健康になる”空腹時間”の実行スケジュール3つ|朝食・昼食・夕食どれを抜く?
栄養バランスを考え、3食規則正しく摂ることは、生活習慣病予防の定説とされる。しかし、「それでは食べすぎの可能性が高い」と専門医は警鐘を鳴らす。そこで、専門医が「生活習慣病」に本当に効くという”最強の食事法”を紹介する。
空腹時間が大切な理由
内分泌代謝・糖尿病の専門医である青木厚さんは、「現代人の胃腸は常に働かされているのが現状だ」。と話す。
「加齢とともに消化液の分泌も悪くなるので、消化時間はさらに延びる。当然、肝臓や腎臓など、ほかの臓器への負担もかかり、働きが悪くなります」
その結果、肥満や免疫力の低下、血糖値の上昇、高血圧、高脂血症、活性酸素の増加などを招き、やがて、がんや脳疾患、心疾患といった重大な疾病につながっていく。 そうした疾病を回避するためにも、『空腹時間』を増やすことが大切だという。
青木さんの言う『空腹時間』とは、「16時間、ものを食べない」こと。残りの8時間で2食を済ませるという方法だ。
→16時間の”空腹時間”で病気知らず!医師が明かす1日3食は食べ過ぎの真実
16時間食べない、体は大丈夫?
コロナ感染の不安もあるが、空腹で免疫力や抵抗力が落ちることはないのだろうか?
「断食と免疫力の関連を研究しているワイル・コーネル医科大学院の研究者の論文(※1)では、主に、1か月の断続的な断食実験の結果、絶食は免疫細胞の老化を減少させ、平均余命を延ばし、肺機能を改善。酸化ストレスや炎症を抑える効果があり、健康な人にとっては安全であると報告されています。
免疫力低下の心配はないでしょう。むしろ、炭水化物や脂質の摂りすぎによる栄養過剰が免疫力を下げ、感染症リスクを高める可能性があるので、偏った食事に気をつける必要があります」
(※1)スイスの学術情報専門サイト「Frontiers in Public Health. 2020; 8: 476.」より。
この食事法を続けるコツは、「空腹時間」に睡眠時間を組み込むことだ。
「人間には地球の自転周期に合わせた体内時計が備わっており、エネルギー消費が多い昼間に食事を摂り、休息に入る夜間に食べないのが基本。ただ、現代の生活サイクルは人によって異なるので、『夕食後2~4時間後に就寝し、6~8時間睡眠を取り、起床して5時間以上経ってから食事を摂る』を目安にしましょう」(青木さん・以下同)
「空腹時間」実行スケジュール例
■パターン1:朝食抜き…日常生活を変えずに実践しやすい
・向いてる人…日中仕事をしている人、生活リズムを変えづらい人。活動の多い日中を空腹時間に当てるため、最も始めやすい(時間帯は都合に合わせて変更可能)。「脱水症状にならないよう、朝起きたら水分を摂ることは忘れずに」。
■パターン2:夕食抜き…体内時計に即していて、ダイエット効果も高い
・向いている人…65才以上の人や主婦、時間の調整がつきやすい職業の人。「朝日とともに目覚め、暗くなったら眠るという人間の体内リズムに即しており、最も健康効果が高く、ダイエット効果も期待できますが、日中働いている人には難しい面も」
■パターン3:昼食抜き…昼に眠くならず、活動に集中できる
・向いている人…仕事などで、夜早めに食事が摂れない人。朝ご飯を食べないと午前中の仕事に差し障りが出るという人にもおすすめ。
「朝に炭水化物を摂ると昼間の空腹感が強くなるので、サラダや卵料理、魚、肉などたんぱく質中心の食事を」。
週1回でもOK!長く続けることが大事
下記パターン【1】が実践しやすそうだが、朝食抜きは太るという心配も…。
「たしかに、体内時計的にはパターン【2】が理想ですが、現実には難しい。まずは、空腹によるオートファジーや抗酸化作用といった健康効果を優先しましょう」
また、お腹が空くとイライラしたり、低血糖になってフラつくのが心配でもある。
「空腹時間を開始して1か月はイライラすることもあると思いますが、空腹力が鍛えられると、かえって空腹が快感になってきます。それでもがまんできないときは、素焼きのナッツを好きなだけ食べてください。ちなみに、ある種の糖尿病治療薬の服用や激しい運動をした場合を除き、低血糖の心配は不要です」
ナッツ類は、血糖値の急激な上昇を抑え、少量で満腹感が得られるお助けフード。
「まだ研究段階ですが、ナッツに含まれる不飽和脂肪酸がオートファジーを活性化させることもわかってきました」
食べ物に関する制限がないのも実践しやすいポイントだ。
「もちろん、体にいいものを食べた方がいいのは当然ですが、ストイックになりすぎて長続きしないのが最大の問題です。初めはドカ食いしてしまうこともあるでしょう。でも、慣れてくると、それも減ってきます。腸内環境が改善されるので、『便秘が治った』という声も多いですよ」
ただし、糖質の摂りすぎは心身の不調を招き、脂肪肝の恐れもあるので注意したい。
「麺類やパンなどを食べると眠くなる人は、糖質過多の可能性があります。食べすぎないようにしてください」
青木さんは、もとはメタボ男性に向け「空腹時間」を提唱していたが、意外にも高齢者の反響が大きかったという。
「“1日3食は体にいいもの”という先入観があり、無理して3食摂っていたという高齢者も多かったですね。『空腹時間』を設けてみると、いかにこれまで無意識に、ダラダラと食べすぎていたかを実感させられると思います」
まずは週1回から始めて、「もうちょっとできそう」なら週に2~3日と、少しずつ延ばしてみよう。
どうしてもお腹が空いたら…
ナッツは最強のお助けフード 。空腹時間にどうしてもお腹が空いたら、ナッツ類を。
「ナッツは、ミネラルや食物繊維、ファイトケミカル(天然の機能性成分)が含まれるスーパーフード。米国の医学雑誌でもナッツの医学的効能が掲載されています(※2)。アーモンド(食物繊維、鉄分、ビタミンE)、くるみやピスタチオ、カシューナッツ(オメガ3、ミネラル)などがおすすめです」
ナッツ類が苦手な人は、代わりに生野菜サラダかチーズ、ヨーグルトでもOK。
(※2)米国の権威ある医学雑誌『The New England Journal of Medicine』(2013年11月発行)に、「1週間に7回(1回あたり片手1杯程度)以上ナッツを食べる人は、まったく食べない人と比べて20%以上死亡率が減少する」という論文が掲載された。
体を動かすことも大切
適度に体を動かして基礎代謝量をキープすることも大事。
「近年、空腹時に運動を行うとオートファジーがより活性化することが明らかになりました。一方で、運動をせずに空腹時間が続くと、どうしても筋肉量が低下してしまうので、1回20分程度、階段の上り下りや散歩などの簡単な運動を週2回ほど行いましょう」
教えてくれた人
青木厚さん/医学博士。あおき内科 さいたま糖尿病クリニック院長。生活習慣病の治療を専門とし、著書に『「空腹」こそ最高のクスリ』『内臓リセット健康法』(ともにアスコム)。https://www.aoki-n-r.jp/page1
取材・文/佐藤有栄 イラスト/はまさきはるこ
※女性セブン2021年3月4日号
https://josei7.com/
●腸を劇的に若返らせる食べ方・生活習慣・運動ワザ|腸内年齢のチェックリスト