《年間3万5000円の医療費節約も》1日15分歩くだけ!「散歩」の多様なメリット「認知症リスク低下」「冷えやむくみ解消」も
何となく「歩くことは体にいい」と思っている人は多いだろう。実際に、たくさん歩くことで医療費の節約につながるという試算もあるそうだ。『ボケない散歩』(アスコム)を上梓した、保健学博士の石田良恵さん(83歳)は「歩くことは健康の源」と話す。具体的に、散歩にどのようなメリットがあるのか詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
石田良恵さん/保健学博士
いしだ・よしえ。1942年埼玉県出身、女子美術大学名誉教授。フロリダ大学スポーツ科学研究所客員教授(1989~1990)。専門は身体組成で、主に減量、加齢、トレーニング効果。定年退職後、登山に目覚め、国内外問わず山に登る。生涯登山を目指した筋トレの必要性から「山筋体操」を指導。全国規模で普及活動や講演を行う。著書に『ボケない散歩』(アスコム)など。
医療費の節約につながるほど健康効果が期待できる「散歩」
国土交通省の試算によると、1日1500歩多く歩くだけで、1人あたり年間約3万5000円もの医療費の節約につながるそうだ。1500歩は距離で1kmほど、時間にすると15分ほどだが、毎日たった15分で、健康だけでなく節約にも役立つ。石田さんも、日頃からよく歩いているおかげで年齢に負けず、仕事にも積極的に取り組めていると感じているという。
「私にとって欠かせない朝の散歩は、長年の習慣です。たとえ10分でも15分でも、歩かない日はありません。それに、歩くことには数えきれないほどの健康効果がありますから、歩かないのはもったいない気がします」(石田さん・以下同)
散歩は体重維持や血流改善に役立つ
散歩の健康効果の1つは、体重維持に役立つことだ。よく歩くことで余分な脂肪が消費され、体重が増えにくくなるため、ダイエットを意識せずとも健康増進に貢献してくれる。
「私自身、体重が増えやすくなる更年期の時期にも、特別なダイエットをせず体型を維持できました」と石田さんはいう。
また、歩くと血流がよくなり、冷えやむくみに悩まされることも少なくなる。
「汗をかく習慣ができるので新陳代謝も高まり、体温調節がうまくいくようになります」
精神面での健康増進にも
身体的な健康効果だけでなく、精神面での健康効果もある。散歩をするために外に出ると、それだけで自然や季節の移ろいを感じることができ、気持ちが前向きになりやすくなる。心への健康効果を重視するなら、舗装されたコンクリートの道ではなく、公園や緑のある道を歩くのがおすすめだ。
「私の場合は、桜が咲く頃には、少し足を延ばして、神田川沿いの桜並木を眺めながら歩く。秋には、公園の落ち葉をサクサクと踏みしめながら、ゆっくり一周する。そんな小さな楽しみが、日々の活力になるのです」
知症リスクの低下も
さらに、散歩は認知症予防に役立つという研究結果もある。例えば、南デンマーク大学とシドニー大学による研究結果によれば、1日平均3800歩前後で認知症のリスクが約25%低下し、9800歩前後歩けば約50%も下がるそうだ。
「65歳以上の高齢者749人を知将に4年間行われたイタリアの調査では、ウォーキングを習慣にしている人や、日常的に体をよく動かしている人は、脳卒中などが原因となる脳血管性認知症の発症リスクが7割以上も低いことがわかっています」
歩くのがつらい原因は足の筋肉量不足
「歩くのがつらい」と感じるならば、その原因の多くは「足の筋肉量が少ないこと」だと石田さんはいう。筋肉があれば歩きやすくなるため、身体的なつらさが軽減されるうえ、転びにくくもなることで、「歩くのが怖い」といった精神的なつらさも解消される。
「心臓や肺、腎臓などの臓器は、年齢とともにどうしても衰えていきます。でも、筋肉だけは違う。鍛えれば、年齢に関係なく発達します」
散歩のメリットを享受するためにはしっかり蹴って歩くこと
ただ散歩をするだけでも健康には寄与するが、より散歩の健康効果を享受するのであれば、しっかりと地面を蹴って歩くことが大切だ。特に、足の裏の筋肉である「足底筋群」を意識しながら、地面をしっかり押し返して蹴り出すのがいいという。また、猫背になっていないかも意識しよう。
「私は大丈夫、と思っていても意外と気づかないうちに猫背になっていることも多いものです。そんなときのためにも、足底筋群をしっかり使って歩くといいですよ。実際にやっていただくとわかりやすいですが、蹴り出すように歩くと自然と背すじがピンと伸びてきます。すると視線も上がり、周囲の風景に目がいくようになります」
背伸びと歩幅を大きくすることを意識すれば姿勢もよくなる
猫背にならないためには、散歩の途中で背伸びをするのもおすすめだ。普段から姿勢が悪くなりやすいと感じている人は特に、意識して背中を伸ばさないと、どんどん背中が縮こまってしまう。さらに、石田さんは歩幅をいつもより広げて歩くこともすすめている。
「歩幅を1.5倍ほど広げると、骨盤が安定しやすくなります。すると背骨の自然なカーブが保たれ、背すじが伸びて、正しい姿勢を維持しやすくなります」
観察しながら歩くとさらに効果アップ
しっかり地面を蹴って歩くことに加えて、「観察しながら歩く」ようにすれば、散歩の効果はさらに大きくなる。観察しながら歩くことで、脳が受け取る情報、つまり刺激が増えるため、脳の活性化につながる。石田さんの場合は、すれ違う人の表情やしぐさを横目で見て、さまざまなことを想像することで楽しく散歩をしているという。
「しかめっ面で歩いている人を見ると、『機嫌が悪そうね、何か嫌なことでもあったのかしら』と思ったり、重そうに鞄を抱えている人を見て、『あの鞄に、何が入ってるのかしら』と考えたり。こうしていろいろ想像すれば、脳はフル回転します。退屈するなんてこともありません」
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