みその魅力を再発見 自分好みを選ぶコツ、パッケージの読み方、正しい保存法
昨春からの巣ごもり需要でみそ汁を手作りする家庭が増え、みそが持つ発酵食品としての免疫向上力や生活習慣病の予防などの健康効果に注目が集まっている。梅雨にかけて気温や気圧が変化しやすいこの季節、積極的に摂りたいみそ。その魅力を専門家に教えてもらった。
みその高い健康効果は江戸時代のことわざにも
「医者に金を払うよりも、みそ屋に払え」―これは、江戸時代のことわざだが、当時の食の解説書『本朝食鑑(ほんちょうしょくかがみ)』には「みそには毒を排出したり、血の巡りをよくしたり、皮膚を潤すなどの効能がある」と記されており、その当時から、みその健康効果は認められていたようだ。そんな、みその魅力にハマっているのがみそ探訪家の岩木みさきさんだ。
「私は10代で拒食症と過食症を繰り返すようになり、いままでの人生で体重の振り幅が30㎏もありましたが、食生活を見直すことで症状が回復しました」(岩木さん・以下同)
そして、“食べたもので体はできている”と実感したのをきっかけに料理研究家となり、数年前から “みそ”に注目、本格的に研究を進めている。
「みそからは、大豆や麹由来の食物繊維や酵素が摂取でき、麹菌や乳酸菌などの微生物が善玉菌のエサになるため、腸内環境の改善につながります。このほか、栄養面だけでなく、料理の味を高める調味料としてもとても優秀です。意外かもしれませんが、みそは和・洋・中、エスニック、スイーツなど、多種多様な料理に使えるんですよ」
これまで何気なく食べていたみその力を、改めて見直してみよう。
●みその魅力5か条
1. 発酵調味料なので、健康の要「腸」が元気になる!
2. 大豆よりも消化吸収に優れ、栄養価も高い
3. 風味や色合いが幅広く、食文化を反映したご当地みそもある
4. 和食に限らず、さまざまな料理との相性がいい
5. 旨みが豊富なので、隠し味としても利用できる
みそをもっとおいしく味わうためのコツ
スーパーなどのみそ売り場には、数多くの種類が並んでいる。その中から好みのものを見つけておいしく味わうために、以下のポイントを押さえておこう。
■みその選び方
自宅にみそ専用の冷蔵庫があり、160種類以上のみそを保存し、料理に応じて使い分けているという岩木さんは、「膨大な種類の中から好みのみそを探すには、パッケージの『食品表示ラベル』から、『味の情報』を読み取ることが大切」とアドバイスする。以下、詳しく見ていこう。
【1】ラベルの原材料名の記載順から、甘みをチェック
食品表示ラベルの「原材料名」は、配分の多いものから順に書かれている。そのため、「米、大豆、塩」のように、大豆より前に麹の材料になる穀物があれば、甘みを感じやすいみそであることが多い。
【2】塩分が高い=辛口ではない
パッケージの「栄養成分表」には、食塩相当量としての塩分が記されているが、麹の割合と塩分バランスで甘口や辛口などの味わいが決まる。
【3】原料の産地をチェック
安心安全を求める場合、産地や「遺伝子組み換え」などの情報をチェックするとよい。こだわりの強い生産者ほど、産地を細かく明記している。
【4】味が気に入らなければ、ブレンドしてみる
せっかく買ったみその味がしっくりこない場合は、ブレンドして味の変化を楽しもう。
「専門店で、最少単位で購入し、いろいろな味を試してみるのも◎。みそ100gでみそ汁5~6杯分なので、時には冒険買いしてもいいですよ」(岩木さん)。
■正しい保存方法
保存食であるみそは、基本的に消費期限はないが、パッケージの賞味期限を過ぎると味わいや香りが損なわれ、生みその場合は変色することがあるので、期限内に食べ切るとよい。では、最後までおいしく食べるために注意すべきことは?
【1】白い紙を取り除き、ラップを密着させる
市販のみそのふたを開けると、白い紙や脱酵素剤が入っていることが多い。これは、空気に触れたり、乾燥を防ぐためのもの。開封後は取り除き、表面にラップを密着させて空気を遮断し、ふたを閉めて保存を。
【2】長期保存するなら冷凍がおすすめ
冷蔵庫で保存すれば風味の変化が緩やかになる。ただし、長期保存する場合は冷凍がおすすめ。「塩分濃度が低い白みそは風味が変わりやすいので、私も冷凍保存しています。冷凍してもカチカチに凍ることがないので、使いたいときにすぐ使えます」(岩木さん)。
【3】水分が浮いてきたら、混ぜてから使う
保存しているうちに、みその表面に水分が浮いてくることがある。ここには旨み成分が凝縮されているので、使う前に混ぜるとよい。また、乾燥してカピカピになってしまった場合は、濃縮みそとしてみそ汁などに使えばOK。水やだし汁などに溶いて保存すると傷みやすいのでご注意を。
教えてくれた人
みそ探訪家・実践料理研究家 岩木みさきさん
全国約62か所のみそ蔵を訪問。日本の伝統調味料であるみその魅力を伝えたいと活動中。著書に『みその教科書』(エクスナレッジ)がある。
写真/岩木みさき 取材・文/山下和恵
※女性セブン2021年6月3日号