ボケない睡眠方法とは?認知機能と眠りの関係を専門医が解説「昼寝は30分以内、寝室の環境や食生活も大切」
「明け方に目が覚めても朝まで寝ようとする」「早寝早起き」「睡眠時間は7時間以上」「夜眠れなくなるから昼寝はしない」…。これらは全部間違いだった。最新医学と科学で判明したボケない睡眠法を紹介する。
教えてくれた人
中山明峰さん/めいほう睡眠めまいクリニック院長、奥村歩さん/おくむらメモリークリニック理事長、西多昌規さん/早稲田大学睡眠研究所所長
質の高い眠りでボケ防止
ボケないための睡眠にはポイントがある。めいほう睡眠めまいクリニック院長の中山明峰さんは「睡眠時間」にとらわれないことが大事だと指摘する。
「睡眠時間は7時間が適正だと考えられていますが、年齢や個人によって異なります。極端に短かったり長かったりすると医学的にリスクがあるものの、6~8時間寝ており、起きたときにすっきり目覚められたならば適切な睡眠がとれていると考えていい」
質の高い眠りは、朝起きるときから始まっている。
「夜に増えたメラトニンは朝日を浴びることで減少し、眠気を減らします。同時に、次の夜の快眠に向けてメラトニンを作る準備が体内で始まります」
寝る前の準備も怠らないようにしたい。空腹を避けた方が眠りはよくなる。
「寝る前に空腹感があると覚醒物質『オレキシン』が増えて、食べ物を探せと覚醒を促すので睡眠の質が下がります。満腹もよくないですが、夜に空腹感がある人は、寝る2時間前までに野菜や果物など血糖値を上げすぎないものを少し食べるといい」(おくむらメモリークリニック理事長の奥村歩さん)
夜、なかなか寝つけなくなると昼寝を避ける人もいるが、適度な昼寝であればよい睡眠につながる。
「昼食後、15時までの間に30分以内の昼寝をすることは食後の眠気を取り除き、夜に向かって徐々に副交感神経が優位に切り替わり快眠につながるのでおすすめ。カフェインの覚醒作用が表れるのが摂取してから30分後なので、昼寝前にカフェインを摂ることで、さらに目覚めをよくできる。ただし、カフェインは15時以降だと逆効果になるので注意が必要です」(中山さん)
30分以内の昼寝をしている人は昼寝をしない人と比べて、認知症発症率が6分の1になったという研究がある。夜眠れなくなるかもしれないからといって昼寝を避けている人は、損をしている。
「ただし1時間以上昼寝をしたり、15時以降に寝ると今度は認知症リスクが2倍に増えるので、15時前までに30分以内が鉄則です。短時間で目覚めるコツは布団で寝ないこと。机にうつ伏せになるとか、ソファで寝るなど、体に昼寝だと認識させると目覚めやすい」(奥村さん)
黒柳徹子さんが実践する分割睡眠
人と寝方が違うからといって気にする必要はない。黒柳徹子さん(91才)は夜11時過ぎに寝て、3時間ほどしたら目が覚めるので原稿書きなどの仕事をすると、かつてインタビューで答えていた。朝方に仕事が終わったらまた寝る生活を送り、2回に分けてトータルで7〜8時間の睡眠時間だ。
「日中に元気に活動ができて、眠気やだるさを感じていないのであれば、黒柳さんのような分割睡眠でも問題はないです。よい睡眠とは本人の睡眠の満足感が高い状態を指します」(早稲田大学睡眠研究所所長の西多昌規さん)
結果的に睡眠時間が確保されたとしてもなかなか寝つけないことも加齢に伴う悩みであり、睡眠の質を下げる一因となる。
「寝るときは寝間着に着替えることで、体が寝る時間だと切り替えがしやすい。起きるときも同様に着替えることで体の覚醒を促せます」(中山さん・以下同)
夕食には夏野菜やすいか、キウイで体温を下げよう
寝室の環境を整えるのも大事だ。
「よい睡眠に適切な環境は室温が22~24℃、湿度は50~60%で室内は暗いほどいい。明かりがないと不安ならば豆電球は避けて、足元を照らす間接灯を使いましょう」
静かさが気になる人は音楽を聴いてもいい。
「騒がしいのはよくないですが、静かすぎると耳鳴りが起きることもあります。静けさが気になるようであれば、好みでゆったりとした音楽をかけてもいいでしょう」(西多さん)
リラックスして寝るにはお香を使うのも効果的だ。
「好みの香りは素早く脳をリラックスさせて、副交感神経を優位に切り替えて寝入りをよくしてくれます」(中山さん・以下同)
食生活にも睡眠を改善する作用がある。
「朝食でメラトニンの原料となる炭水化物やビタミンB6の豊富な魚や肉のたんぱく質、トリプトファンが多い大豆製品や乳製品を食べましょう。トリプトファンやビタミンの多いバナナも有効です」
夜は体温を下げる作用のある食品が有効だ。
「夏野菜やすいか、キウイは体温を下げる作用があり、夕食に食べると寝入りを改善します。キウイは不眠症を改善したというデータもあります」(奥村さん)
こうしたさまざまな方法でボケないための質のよい睡眠に近づくことはできるが、最も大事なことがある。
「睡眠についていろいろなエビデンスはありますが、それらは個人差があることも研究者の間では有名です。
データの数字はあくまで目安。数字にとらわれず朝すっきり起きられていれば、よい睡眠がとれているといういちばんの証拠だと思ってください」(中山さん)
食の好みや運動習慣の個人差は受け入れられても、こと睡眠に関しては「時間」や「タイミング」、「量」に正解を求めてしまいがち。自分にとって“ちょうどよい睡眠”を得られれば、認知症予防につながるのだ。
睡眠が健康を左右することは誰もが知っている。さらに、近年の研究から睡眠の質によって認知機能に影響を与えることがわかってきた。「ボケない睡眠」を知らなければ、あなたの睡眠は“間違いだらけ”ということになりかねない。
写真/PIXTA
※女性セブン2025年6月19日号
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