年を重ねると階段の昇降で息が切れる・・・原因は“呼吸筋”の衰えだった!あなたは大丈夫?「肺年齢」チェックリスト【専門家解説】
人間は1分あたり15回前後、1日で約2〜3万回の呼吸を続け、一生にすると、その回数は5億回とも6億回ともいわれる。その1回1回の呼吸の質が、早死にするか、長生きするかの大きな境目になる。健康に長生きするためのカギは、肺を動かす「呼吸筋」にあった。
教えてくれた人
本間生夫さん/医学博士・昭和医科大学名誉教授
奥仲哲弥さん/呼吸器外科専門医・TOKYO FUTURE CLINIC院長
60才以降は呼吸の機能が加速度的に衰え始める
年を重ねるにつれ、少し歩いただけで息が上がる、階段の上り下りで息切れしてしまうという人は少なくないだろう。老化現象といえばそれまでだが、それは足腰の老化ではなく肺の老化。これらの症状が目立つのは、加速度的に呼吸の機能が衰え始める60代からだと指摘するのは、医学博士で昭和医科大学名誉教授の本間生夫さんだ。
「呼吸機能のなかで大切な『残気量』という数値があります。息を最大限吐き出した後に肺の中に残っている空気の量を指し、加齢とともにこの数値は高くなるのが一般的です。
残気量が多いと肺が膨らんだ状態になり、息苦しさや息切れを引き起こします。正常であれば残気量は肺気量の30〜40%といわれますが、60代になると50%を超え、肺の容量の約40%しか使えていないケースもあるのです」
年をとるごとに呼吸機能が低下してしまうのは、呼吸時に使われる筋肉が衰えることに起因すると本間さんは続ける。
「呼吸をするときに肺の動きを助ける約20種類の筋肉の総称を『呼吸筋』といいます。加齢により呼吸筋が衰えると、胸を大きく膨らませることができなくなり、浅くて速い呼吸になってしまう。さらに肺の中にたまって使えない空気が増えると、新しい空気を取り込める空間が減り、負のスパイラルに陥ってしまうのです」(本間さん・以下同)
近年増える口呼吸 肩こりや冷え性、アレルギーなどの不調を招きやすい
呼吸筋が衰え、呼吸が浅くなることで体に及ぼす悪影響は多岐にわたる。
「浅い呼吸では酸素を体内に充分に取り入れることができず、臓器や筋肉、細胞の働きが低下してしまいます。免疫細胞の働きも鈍化し、病気にかかりやすくなるほか、代謝を低下させて老化スピードを速めることにもなる。持病の悪化や生活習慣病のリスクを高める可能性も考えられます」
浅い呼吸に加え、口呼吸も早死にリスクに直結する。呼吸器外科専門医でTOKYO FUTURE CLINIC院長の奥仲哲弥さんが指摘する。
「近年、鼻呼吸よりも筋力を使わず楽にできる口呼吸をする人が増えています。鼻呼吸は空気の取り込みが口呼吸の約25倍といわれていて、口呼吸が慢性化すると血液中の酸素を全身に行き渡らせることができず、細胞が低酸素状態になってしまいます。すると冷え症や肩こりなどの体調不良のほか、太りやすい原因にもなります。
また鼻呼吸は鼻腔という“フィルター”を通して空気をある程度“浄化”しますが、口呼吸だとウイルスや花粉などが肺に簡単に入ってしまうので病気やアレルギーになりやすい。雑菌が口内に繁殖して口臭も強くなる。口呼吸は百害あって一利なしです」
呼吸機能は何才?ティッシュでわかるあなたの「肺年齢」
自分の呼吸機能が年齢相応か、寿命を縮める早死に呼吸になっているかどうかを調べるにはどうすればいいのか。正確に計測するためには専門的なクリニックにかかる必要があるが、まずはおおよその「肺年齢」を簡単に計測できる、奥仲さんが考案したチェック方法を試してほしい。
「肺年齢を測るときに重要なのは、1秒でどれだけ息を吐き出せるか。食品用ラップの芯に丸めたティッシュペーパーを詰めてひと息で飛ばした距離が1.4m以下の人は危険信号です。何度かやってみて同じ結果ならば、病院で検査を受けてください。1.4〜4.2mの人は肺年齢が40〜60代。4.2m以上の人は30〜40代といえます。実年齢と肺年齢に差がなければ年相応ですが、実年齢よりも高齢の結果が出てしまったかたは、呼吸機能が低下しているので注意が必要です」(奥仲さん)
さらに奥仲さんは、日常生活のなかでも呼吸機能低下のサインを見つけることができると続ける。
「患者さんのなかには友人と散歩をしている最中に自分だけ息が上がってしまったり、動悸が起きたりするという人がいます。同年代の人と比べて息切れしやすいのは、呼吸の力が弱まっていると考えられます。
長い髪の毛の人が頭を洗う際に、一気に終わらせられずに休憩が必要になる場合も要注意。日常生活のちょっとしたことで呼吸が苦しくならないか、注意してみてください」
「肺年齢」をチェック!ティッシュボール測定法
※奥仲哲弥著『1回1分! 100歳でも息切れなし!長生き呼吸』(あさ出版)を参考に作成
【1】2枚のティッシュペーパーをくしゃくしゃに丸めて、直径約2cmの球をつくって、テープで留める。
【2】長さ約30cmの食品用ラップの芯の口で吹く側に、【1】でつくった球を入れる。
【3】立ったまま、球を入れたラップの芯を床と水平に持って、ひと息で飛ばす。
【4】ティッシュペーパーの球が飛んだ距離を測る。
<測定結果>
【1.4m以下だった場合】
肺機能が相当衰えている可能性があります。医療機関で肺機能の検査を受けてみましょう。
【1.4〜4.2mだった場合】
肺年齢は40〜60代です。実年齢が60代以上のかたはすぐには問題ありませんが、実年齢が40〜50代のかたは肺機能が低下しています。
【4.2m以上だった場合】
肺年齢は30〜40代でまだまだ元気ですが、20代以降はピークを過ぎて呼吸機能は低下していくので、油断は禁物です。
イラスト/黒木督之
※女性セブン2026年3月12日号
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