16時間の”空腹時間”で病気知らず!医師が明かす1日3食は食べ過ぎの真実
コロナで在宅ワークが増え、1日3食がっつり食べる日々。気づけば食べてばかり…。そんな人は必読! 腹八分目なんてもう古い!? 本気で「体質を変えたい」と思っている人、実は”空腹”こそ健康の源。専門医が「1日3食は食べ過ぎ」という事実を明かす。
江戸時代まで1日2食が一般的だった
栄養バランスを考え、3食規則正しく摂ることは、生活習慣病予防の定説とされる。だが、「それでは食べすぎの可能性が高い」と警鐘を鳴らすのが、内分泌代謝・糖尿病の専門医である青木厚さん。
「人類の誕生から440万年。“人類の歴史は飢餓の歴史”といわれるほど、人間は常に飢えていました。そのため、私たちの体は飢餓に対応できるようになっています」(青木さん・以下同)
日本では、江戸時代まで1日2食が一般的だった。その後、1935(昭和10)年に国立健康・栄養研究所の医学博士の提唱により、1日3食が定着した。そして、高度成長期の昭和40年代以降、好きなものを好きなだけ食べられるようになった。
「飽食の時代は、たかだか50年。体が本来持っている飢餓対応機能を眠らせたまま、日本人は過食による生活習慣病と闘うことになったのです」
現代人の内臓は常に慢性疲労状態
私たちが食事をして消化されるまで、一体どのくらいの時間がかかっているのか? その消化時間を見てみよう。
「8時に朝食、12時に昼食、18時に夕食を摂る場合、12時の時点では、まだ朝食が消化しきれていません。でも、12時になると多くの人は昼食を摂り、その6時間後には夕飯を食べます。このように、胃腸は常に働かされているのが現状です」
■隠れ食べ過ぎをチェック
□「習慣」として3食きちんと食べる
□3食とも量はほどほど、食べすぎの感覚はない
□疲れやすい、ぼーっとする
□食べるとすぐ眠くなる
□ご飯や麺類、パンが好き
□甘いものが好き
□便秘または下痢気味
□風邪をひいたときは栄養のあるものを食べる
暴飲暴食をしていなくても、内臓は慢性的に過労状態。「私は大丈夫」という人も、上にあるサインに1つでも当てはまれば、食べすぎの可能性がある。
食物が胃の中で消化される時間は、平均2~3時間(脂肪分の多いものは4~5時間)。小腸は、胃から来た消化物を5~8時間かけて分解し、水分と栄養分の8割を吸収。小腸で消化されなかった水分は、大腸で15~20時間かけて吸収される。
「加齢とともに消化液の分泌も悪くなるので、消化時間はさらに延びる。当然、肝臓や腎臓など、ほかの臓器への負担もかかり、働きが悪くなります」
その結果、肥満や免疫力の低下、血糖値の上昇、高血圧、高脂血症、活性酸素の増加などを招き、やがて、がんや脳疾患、心疾患といった重大な疾病につながっていく。
そうした疾病を回避するためにも、前述の「飢餓対応機能」、つまり「空腹力」を取り戻すことが必要だ。
16時間食べない「空腹時間」で病気知らずに
「私自身、約10年前に舌がんに罹患しました。治療後、再発しないための健康維持法を調べて、たどり着いたのが“空腹時間”を作ることでした。これを実践して以来、病気知らず。私の患者さんにも空腹時間を作るよう指導しています」
どうして「空腹時間」が健康にいいのか?詳しく解説していく。
青木さんの言う「空腹時間」とは、「16時間、ものを食べない」こと。残りの8時間で2食を済ませる方法だ。
「たとえば朝食は摂らず、13時に昼食、21時に夕食を終えた場合、そこから翌日13時の昼食までの16時間が『空腹時間』です。一見、つらそうですが、そこに睡眠時間も含まれるので、実質食べないのは7~8時間。趣味や仕事に没頭してご飯を食べ損ねた、というのも立派な『空腹時間』です。また、食事に糖質や脂質制限などはなし。お酒もOKです」
健康の秘密「オートファジー」とは?
なぜ16時間の空腹で健康になるのか。その答えは、2016年、東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんが解明し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した「オートファジー」の仕組みにあった。
「オートファジーとは、
【1】細胞自体が古くなったり壊れたりした細胞内のたんぱく質を除去し、新しいたんぱく質を作る。
【2】ミトコンドリア(エネルギーを産出する器官)を生まれ変わらせる。
【3】病原体を分解・浄化する、などの働きのこと。
これにより、細胞や組織、器官の機能が活性化し、病気になりにくく若々しい体を保てるのです。しかも、オートファジーは細胞が飢餓状態になったときに初めて活性化し、完全に働き出すのが食後16時間というわけです」
現在、オートファジーが生命の維持に重要な役割を持つことが解明され、世界中でこれを利用した疾病予防の研究が進められている。
空腹によるメリット【まとめ】
「空腹のメリットは、オートファジーで得られる細胞活性=アンチエイジング効果に加え、腸内環境や血管状態を改善し、脳疾患の予防につながること。さらに、頭がスッキリして集中力が増し、仕事や家事の効率も上がります」
また、食後12時間で体内の糖は完全に枯渇し、糖に代わって、脂肪を分解して作られる「ケトン体」がエネルギー源となることから、「空腹時間」は脂肪燃焼効果も期待できる。
●内臓疲労の改善
●腸内環境の改善
●アンチエイジング
●血管状態の改善
●認知機能の向上
●脂肪燃焼効果の期待 など…
教えてくれた人
青木厚さん/医学博士。あおき内科 さいたま糖尿病クリニック院長。生活習慣病の治療を専門とし、著書に『「空腹」こそ最高のクスリ』『内臓リセット健康法』(ともにアスコム)。https://www.aoki-n-r.jp/page1
取材・文/佐藤有栄 イラスト/はまさきはるこ
※女性セブン2021年3月4日号
https://josei7.com/
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