100才まで元気に生きるための8つのメソッド「趣味をもつ、免許返納は年齢で決めない、ぽっちゃり体形を目指す」
同じ年齢でも元気にしている人もいれば、寝たきりのまま最期を迎える人もいる。その差は一体何なのか。精神科医の和田さんは、「前頭葉の老化を抑え、意欲の低下を防ぐことが大切だ」と話します。それは一体どういうことなのか。詳しい話を聞いてみよう。
生活に“変化”を取り入れよう!
「老いを遅らせるには、前頭葉の老化を抑え、意欲の低下を防ぐことが重要です」
と、精神科医の和田秀樹さんは話す。前頭葉とは、大脳の前方部分のことで、意欲や思考、創造などにかかわっている部分。40代から萎縮が始まり、60代・70代になると本格的に老化が進むという。
「意欲が低下すると、何をするにも億劫になり、活動レベルが低下。体は健康でも、一気に老け込んでしまいます」(和田さん・以下同)
前頭葉の老化を防ぐには、普段と違う道を通る、新しいレシピに挑戦するなど、変化のある生活を送ることが大事。
「前頭葉は、想定外のことに対処するときに活性化します。さらに、自分と違う意見に触れ、別の視点で物事を考えることもおすすめです」
外に出て人と話す。この習慣を忘れないようにしよう。
100才まで元気に生きるための生活習慣メソッド8
【メソッド1】50才を過ぎたら趣味を見つける
健康維持や生きがい、社会とのつながりなど、老後の人生において趣味がもたらすメリットは大きい。趣味の活動をすることで前頭葉の老化を遅らせ、認知症の予防にもなる。
「子育てが落ち着いた後や、退職後に探せばいいと思っている人が多いですが、年齢が上がるほど前頭葉の老化も進むため、その頃には新しいことを始める意欲も湧きにくくなっています。そうならないためにも趣味は50代のうちに見つけておくこと。若い頃に好きでやっていたことを、改めて再開するのも手です」(和田さん・以下同)。
【メソッド2】ぽっちゃり体形を目指そう
病気のため食事制限をせざるを得ない場合を除き、70才を過ぎたらダイエットはしない方がいいという。
「食事制限をして必要なエネルギーや栄養が不足する方が、体に悪い。やせているよりも少々ぽっちゃり体形の方が長生きするというデータもあります。ふっくらしている方が見た目も若々しく見えますよ」。
【メソッド3】介護を生きがいにしない
介護は何年続くかわからない。介護していた家族を見送ったときには、介護者も60代、70代というケースは珍しくない。
「介護を終えると、やるべきことが見つからず、一気に老けてしまう人も多いんです」。
子育ても同様だ。人の世話を生きがいにせず、仕事や趣味など別の世界を持つ準備は50代からしておこう。
【メソッド4】肉を食べる習慣をつける
高齢になると、野菜中心の食生活の方がいいと考える人もいるが、それだけでは不充分だという。
「70才以上の日本人の5人に1人は、たんぱく質が不足しているといわれています。たんぱく質不足は体の老化を早めるだけでなく、免疫力の低下をもたらし、がんをはじめさまざまな病気のリスクを高める恐れがあります。また、肉には幸せホルモンの1つ“セロトニン”の材料となるトリプトファンが多く含まれています。精神を安定させ、やる気を引き起こすためにも肉も積極的に食べましょう」。
【メソッド5】塩分の減らしすぎに要注意!
病気予防のためにと、減塩生活を心がけている人も多いと思うが、特に疾患がない場合、一概に減塩がいいとは言えないという。
「重い病気を患っていたら、医者の指導に従うべきですが、年をとると、体内に塩分を蓄える機能も衰えます。それなのに塩分を制限した食事ばかり続けると、血液中のナトリウムが足りなくなり、低ナトリウム血症を起こしやすくなります。そうなると、筋肉のひきつりやけいれん発作が生じることも。70才を過ぎて疾患がなければ、過度に塩分を控える必要はありません」。
【メソッド6】健康なうちは運転免許を返納しない
高齢ドライバーの事故がクローズアップされ、自主返納の風潮が強いが…。
「筑波大学などの研究チームが行った調査では、運転をやめた人は運転を続けていた人に比べて、6年後に要介護となるリスクが2.16倍に上りました。心身が健康なうちは、無理に返納しなくてもいいと思います」。
【メソッド7】激しい運動はNG! 散歩をしよう
意欲が低下すると、どうしても体を動かすのが面倒になる。だからこそ、意識して運動することが大事だ。
「とはいえ激しい運動は体を酸化させ、老化を早めます。なので、運動はほどほどがよく、特に散歩がおすすめです。屋外に出て、太陽の光を浴びることで、精神を安定させる脳内物質・セロトニンの生成も促せます」。
【メソッド8】合わない薬を無理にのみ続けない
年をとれば誰しも、何らかの持病を抱え、病院に通ったり、薬を常用する人も多くなる。
「処方された薬をのんで体がだるい、頭がシャキッとしないなど、何かしらの副作用を感じたら、きちんと医者に伝えること。“それなら薬の量を減らしましょう” "別の薬にしてみましょう”などと提案してくれる医者は、あなたに寄り添ってくれるいい医者です。がまんしてのみ続けたところで、長生きできる保証はありません。特に70才を過ぎたら、生活の質を落とさないためにも、合わない薬の見直しを」。
教えてくれた人
和田秀樹さん/精神科医
和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療に従事。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)など著書多数。
取材・文/上村久留美、鳥居優美 イラスト/たばやん
●高齢ドライバーの事故から考える「運転免許証自主返納」のメリット・デメリット