日本全国“ご当地みそ“マップ|津軽みそ、越後みそ、江戸甘みそ…味の違いや特徴は?
『みそ』は健康効果が高く、毎日の食卓に欠かせない存在。日本全国には、その土地の気候や歴史・食文化を反映したご当地みそがあり、それを使った郷土料理も多い。みそに詳しい料理研究家・みそ探訪家の岩木みさきさんが、各地のみその特徴や種類・味わいなどを解説してくれました。最近では、珍しいみそもスーパーやネットでも手に入るので、いつもと違うみそ&料理を試してみよう。知って、食べて、旅行気分を味わってみてくださいね!
日本全国ご当地みそマップ
日本全国には、さまざまなご当地みそがある。大きく分けると、辛口・中辛・甘口・甘みその4種類。地域の気候や郷土料理などによって特徴もさまざま。
◆みその味わいの違い
みその味は、塩分の強さで分けられる。「甘みそ」は、塩分が5~7%で、関西地方の白みそ、江戸甘みそなどがある。現代の主流は塩分7~11%で、塩分7~9%の「甘口」と、塩分9~11%の「中辛」に分けられる。また、塩分が11~13%の「辛口」は寒い地方に多い。
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●北海道みそ
米/赤/中辛
さっぱりとした味わいで、食材の風味を生かす、赤色の中辛みそ。江戸から明治時代の北海道は、北前船が佐渡島と往来して交流が盛んで、佐渡みそによく似たみそが広がった。
「ちゃんちゃん焼き」は、鮭やます、ほっけを野菜とともに鉄板で焼き、みそだれをかけた鉄板料理。「石狩鍋」は、昆布だしのスープに、ぶつ切りにした鮭の身や骨、アラを入れ、キャベツ、白菜、玉ねぎ、大根、しいたけ、にんじんなどの野菜を煮込み、みそで仕上げて作る。酒かすを入れることもある。
●津軽みそ
米/赤/辛口
「津軽3年みそ」とも呼ばれ、塩分高めの辛口ながら、長期熟成させているため、口当たりはまろやか。津軽地方はかつて凶作が頻発したため、飢餓の備えのために長期保存できるみそ造りが盛んになったといわれている。「貝焼きみそ」は、大きな貝殻を器にして作る郷土料理。貝の器にだし汁を沸かしてひと口大に切った帆立貝柱を入れ、みそを溶き入れる。煮立ったら溶き卵を流し入れ、なじませるように全体をかき混ぜれば出来上がり。
●仙台みそ
米/赤/辛口
伊達政宗が醸造の専門家を仙台に招き、城内に「御塩噌蔵(おえんそぐら)」を建てて、兵糧(ひょうろう)として造らせたといわれている。夏季に出陣しても変質せず美味だったため、他藩に評判が広がり、一躍有名になった。仙台みそを使った料理には「どんこ汁」「牛タン焼き」があるが、「みそしそ巻き」も親しまれている。仙台みそに砂糖、くるみ、ごまなどを混ぜ込んだタネを青じそで巻いて揚げ焼きにしたもので、ご飯のお供や、酒のつまみに。
●秋田みそ
米/赤/辛口
米どころ秋田らしく、米から作る麹をたっぷり使用していることから、辛口ながらも自然な甘みもしっかり感じられる。秋田には、納豆の粒の形がなくなるまですりつぶして作る「納豆汁」がある。具は山菜やきのこなどが基本。寒い冬に冷めにくく、体を温める汁もので、秋田県南部の内陸部では、正月に食べられている。
●江戸甘みそ
米/赤/甘
蒸した大豆を使い、米麹をたっぷり使って10日ほどの短期で造られる赤色の甘みそ。第二次世界大戦中にぜいたく品として禁止されて途絶えたが、近年になって復活し、再生産されつつある。みそを使った東京の郷土料理には、「みそ田楽」「深川丼」などがあるが、「どじょう鍋」は江戸甘みそがベースのみそ汁でじっくり煮込んだ後、しょうゆ、みりんで作った割り下で煮る。
●信州みそ
米/淡色/中辛~辛口
生産量は日本一。全国の4割を占める。酸味のある特徴的な香りで、すっきりとした旨みが感じられる。郷土料理には、「五平餅」「鯉こく」などがあるが、おなじみの「おやき」にもなすみそ、ねぎみそ、くるみみそなど、みそ味のあんを包んだものが多い。
●東海豆みそ
米/赤/中辛
愛知県は濃厚な旨みと渋み、わずかな苦みがある豆みそが主流。八丁みそ、名古屋みそ、三河みそ、三州みそなどがある。郷土料理には「みそ煮込みうどん」「みそカツ」があり、名古屋名物「どて煮」は牛すじや豚モツ、こんにゃく、大根などを豆みそで煮る。
