介護士がやってはいけない話し方4つ|僕が老人ホームで実践していた“声かけ”のコツ
「介護施設や老人ホームで声かけをするときに、やってはいけないことがあります」とは、介護士として働いた経験をメディアで発信している介護士ブロガーのたんたんさんこと、深井竜次さん。話しかけ方や声かけの注意ポイントについて、たんたんさんが考察。在宅介護でも参考になるコミュニケーション方法についての話だ。
介護における「声かけ」の重要性
介護士ブロガーのたんたんと申します。僕は6年間介護施設での経験をもとに「介護士の幸せな働き方」を目標にブログで情報発信をしています。これまで介護士をして得た貴重な体験や学びを記事にしてきました。
今回は介護士が利用様に話しかけるときの「声かけ」について考察してみたいと思います。
介護士は、利用者様への声かけによって信頼関係を作ることもできますし、崩れてしまうこともあります。それほど介護において声かけは大切なスキルになります。
声かけ次第では、利用者様との「良い人間関係を作る」だけでなく、「相手との人間関係を壊さずに、仕事を続けること」にもつながると考えています。
介護士がやってはいけない4つの話し方と声かけ
僕が介護士をしていた経験から、利用者様に話かけるときにやってはいけないことは、大きく分けて以下の4つあると考えています。
1.車イスの人に立ったまま話しかけてはいけない
2.いきなり大きな声で話しかけてはいけない
3.デリケートな話題を自分から話してはいけない
4.会話が一方通行になっている
この4つの特徴について掘り下げて解説していきます。どれも介護の現場では初歩的なことなのですが、基本的なことを守り続けるのは意外と難しいものです。
いくつかは在宅介護においても同じことが当てはまると思うので読んでみて欲しいと思います。
1.車イスの人に立ったまま話しかけてはいけない
介護施設に入居している高齢者の方は、車イスの利用者も多く、また、小柄な方や腰が曲がっていて目線が低い方もいます。
そういう利用者様に対し、介護士が立ったまま声をかけると、相手に威圧感や恐怖心を与えてしまうこともあるのです。
介護現場では車イスの利用者にしゃがんで声かけをするのは初歩的なことなのですが、忙しく仕事をしていると初心を忘れてしまうこともあります。
僕はある車イスの利用者様に立ったまま話しかけたことがあり、気分が晴れない表情をされていたことがありました。立ったまま相手を見下ろす格好は、もしかする威圧感や不安感を与えていたかもしれません。
そのことにはっと気づいた僕は、「高いところから申し訳ございません」と謝罪をして、しゃがんでコミュニケーションをしました。介護するときは相手と「目線の高さを合わせる」ことを心がけるといいでしょう。
毎回腰を下ろしてしゃがんだり、かがんだりするのが大変なら、利用者様の近くに椅子を持ってきて座って話すのもいいと思います。大事なのは、「同じ目線で話す」ことだと僕は考えています。
2.いきなり大きな声で話しかけてはいけない
介護士が利用者様に声をかけるときは、声のボリュームやトーンがとても重要です。
高齢者で疾患がある場合はなおさら、急に呼びかけられるとびっくりして心身に負担がかかり、血圧が上昇してしまうかもしれません。命にかかわる現場だからこそ、声がけには細心の注意が必要です。
いきなり大きな声で話しかけると、利用者様の健康面の問題だけでなく、不安や警戒心を抱かせてしまうかもしれません。
話しかけるときは、まず自分が利用者様の視界に入ってから、そして、ゆっくり話し始めるのがおすすめです。
耳が聞こえにくい方とのコミュニケーションでは、とくに大きな声で話す必要があります。そんなときには、必ずその方が自分を認識してから話すようにしていました。
3.デリケートな話題を自分から話してはいけない
利用者様とコミュニケーションを取るとき、デリケートな話題には注意が必要です。僕は利用者様には自分からデリケートな話題を振ることは避けるようにしていました。
デリケートな話題とは具体的には以下のようなものです。
・家族関係の話
・政治の話
・宗教の話 など
これらの話題は、介護現場に限らず相手を不快な思いにさせてしまうこともあるので、積極的に話題にしない方がいいかもしれません。
「老人ホームで嫌われる介護士の特徴3つ」でも書きましたが、ご家族とうまくいっていない利用者様に亡くなった母親の話をしてしまい、不快な思いをさせてしまったことがありました。
→老人ホームで嫌われる介護士の特徴3つ|自分のために嫌われない介護を…
利用者様の基本的な家庭環境やご家族の情報はケアプランで確認できますが、家族間の深い問題や、宗教や政治などについては書かれていないことがほとんどです。
どんな言葉がその人の悲しみや怒りの感情にスイッチを入れてしまうかは、わからないものです。
4.会話が一方通行になっている
介護の仕事をしていると「利用者様と積極的にコミュニケーションを取らないといけない!」という感情が湧いてくることがあります。
もちろんコミュニケーションは積極的にすることはいいことですが、前のめりになりすぎるのも考えものです。
利用者様の体調や気分によっては、誰とも話したくないと感じているときもあります。そんなときに、介護士が積極的に話しかけてしまうと、会話が一方通行になってしまいますし、利用者様も負担を感じてしまうかもしれません。
ときには、コミュニケーションを取らないという状況判断も必要です。人によってどのようなコミュニケーションが喜ばれるかは異なります。コミュニケーションの濃度、そのバランスはとても難しいのですが、以下のことを意識してみて欲しいと思います。
・自分の話をしすぎない
・最初の声かけの反応を見ながらコミュニケーションを調整する
・話をしているときの相手の表情を観察する
介護士の話し方と声かけのコツ【まとめ】
この記事で一番伝えたいことは、『自分がされたら嫌だと感じるコミュニケーションをしない』ということです。
介護をする上で大事なのは、プラスの要素を積み重ねるよりも、できるだけマイナスの要素を取り除くことだと僕は考えています。
介護士は、利用者様との関係次第で、仕事のしやすさがかなり変わってきます。お互いが気持ち良い介護をするためには、あえてコミュニケーションの濃度を薄めることも大事です。
また、人によって適切なコミュニケーションは変わるので、スタッフ全員で情報を共有して利用者様を不快にさせる言葉をかけないように、チームで取り組むべきだと思います。
文/たんたん(深井竜次)さん
島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として働いた経験を持つ。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』(https://www.tantandaisuki.com/)を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。
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