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89歳で1日2回ウクレレライブに出演する高木ブー「夢は100歳まで現役を続けること」

 高木ブーさんの快進撃は止まらない。先日行われた『1933ウクレレオールスターズ』のライブでも、若々しい演奏と歌声を聞かせてくれた。最近の楽しみは孫のコタロウ君とのギター談義だとか。来るべき夏に向けて「今年こそはたくさんステージに立ちたい」と意気込んでいる。89歳として歩き始めた充実の日々について聞いてみた。(聞き手・石原壮一郎)

 やっぱりライブは最高だね。3月20日にビルボードライブ横浜で「1933ウクレレオールスターズ」の公演があった。昼の部も夜の部も満席の大盛況。たくさんのお客さんが目の前で僕たちの演奏を聴いて、笑顔になって、あたたかい拍手を贈ってくれる。こんな幸せなことはない。お客さんの心にも、春の訪れを届けられてたらいいな。


 本番も楽しいし、リハーサルを重ねてメンバーみんなでステージを作っていく過程も、またいいんだよね。ライブのときに宣言しちゃったけど、100歳まで現役を続けるのが僕の夢です。あと11年あるのか。けっこう長いなあ。周囲の人たちに助けてもらいながら、新しいことにもどんどん挑戦していきたい。無理せずがんばります。

 横浜は久しぶりだったけど、横浜で演奏してると、長さん(いかりや長介)に「ドリフターズに来ないか」って声をかけられた日のことを思い出す。1964(昭和39)年の8月か9月だったかな。その頃、僕は「シャドーズ」というエレキバンドにいた。横浜のジャズ喫茶「ピーナッツ」で何回目かの演奏が終わったときに、長さんが「ちょっといいかな」って話しかけてきたんだよね。

「送っていくよ」と言われて、ドリフのオーナー的な立場だった桜井輝夫さんのオープンカーに乗せられた。引き抜きの話だなって察しはついてたんだけど、後部座席で隣に座っている長さんは、なかなか本題に入らなかったんだよね。ともあれ、横浜から東京に向かう車の中で、僕の新しい人生がスタートしたわけです。

 ライブと長さんの話で、もうひとつ思い出した。高嶋ちさ子さんと軽部真一さんが25年前からやってる『めざましクラシックス』に、3月10日に久しぶりに出演したの。16年ぶり16回目らしい。何回目に出たときかはわからないけど、2004(平成16)年3月20日に岡山県で公演があった。

 そのとき、公演中に事務所から連絡が入ったんだよね。「いかりやさんがお亡くなりになりました」って。最後のカーテンコールは失礼させてもらって、あわてて空港に向かった。夜中に東京に戻って、長さんちに行ったのは翌日だったかな。目を閉じている長さんの顔を見て「バカヤロー」って呟いたのを覚えてる。俳優としてどんどん評価が高まってて、まだまだこれから活躍するはずだったのにさ。72歳は早すぎたよ。

 もちろん、たまたまそういうタイミングになっただけだから、10日の公演のときは誰にもそんな話はしてない。当日は満員のお客さんの前で、『涙そうそう』やハワイアンソングを歌ったんだけど、翌日、高嶋さんがインスタで「『涙そうそう』をウクレレで歌ってる時、泣きそうになった…」と書いてくれた。ちょっとテレくさいけど、嬉しかったな。

 20日の朝早くには、中山秀征君のラジオ番組『中山秀征の有楽町で逢いまSHOW♪』(ニッポン放送)に出た。ヒデちゃんとは、もう30年ぐらいの付き合いかな。『ウチくる!?』(フジテレビ)で、彼がウチに来たこともある。去年の年末にテレビ東京の『年忘れにっぽんの歌』で顔を合わせて、それがきっかけで出ることになったんだよね。

 収録では、我ながらたくさんしゃべっちゃった。付き合いが長いと安心感があるし、芸能界で長く戦ってきた仲間同士っていう意識もあるのかな。それでなくても、娘のかおるから「最近、お父さんよくしゃべるようになったよね」って言われてるのに。コロナでいろんな人と会う機会が減って、しゃべるエネルギーがたまっているのかもしれない。しばらくは「radiko」にあると思うから、よかったら聴いてみてください。

 今、家の中では孫のコタロウといちばんたくさん話してる。嬉しいことに、ギターの面白さに目覚めてくれたみたい。コタロウが弾き方を聞いてくることもあるし、「最近は、こういう弾き方があるんだよ」なんて教えてくれることもある。ちょっとやってみて「なるほど、面白いね」って感心したり、「うーん、俺には無理そうだな」って降参したりね。

 このあいだクイズ番組のナレーションの仕事があって、台本に「ボカロ」って書いてあったんだけど、聞いたことがない言葉だった。音声を合成する技術のことなんだってね。コタロウがスマホで「YOASOBI」の曲を聴かせながら「こういうやつだよ」教えてくれた。助かったよ。今のいちばんの楽しみは、コタロウと話すことかな。

 暖かくなってきて、そろそろ夏のフェスやイベントの相談が来たりしてる。今年の夏こそは、いろんなフェスが開催されて野外ライブで盛り上がれるといいな。もちろんハワイにも早く行きたい。10代最後ならぬ「80代最後の夏」だから、思いっ切りはじけないとね。

ブーさんからのひと言

「横浜でのウクレレライブのステージは最高でした。今年の夏こそ野外ライブで盛り上がりたいよね」

高木ブー(たかぎ・ぶー)

1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。6月に初めての画集『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)を上梓。毎月1回土曜日20時からニコニコ生放送で、ドリフの3人とももクロらが共演する『もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~』が放送中。

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。

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