性物質などのさまざまな有害物質が発生し、腸から血液にのって全身に運ばれてしまう。

「有害物質を含む血液が皮膚に巡っていくとお肌や髪のトラブルを招く原因にもなります。極端な言い方をすると、汚れた腸からは汚れた血液しか生まれず、汚れた血液からは汚い細胞しか生まれなくなってしまうのです」

ウイルスや病原菌が暴れやすくなる

 全身の免疫細胞の約6割が腸に存在していることも、腸活が重要な理由の1つだ。腸の上皮には免疫細胞による何重ものバリアが張り巡らされており、体に侵入してきたウイルスや病原菌をブロックする役割を果たしている。

「この『腸管バリア』と呼ばれる仕組みは、腸内細菌のバランスを整えることで正常に機能します。その腸管バリアが損なわれるとウイルスや病原菌がからだの中で好き放題に暴れまわることになってしまうのです」

太りやすくなる

 さらに、肥満も腸内環境の乱れによって引き起こされてしまうという。

「一部の腸内細菌は、食物繊維を食べて『短鎖脂肪酸』という物質を作り出します。短鎖脂肪酸には脂肪の蓄積を防ぐ働きがあることがわかっており、腸内環境を健全に保つことによって、太りにくいからだを作ることができるのです」

メンタル面で不調が出る

 腸内環境の乱れは、身体面だけでなく、メンタル面にも悪影響を及ぼす。腸は自律神経の影響を受けやすい臓器であるためだ。ストレスや不安などで自律神経が乱れると、腸内環境が悪くなり、腹痛が起きてしまうのもそれが理由だという。

細胞の老化が進む

 また、腸は食べ物から栄養を取り込む場所のため、腸の機能が衰えると、全身に栄養のある血液を届けることができなくなってしまう。

「そのため、細胞の老化が加速してしまうのです」

60歳を超えると腸内細菌の環境が大きく変わる

 腸活は誰にとっても重要だが、特にシニア世代は意識して腸活をする必要がある。加齢によって腸の働きはだんだん衰え、悪玉菌が増えやすくなり、便秘になりやすくなるためだ。特に60代後半から便秘に悩む人は増えるそうだ。

 60歳以降で便秘が増える理由としては、加齢によって大腸のぜん動運動が低下し、大腸に便がとどまる時間が長くなり、便の水分が吸収されて硬くなってしまうことや、筋力の低下による便を押し出す力の低下などが挙げられるが、食べる量が少なく、食物繊維の摂取量が少ないことも理由の1つだ。

「年を重ねると食が細くなっていきます。便のもとは食べたものですから、食べる量が少なければ、便の量も減ってしまいます。食事量の減少とともに、便を形づくる食物繊維の摂取量も少なくなるため、便秘になりやすくなってしまいます」

炭水化物をしっかり摂る意識的な腸活が必要

 シニア世代が便秘を予防するためには、若いときよりも意識して食物繊維を摂取し、腸活をすることが必要になる。炭水化物は「糖質」と「食物繊維」で構成されており、体内で消化され、エネルギー源となるものが「糖質」、体内で消化されず、ほとんどエネルギー源にはならないものが「食物繊維」だ。食物繊維の摂取源として笠岡さんがすすめているのがお米だ。

 お米は主食として毎日摂取しやすいことに加え、日本人は炭水化物を分解する「アミラーゼ遺伝子」を多く持っており、お米から食物繊維を摂取するのに適した民族であるためだ。

「私たちの祖先は、炭水化物をたっぷり食べていたから、遺伝子さえも進化させて、健康長寿を実現させてきたのです。炭水化物をたっぷり含む米を栽培できるのは、世界でも一部の限られた地域だけです。そんな日本に住む日本人には、米を中心とした炭水化物をたっぷり食べてほしいのです」

適度な運動も大切

 炭水化物を摂ることに加えて、外出して適度に運動することも大切だ。日中の活動量が少なければ、エネルギーが使われないため、お腹はすかず、食べる量が少なくなってしまう。体を動かすことは、腸に直接刺激を与えることにもなり、ぜん動運動を促すことにもつながる。

「運動すると気分も前向きになり、食も進むものです。一日をぜひ活動的に過ごして、しっかり食べて、腸の元気を維持しましょう」

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