70才過ぎたら食べた方がいいもの12選「低栄養の解消に卵や揚げ物を」【医師提言】
世の中には“体にいい食品”に関する情報があふれているが、実はそれらは年齢によって変わってくる。年を重ねるにつれ、若い頃に「健康食」だったものを食べていると、ガクンと体が衰えるようになるのだ。70才からはこれまでと違った新常識で、人生100年時代を生き抜こう。
65才以上の10人に1人が隠れ栄養失調
公園で運動に励む人、友達と旅行に繰り出す人、現役さながらに働く人―人生100年時代に突入し、元気な老後を謳歌するシニアが増えているが、体の衰えは避けられない。
警鐘を鳴らすのは、国際的臨床栄養食の専門資格「European ESPEN Diploma」を持つ、熊本リハビリテーション病院・サルコペニア・低栄養研究センター長の吉村芳弘さんだ。
「65才以上の10人に1人が食べ物の消化吸収力や筋肉をつくる力が衰え、気づかないうちに低栄養状態になっている『隠れ栄養失調』に該当しているといわれています」(吉村さん・以下同)
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2019年)によると、65~69才の女性の低栄養傾向の割合は19%。85才以上になると、その割合は27.9%に跳ね上がるという。
「60代まではカロリーオフや塩分控えめ、糖質カットなどある程度の食事制限は病気の発症予防のためにもちろん有効です。しかし、それを70才以降も続けていくと一気に体が衰えます。70代以上の人の多くは、昔ながらの日本食である『ごはん、おみそ汁、おかず1品』という粗食こそが健康だと思っていますが、それは大きな間違い。体を維持するためにもしっかり食べる食生活に変える必要があるのです」
低栄養の状態が続くと全身の筋肉に栄養が届かず、息切れや疲労感が強まり、筋肉量が減少していく。
その現象を「サルコペニア」といい、歩行が安定せずに転倒しやすくなる。ベッドや椅子から立ち上がる力もなくなり、寝たきりの時間が長くなっていく。
「悪化すれば寝たきり生活で外とのつながりがなくなり、精神的にも衰える『フレイル』という状態を引き起こします。フレイルになると脳の機能も落ち、認知症の発症リスクが上がります」
東京都健康長寿医療センター研究所によると、80才以上の女性の約半数がサルコペニアに該当するという。
「同調査では、サルコペニアになると要介護リスク、死亡リスクが約2倍に高まることも明らかになっています」
自分がサルコペニアかどうかを調べる方法がある。それは東京大学高齢社会総合研究機構が考案した「指輪っかテスト」だ。ふくらはぎの周囲を測るだけでわかる簡単なテストで、やり方については下掲のイラストを参考にしてほしい。
あなたの筋肉量は大丈夫?「指輪っかテスト」
【1】両手の親指と人さし指で輪っかをつくる。
【2】きき足ではないふくらはぎのいちばん太い部分を、力を入れずに軽く囲み、危険度をチェック。
サルコペニアのきっかけとなる低栄養状態になる人の傾向について、吉村さんはこう指摘する。
「加齢によって少しずつ食べる量が減るのは自然現象ともいえますが、食事量と比例して体重が減れば、食事をするための体力も失われ、さらに低体重になる“負のループ”に陥ります。自分も周囲も“年を取ったから食事量が減ったんだ”と疑問を持たずにいると、気づかぬうちに低栄養状態になってしまう。もし、病気をしても体と頭がしっかりしていれば安心して治療ができます。しかし、やせ細った体に手術や投薬など治療を施せば大きな負担になる。警戒すべきは肥満ではなく低体重です」
普段の食生活を振り返ってみて心当たりのある人は、下の「低栄養チェックリスト」で確認してもらいたい。
低栄養チェックリスト
□ BMI<体重kg÷(身長m)2>が20以下である
□ ここ半年以内で2kg以上やせた
□ ここ半年で食事の量が減った
□ 食べ物を飲み込むのがつらい
□ 好き嫌いが多い。もしくは食べられない食品が多い
□ ペットボトルのふたを開けられない
□ 赤信号に変わる前に横断歩道を渡りきれない
□ ここ3か月、気持ちがふさぎ込み気味だ
□ ここ3か月、外出を控え気味だ
□ すぐに息切れがする診断されたことがある
□ 糖尿病や高血圧など「慢性疾患」と診断されたことがある
1~3個あてはまる人は要注意。4個以上あてはまる人は危険信号。一度、かかりつけ医に相談したり、内科を受診することが推奨される。