●西京みそ
米/白/甘
皮を取り除いて煮た大豆と、精米度の高い米による米麹を使い、空気との接触を断って熟成発酵させた、白や上品な黄金色のみそ。強い甘みが特徴で、塩分量が少ないため長期保存には向かない。西京みそに魚や肉の切り身を漬け込んだ「西京漬け」は京都の伝統料理。また、京都などの関西では、正月に「白みそ雑煮」を作ることが多い。
●越後みそ、佐渡みそ
米/赤/辛口
上杉謙信が広めたみそは2種。越後みそは、精白した丸米を使った麹で造ったもので、米粒がみその中に浮いて見える「浮き麹みそ」。佐渡みそは、麹が多く、長期熟成させるため、塩慣れしてコクの深い旨みが感じられる。新潟のみそ料理「けんさ焼き」は、みそにおろししょうが、砂糖をよく混ぜたものを、円盤状に握ったおにぎりにのせて焼く。
●讃岐みそ
米/白/甘
四国は麦みそ文化圏だが、讃岐地方では白みそが造られ、濃厚な甘みと豊かな風味が特徴。香川の正月に食べられる「あんもち雑煮」には、この白みそが欠かせない。具材は金時にんじん、大根、里いもなどが入り、青のりを添える。
●御膳みそ
米/赤/甘口
阿波藩主の蜂須賀家政の御膳に供されたのが名前の由来。塩分は辛口みそと同じだが、麹の割合が高いので甘みがある。「ひらら焼き」は徳島の秘境・祖谷地方に伝わる料理で、平らな石(ひらら)を熱し、みそで土手を作って川魚(あめご)、豆腐、野菜などを焼く料理。
●府中みそ
米/白/甘
広島県の府中地方で造られる白みそ。きめ細かな風味でコクがある。広島名物の「かきの土手鍋」は、土鍋の内側にみそを土手のように塗り、みそを崩しながら煮て食べる料理。白みそ、赤みそ、みりん、砂糖などを混ぜた「合わせみそ」にするのが一般的な作り方で、各家庭の味がある。
●九州麦みそ
麦/淡~淡赤色/甘口
九州は麦みそが主流。大麦や裸麦から作られた麹を使った、短期熟成の淡色甘口のものが多い。宮崎県の「冷や汁」は、すり鉢で魚とみそを合わせてすり、鉢を裏返して直火で焼いてから水、豆腐、きゅうり、青じそなどの薬味を入れ、ご飯にかけて食べる。
●そてつみそ
そてつ/淡色/甘口
奄美大島や沖縄の粟国島で、そてつの実を砕いて米と合わせて麹を作り、大豆・塩と混ぜて発酵熟成させたもの。米が使えなかった時代、デンプン質としてそてつの実が主に利用されていたが、現在は少量混ぜて使われている。つぶが残っているので食べごたえがあり、調味料のほか、そのまま茶請けやつまみとしても食べられる。
みその種類
すべてのみそは大豆から造られるが、大豆の分解発酵を進める麹の違いで分類される。
●米みそ
白米や玄米からできる米麹を使って造られる。出荷量は最も多く、味や色も種類が豊富。
●麦みそ
大麦や裸麦からできる麦麹を使って造られる。麦の生産が盛んな九州や四国地方で発展し、よく食べられている。
●豆みそ
大豆からできる豆麹を使って造られる。主に東海地方で好まれている。
●合わせみそ
数種の麹を合わせて発酵させるものもあれば、出来上がったみそをブレンドするものもある。豆みそが含まれる合わせみそは「赤だし」と呼ばれている。
みその色の違い
みそは寝かせる時間の長さや温度、麹の割合などで色が変わってくる。寝かせるときの温度が高かったり、麹の割合が多いほど分解が早まり、色がつきやすくなるといわれている。
●白みそ
熟成時間は約1か月。甘みが強いものが多いが、塩分が高めのものもある。冷凍庫での保存がおすすめ。
●淡色みそ
信州みそなどに代表される、全国的に流通している山吹色のみそで、熟成期間は4~8か月。
●赤みそ
1年以上熟成させたみそで、黒色に近いものもある。色が濃いと塩分が高いと思われがちだが、色と塩分濃度は関係ない。
教えてくれた人
みそ探訪家・実践料理研究家 岩木みさきさん
全国約62か所のみそ蔵を訪問。日本の伝統調味料であるみその魅力を伝えたいと活動中。著書に『みその教科書』(エクスナレッジ)がある。
写真/岩木みさき 取材・文/山下和恵
※女性セブン2021年6月3日号
https://josei7.com/