「リンパ流し、デトックス等」セールストークに要注意!「皮膚を触っただけで血液の状態がわかることは医学的にはあり得ない」危険な腰痛施術に専門医が警鐘
腰痛に悩まされているが、病院通いはちょっと……。そんな人が気軽に訪れるのが痛み改善を謳う整体やマッサージなどの「施術サービス」だ。しかし、そのなかには「医学的根拠のない説明、施術を行なう危険な業者が散見される」と専門医は注意を促す。
教えてくれた人
歌島大輔さん/整形外科専門医
マッサージ中に言われた「血行が悪いですね」
長年の腰痛に悩まされる都内在住の60代男性。近所で「スポーツマッサージ」の看板を掲げる店で施術を受けた際、担当者からある言葉をかけられたという。
「私の背中などを揉みながら、『お客さん、背骨周りの血行がだいぶ悪くなってますね。これでは腰も痛くなりますよ』と言ってきたんです。体を少し触っただけで血行がわかるものなのか?と訝しんでいたら、畳みかけるように回数券の購入を勧められて混乱しました」
回数券は数万円と高額だったため、男性は丁重に断わったという。
男性の体験談について、年間400件超の手術を行ない、YouTubeやSNSなどで医療情報を発信する整形外科専門医・歌島大輔さんはこう言う。
「マッサージで皮膚を触っただけで血液の状態がわかることは医学的にはあり得ません。典型的なセールストークでしょう」(以下、「」のコメントは歌島医師)
「国家資格なし」で開業できる業態も
街中には60代男性が利用したような店のほか、接骨院、整骨院、鍼灸院などの施術サービスが数多ある。別掲の表に示したとおり、なかにはカイロプラクティック、整体院など「国家資格なし」で開業できるものも多い。
いずれも医療保険の適用外で腰痛などの“痛み”に対応することが多いが、なかには医学的根拠に乏しい説明や宣伝をするケースが見られるという。
「施術業界では『リンパを流して症状改善』『デトックス』などの言葉がよく使われますが、医学的根拠は皆無です。不明瞭な言葉で表わすのは、睡眠不足や運動不足、ストレスといった本質的な要因から目を逸らすことになり、結果として患者さんの利益を損なう恐れがあります」
そうした施術サービスでは医師資格を持たない施術者が“診断”を下すケースがあり、制度的には「医師法違反」に問われる可能性がある。
「たとえば施術者が問診や動きの確認だけで『典型的な椎間板ヘルニアです』などと断定的に告げるのは、法律的にも医学的にもアウト。違法であるうえに、間違った判断・施術をされるリスクが高いです。専門医が精密検査を駆使しても原因を絞り込むのが困難な場合があるのに、触っただけで原因がわかるはずはありません」
そうした無責任な“診断”は、痛みの改善どころではない結果を招くこともある。
「国際的な医学雑誌に掲載されたニュージーランド・オタゴ大の研究者らの論文(※1)では、患者さんに不要な恐怖心を植え付けると日常活動を制限させてしまい、かえって症状を悪化させるリスクがあると指摘されています」
引用文献情報=(※1)Darlow et al. 2013. Ann Fam Med
数多くある街の「施術所」業態一覧
【1】接骨院・整骨院
[必要資格]柔道整復師(国家資格)
[保険適用]条件付きで可(急性外傷のみ)
[特徴]保険適用は捻挫・打撲などケガの応急処置のみ。保険外(自費)で慢性の腰痛や関節痛、骨盤矯正、整体を行なう事業者も多い。
【2】あん摩マッサージ指圧院
[必要資格]あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
[保険適用]条件付きで可(医師の同意が必要)
[特徴]筋肉を揉む、押すなどの手技を得意とする。「ツボ押し」など、東洋医学的なアプローチも含まれる。法的に「マッサージ」の看板を掲げられるのはここだけ。
【3】鍼灸院
[必要資格]はり師・きゅう師(国家資格)
[保険適用]条件付きで可(医師の同意が必要)
[特徴]針や灸でツボを刺激し自律神経を整える、深層の筋肉へのアプローチによる痛みの緩和などを主な目的とする。
【4】整体院
[必要資格]なし
[保険適用]なし
[特徴]骨格や骨盤の「ずれの矯正」「体のバランスを整える」ことを謳う事業者が多い。国家資格の理学療法士が開業しているケースもある。
【5】カイロプラクティック
[必要資格]なし
[保険適用]なし
[特徴]脊椎(背骨)の歪みに着目した西洋発祥の手技。背骨や骨盤を矯正し、神経の働きを改善することなどを目的とする。米国では医師と同様の国家資格だが、日本では未承認。
【6】リラクゼーション(もみほぐし等)
[必要資格]なし
[保険適用]なし
[特徴]「リフレ」「てもみ」「もみほぐし」などの名称で、精神的なリラックス、疲労回復やボディケアを主な目的とする。
【7】ストレッチ専門店(スポーツマッサージなど)
[必要資格]なし
[保険適用]なし
[特徴]運動部出身者のトレーナーによるストレッチなど、姿勢改善、柔軟性の向上、姿勢改善、ケガの予防を目的とする事業者が多い。
※週刊ポスト2026年2月27日・3月6日号
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