家の中で転ばないために…足指と足裏を鍛える3つの秘策|理学療法士提案
高齢者の家庭内事故は「居室」が45%と最も多く、「階段」の18.7%を上回っている※。リビングのフローリングで滑ったり、敷居などちょっとした段差でつまずいたりして転倒して骨折し、寝たきりとなってしまう恐れも…。家の中でも外でも転ばないために、足の指と裏を鍛えるトレーニングを専門家に聞いた。
※内閣府「平成29年版高齢社会白書(全体版)」高齢者の生活環境より。
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/s1_2_6.html
部屋で転ぶ要因は”引きずり足”かも?
「加齢によって、関節の動きや筋力、障害物を認識する能力などさまざまな身体機能が低下すると、つまずいたりふらついたりして転倒してしまうことがあります」
こう話すのは、県立広島大学保健福祉学部・教授で理学療法士の長谷川正哉さんだ。
リハビリ施設「動きのコツ研究所」代表の理学療法士・生野達也さんによると、高齢者の転倒理由のひとつに、“引きずり足”が挙げられるという。
「加齢で筋力が弱っていたり、麻痺やしびれがあったりすると、歩くときにずるずると足を地面に引きずって歩く“引きずり足”になっている可能性が。低い段差につまずいてしまうだけでなく、引きずらないようにと足を高く上げようとして転んでしまうことがあるのです」
長谷川さんによると、室内での転倒防止のためには、「足の指と足の裏」が重要だという。
「足の指と足の裏は、歩く、走る、登る、降りるなど歩行時において、床と唯一の接点となるパーツ。いわば家の基礎や土台の部分にあたります。
基礎となる土台が弱っていると、その上に乗っている構造物もグラグラした不安定な状態になります。
つまり、足の指と足の裏の健康を保つことが、ふらつかない歩行につながり、転倒予防になると考えます」(長谷川さん、以下同)。
転ばぬ先の足指・足裏トレーニング3つ
床を捉える土台、足の指と足の裏を鍛えるには、以下の3つのトレーニングが大切になると長谷川さんは語る。
1.足指、足裏、足首の柔軟性を高める
2.足指、足裏、足首の筋力を鍛える
3.足の裏の感覚を意識する
それぞれ詳しく解説していく。
1.足指、足裏、足首の柔軟性を高める
「足指や足首、足裏の可動域が広がり、柔軟性が高くなると、足そのものや関節の負担が減るとともに、歩くときに地面に足をしっかりつけることができるようになり、ふらつきにくくなります。
ゴルフボールやテニスボールなどボール状のものや、ラップの芯など円柱状のものを足裏でゴロゴロと転がすことで、足裏の筋肉をほぐし、柔軟性を高めることができます」
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2.足指、足裏、足首の筋力を鍛える
「一般的なストレッチや体操では、足の指や足の裏を動かすことが少ないので、直接足の指や足の裏にアプローチするグッズを使うのもおすすめ。
5本の足指にひっかけてゴムを引っ張る動きをする『フロッグハンド』は、足の指や土踏まずなど足裏、足首まわりにアプローチし、安定した歩行のための筋肉に働きかけます。足の指の力が弱っている人でも徐々に負荷をかけていくことで、少しずつ鍛えることができます」
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3.足の裏の感覚を意識する
最後に足裏の感覚を意識して歩くことで、転ばない安定した歩行を保つことにつながる。
「足を引きずらないようにと、踏み出すほうの足を高く上げようとするのが転倒の原因になることがあります。安定した歩行のためには、支える足のほうにしっかり体重をのせることが大事。
また、椅子から立ち上がるときや、料理や洗濯物を干すときなど日常の立ち姿勢のときは、つま先だけやかかとだけに重心を置かず、足の裏全体を“ベタッーッと”床につけることを意識してみましょう」(生野さん)
足裏をベタッとつくトレーニング動画
※介護ポストセブンYouTubeチャンネルより(動画協力・提供/動きのコツ研究所)
「私たちは、砂浜のような柔らかな路面で歩く際、地面の柔らかさや沈み込み具合を足の裏で感じ取り、瞬時に歩き方を変えることで環境に適応し、転ばずに歩くことができます。
このように足の裏で変化を感じるという要素も転倒予防には重要なんです」(長谷川さん)。
3つのトレーニングで足指と足裏を鍛錬したい。室内で転ぶ原因となるのが、意外なものが関係している場合もあるという。
→高齢者の転倒が危険|樹木希林さんも…大腿骨骨折や寝たきりを防ぐリハビリとは【動画あり】
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室内で転ばないために注意すべきもの3つ
フローリングで滑らないようにと、滑り止めの靴下を履いたり、足を温かくするために靴下を重ね履きしたり…。よかれと思ってやっていることが、転倒を招く危険性も…。
1.滑りにくい靴下でかえってつまずくことも
「靴下で足を締めつけると、関節が動かしにくくなったり、血管やリンパ管を圧迫させる恐れがありますし、反対にゆるい靴下はズレてしまってふらつきの原因になることも。
そもそも靴下で足をおおうことで、足の機能低下に気づきにくくなる場合があります。
滑り止めがついた靴下は、フローリングに接したとき、カーペットに接したとき、畳に接したとき、靴底に接したときではそれぞれ摩擦が異なります。ある場合ではつっかかりやすくなり、あるときは滑りやすくなるといったことが起こります」(長谷川さん、以下同)。
2.冷え防止に靴下の重ね履き
「足が冷える、足がむくむという人は、血行不良が原因かもしれません。靴下を重ねて履きをしてしまうと、締めつけることでかえって血流が悪くなってしまう心配も。足指や足裏の筋肉を動かして血流の量を増やすことで、冷えが改善するケースもあります。
また、靴下の重ね履きでは足指や足裏の動きや感覚が鈍くなる恐れがあります。このような状態を続けるとだんだんと足の機能が衰えてしまうおそれがあります」
3.スリッパで転倒も…
「転倒の不安がある高齢者はとくに、スリッパは脱げそうになったり、かかとがずれてしまったり、足首回りがグラグラしてしまうため、転倒のリスクにつながります。
スリッパを履いて転ばない人は、スリッパを履きこなす「足回りの機能」がしっかりしています。足指と足裏を鍛えて、ふらつかずに歩ける足を作りましょう」
教えてくれた人
理学療法士・長谷川正哉さん
県立広島大学・保健福祉学部・理学療法学科教授・県立広島大学大学院総合学術研究科教授。長年、足に関する研究を続け、インソールや靴の開発,書籍の執筆を進めている。また、足と靴に関する各種講座を全国で開催している。
理学療法士・生野達也さん
動きのコツ研究所リハビリセンター所属https://ugoki-no-kotsu.com/。患者さんの悩みに合わせたオーダーメイドのリハビリを提供。脳梗塞による麻痺など多くのリハビリを動画でも発信している。脳卒中当事者の外出自粛による「コロナうつ」予防を目的とした『オンライン脳卒中当事者会支援』(初回は無料、会費1000円)をはじめ、コロナ禍でリハビリを受けられなくなってしまった人に向け、オンラインリハビリ講座を実施している。■動きのコツ研究所リハビリセンター 電話0798-32-8502
構成・文/介護ポストセブン編集部
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