「背中の丸まり」は健康寿命に大きな影響を及ぼす!背骨の変形を防ぐ「体の芯の鍛え方」【専門家解説】
加齢による膝や肩の痛みは自覚しやすいが、実は「背中の丸まり」こそが全身の老化スピードを左右する重要なサインと言われている。背中が丸まっていくのは「背骨が老化」している証拠だという。背中が丸まっている人でも改善が期待できる「体の芯の鍛え方」を専門家に解説してもらった。
教えてくれた人
戸田佳孝さん/戸田整形外科リウマチ科クリニック院長、高林孝光さん/アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長・運動機能評論家
背中が曲がるのは「背骨の老化」が原因だった
加齢とともに背中が曲がるのはなぜか。「背骨の老化」に原因があると指摘するのは戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんだ。
「原因は大きく2つあって、1つ目は骨粗しょう症による椎体(ついたい/背骨)の圧迫骨折です。尻もちをついたときや、転んだときだけでなく、骨がもろくなると自分の体の重みで骨折が生じます。ある研究によると、1つの椎体に骨折が起きると、その3か月以内にほかの椎体に圧迫骨折が起きる可能性は13.6%だそうです。そして3か月以内にまた次の椎体にと、ドミノ倒しのような現象によって背中が曲がっていきます。痛みがなく気づかないことも多いため、慢性化し、だんだんと背骨が弯曲していくのです」
女性の場合はホルモンの変化で骨粗しょう症になるリスクが高く、男性に比べ背中が曲がりやすいという。戸田さんが続ける。
「2つ目は体のバランスをとろうとすることによるもの。女性は妊娠、出産を経て骨盤が後ろに倒れた状態になりやすく、腰椎の自然な反りが失われ、背骨全体が丸まります。これが癖になって、背骨がだんだんと曲がってしまいます」
背中が丸まるとフレイルや転倒のリスクも
運動機能の観点から分析するのはアスリートゴリラ鍼灸接骨院院長で運動機能評論家の高林孝光さんだ。
「疼痛(とうつう)緩和肢位といって、人はある部位に痛みを感じるとその部分の筋肉を伸ばす動きをします。筋肉は縮めると痛くなり、伸ばして緩めると楽になるんです。たとえば首の右側が痛いとき、首を右より左に傾けて右側の筋肉を伸ばした方が痛みが緩和される。その意味で、背骨が曲がってしまう人は腰痛を抱えているケースが非常に多い。
腰が痛くて、それを緩和しようと腰の筋肉を伸ばして前かがみのような姿勢になる。それが癖になって背中が曲がってしまうんです。前かがみになると、椎体が圧迫されて骨折も起こりやすくなります」
背中が丸まることは、「見た目に美しくない」と避ける人もいるだろうが、及ぼす影響は外見の善しあしだけではない。
「背中が曲がるとまず、体のあらゆるところの運動機能が低下してしまいます。背中を丸めてバンザイをしたときと、背筋を伸ばしてバンザイしたとき、手の上がる位置がまったく違うでしょう。背中が丸くなると体の可動域に制限が出て、どんどん身体機能が衰えていきます。そうすると、フレイルや転倒のリスクが高まり、寝たきりになってしまうことも。
また、背骨の中には脊髄(せきずい)が通っているので、背中が曲がると神経の動きが悪くなります。血管も曲がり、血流も悪くなるでしょう」(高林さん・以下同)
「体の芯」を鍛えて背中も健康寿命ものばす
痛みが特にないから、見た目の問題だから、などと背骨の老化、弯曲を放置することは健康寿命に大きな影響を及ぼすということ。
背中も健康寿命ものばすためには、どのような手立てがあるか。まず意識したいのは「体の芯」を鍛えることだ。
「背中が曲がることを予防するためには体の芯、コアの持続力を鍛えることが大切です。人間の筋肉には赤い筋肉と白い筋肉があり、赤い筋肉は酸素を供給するミオグロビンを多く含み、持久力にすぐれます。代表的なのが背筋。背筋を鍛えることで、まっすぐな姿勢をしっかり保つことができる。
背筋がいちばん引き伸ばされる姿勢はひざと股関節を曲げてお尻を落とし背骨を前かがみにする姿勢、つまりヤンキー座りです。ヤンキー座りで、背筋が固まり縮まるのを予防できます。背骨の関節の変形を防ぐためには首から背骨をつなぐ深層のインナーマッスル『多裂(たれつ)筋』を鍛えることも大切。腰痛予防にもつながりますよ」(戸田さん・以下同)
背中が曲がらない歩き方
<1>頭が前に出ないようあごをひく
<2>背筋はしっかり伸ばす
<3>ひざが曲がらないようまっすぐ伸ばす
<4>歩幅は広く
背筋を引き伸ばす「ヤンキー座り」
起床後、朝昼夕の食事後、就寝前と1日5回行うといい。
<1>足を肩幅くらいに開き、お尻を落として座る
<2>そのまま前かがみになって腰を伸ばす
<3>くびれのライン上にある背骨からお尻の割れ目までをげんこつにした両手で上下に20回、20秒ほどかけてさする
背骨の変形を防ぐ多裂筋トレーニング
<1>背筋を伸ばしてひざをつき、両手を前に出す(つま先も床につける)
<2>背筋を伸ばしたまま、上体を前に倒す。1セット20回朝晩2セットを目標にやってみよう!
風船を1日1回ふくらませるのも効果的
骨粗しょう症を防ぐためには日々の食事も意識して。
「骨を強くするカルシウムを多く含んでいるものを積極的に摂りましょう。大豆は、カルシウムだけでなくビタミンも豊富なのでおすすめです」
呼吸力を高めるために、すぐ実践できるのは「風船をふくらます」こと。
「風船をふくらますと、肺がふくらみ、腹筋も鍛えられます。100円ショップの風船でいいので、まずはふくらませてみてください。できなかったら呼吸筋は大ピンチ状態。相当衰えています。実際、ふくらませられないかたは意外と多く、呼吸力が弱っていることを実感すると思います。最初はキツいですが、初めは1日1個、慣れたら3~4個ふくらませてみましょう。
風船は何度もふくらませるとゴムが弱まるので、適宜新しいものにした方がいいですね。しっかり息を吸ってふーっと空気を入れて、肺の広がりを感じてください。
肩が内巻きになって背中が曲がる人も多いので、胸を広げて背中を伸ばすには、肩を大きく外回しするのも効果的。1日7回で充分です。やる前とやった後で腕の長さを比べてみると、腕が伸びていることがわかります。これは筋肉が伸びたからで、縮んだ胸もぐっと広がり、呼吸がしやすくなります」(高林さん・以下同)
風船をふくらませて呼吸力アップ
初めは1日1個、慣れたら3~4個ふくらませてみよう。しっかり息を吸ってふーっと空気を入れて、肺の広がりを感じることが大切です。
すでに背中が丸まっている人でも、筋力や呼吸力を鍛えることで悪化するのを予防し、改善することも期待できる。
「背筋がまっすぐになれば、血流がよくなり若返りホルモンが全身に行き渡りますから、老化のスピードを遅らせると考えられます。もちろん見た目もグッと若返る。運動機能や内臓機能も高まり、痛みも改善され、いいことだらけです。
痛みをやわらげようとして背中が曲がってしまうこともあるので、接骨院や整体で体の痛みをとることが背中のゆがみ解消になることも覚えておいてください」
背中が曲がるか、曲がらないかは老化の「曲がり角」。
今日から背筋を伸ばす習慣を始めよう。
写真/PIXTA イラスト/藤井昌子
※女性セブン2026年2月19日号
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