高木ブー「志村は生きていると思うことと、お墓で手を合わせることは矛盾していない」
志村けんさんが急逝して丸2年。先日、メンバー3人はスタッフとともにお墓参りに出かけた。お墓に手を合わせながら、高木ブーさんは何を話したのか。生前、志村さんは「俺も高木さんみたいに80過ぎてもやれるといいな」と言っていたという。そんな志村さんの思いとともに、ブーさんもドリフターズもますます力強く突き進んでいく。(聞き手・石原壮一郎)
3回忌の前にメンバー3人で志村のお墓参りをした
ホッとしたって言うとヘンだけど、3回忌の前にメンバーで志村(けん)のお墓参りができた。何回かみんなの予定を調整して、でも「まん防」とかになっちゃって実現しなかったんだよね。去年の6月に東村山駅で銅像の除幕式があったけど、やっぱりお墓の前に立つと、あらためていろんな思いが浮かんでくる。
どんな話をしたかは内緒だけど「俺は元気でやってるよ」って報告した。加藤(茶)も仲本(工事)も、神妙な顔して手を合わせてたな。それぞれ思うところはいろいろあるだろうね。その日も「志村ってこうだったな」とか話したりはしないんだけど、ふたりの思いは何となくわかる。長くいっしょにやってるから、言葉がなくてもお互いに通じちゃうんだよね。
考えてみたら、コロナ禍でお葬式もできなかったし、お別れの会もまだできてない。やっとお墓参りができて、ひと区切りって感じはしたかな。僕は今でも「志村は死んでない」と思ってるけど、生きている志村が心の中にいることと、お墓の前に立って「ここに志村が眠ってるんだな」と感じることとは、けっして矛盾しないと思ってる。
志村と最後にゆっくり話したのは、7年ぐらい前にあいつのおふくろさんが亡くなったときかな。家族みんなで斎場に行ったら、志村はとっても喜んでくれた。そのときに「高木さんは頑張ってるよね。俺も高木さんみたいに80過ぎてもやれるかな。やれるといいな」という話をしたのを覚えてる。
その思いは実現しなかったけど、あいつの分も、僕たち3人が元気に頑張らないとね。3日の日曜日夜にも、フジテレビ系で『志村けん&ドリフの爆笑お宝コント祭り』と題して、3時間の特番があった。追悼ってわけじゃないけど、ゆかりのゲストもたくさん集まって、にぎやかな雰囲気で志村のことを思い出すことができて楽しかったな。
『もりフのじかんチャンネル』がメイド喫茶にリニューアル
お墓参りのあとは、ニコニコ生放送で『もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~』の生中継があった。さすがにくたびれてグッタリしてたんだけど、まあ何とか最後までやれたかな。もしかしたら見ている人は、いつもとあんまり変わらないと思ったかもしれないけど。
今回から新装開店ってことで、ももクロの4人がメイド服で登場した。みんな似合っててかわいかったな。メイド喫茶ってよく聞くけど、どういうところなんだろう。番組の中で「行ってみたい」って言ったら、ももクロに「私たちじゃダメなんですか」って突っ込まれたけど、そういうことじゃなくて実際のお店を見てみたいんだよね。
出演者の今後を占ってもらうコーナーがあって、占いの先生によると、僕は「新しい道を見つける可能性がある」らしい。新しい道に進むと「心が愛で満たされる幸せな未来が用意されてる」なんて言ってもらっちゃった。加藤は「まだ未来があんの?」なんて言ってたけど、とにかく長生きしなさいってことだよね。
元は大学のサークルだったのかな、ドリフターズ研究会(ドリ研)っていう集まりがあって、コロナの前は飲み会したり旅行に行ったりしてた。ちょっと前にその「ドリ研」の有志が、リモートで僕の誕生日のお祝いをしてくれたんだよね。送ってくれたケーキがすごかった。かあちゃんコントのセットがケーキになってるの。
山口県のパティシエが作ってくれたらしいんだけど、メンバー5人が階段の前に並んでる様子が、すごくリアルに再現されてる。
ケーキを見てるうちに、長さん(いかりや長介)の「あんたたち、なにやってんの!」っていう声が聞こえてくる気がした。かあちゃんコントは、ドリフにとってはとくに大事なコントなんだよね。
「これを屋根に乗せてください」ってことでパトカーのロウソクも送られてきた。トミカ製だったけど、こんなのがあるんだね。切っちゃうのがもったいなかったな。まあ、家族で分けて食べたけど。味もちゃんとおいしかった。最近は会えていないドリ研のメンバーからも、パソコンの画面ごしにいっぱい祝福の言葉をもらって嬉しかったな。
そんな毎日を過ごせて、ライブでウクレレを演奏することができて、仲間や家族に囲まれて、かわいい孫と毎晩ギター談義ができて、僕は本当に幸せものです。僕にとっていちばん大事な仕事は、元気で過ごすことだよね。夏にはいっぱいステージに立つことを楽しみに、ますます張り切って頑張ります。
ブーさんからの一言
「元気で長生きすること。それが、僕の使命だと思っています。メイド喫茶にも行ってみたいし(笑い)、まだまだウクレレでステージにも立ちたいしね。そして、ドリフのメンバーとも力を合わせて頑張ります!」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。6月に初めての画集『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)を上梓。毎月1回土曜日20時からニコニコ生放送で、ドリフの3人とももクロらが共演する『もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~』が放送中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。